取調請求のあつた証人につき、証拠決定の施行も取消もないまま弁論を終結するにあたつて、訴訟関係人が異議を述べないときは、特段の事情のない限り右証拠申請は放棄せられたものと解すべきである。
証拠調の請求が放棄されたものと解される事例
刑訴法298条,刑訴法308条,刑訴規則190条,刑訴規則204条
判旨
自白の補強証拠は、自白の全部にわたることを要せず、自白された事実が架空のものでないことを担保し得る程度で足りる。
問題の所在(論点)
自白を補強する証拠は、自白された犯罪事実のどの範囲にわたって存在する必要があるか。特に、自白の全部について補強が必要か、それとも一部で足りるかが問題となる。
規範
憲法38条3項、刑法319条2項における自白の補強証拠は、自白の客観的事実の全部を裏付ける必要はない。自白の真実性を担保し、虚偽の自白によって不当な処罰が行われることを防止し得る程度の証拠があれば足りる。
重要事実
被告人が刑事事件において有罪の判決を受けたのに対し、弁護人は補強証拠が不足していると主張した。具体的には、原判決が被告人の自白だけで事実を認定しており、これは憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)に違反するものであると主張して上告した。なお、具体的な犯罪事実の詳細は判決文からは不明である。
事件番号: 昭和28(あ)1053 / 裁判年月日: 昭和29年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみによって有罪とされないとする補強証拠の要否について、第一審判決が自白の他に補強するに足りる諸証拠を挙示している場合には、憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびCらは拳銃の所持等について起訴された。被告人Aは公判等において犯行を自白していたが、上告審において「…
あてはめ
原判決の判示内容を精査すると、被告人の自白のみによって事実が認定されているわけではなく、自白を裏付ける証拠が存在している。補強証拠は、自白された事実の全てを網羅して証明する性質のものではなく、自白の真実性を裏付けるものであれば足りる。本件においても、原審が自白以外の証拠をも併せて事実認定を行っている以上、補強証拠を欠く憲法違反の事態は生じていない。
結論
自白の補強証拠は自白の全部にわたることを要しない。したがって、原判決が自白と他の証拠を併せて事実を認定したことに憲法違反はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
司法試験においては、補強証拠の必要な範囲(実質説・罪体説)の論証において、「自白の全部にわたる必要はない」とする本判例の趣旨を引用する。自白と補強証拠が「相まって」事実を認定できるという文脈で、補強証拠の程度を検討する際の基礎となる。
事件番号: 昭和22(れ)19 / 裁判年月日: 昭和22年11月29日 / 結論: 棄却
日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律第一〇條第三項の規定は公判廷外の自白が被告人の不利益な唯一の證拠である場合にこれより有罪とされ又は刑罰を科せられないという趣旨であつて公判廷の自白を包含しないと解すべきである。
事件番号: 昭和25(あ)1810 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に、関係者の提出した始末書および現物である軍刀の存在が証拠として認められる場合、憲法38条3項の「本人の自白のみ」による有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は銃砲等所持禁止令違反の罪で起訴された。第一審判決は、被告人の公判廷における自白のほか、Aが提出した始末書(判示…
事件番号: 昭和27(あ)3790 / 裁判年月日: 昭和28年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白のみを証拠として有罪とすることは憲法38条3項に抵触するが、被害者の盗難届等の自白以外の証拠が併存する場合には補強証拠が存在するものとして、同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは窃盗等の罪に問われ、第一審において有罪判決を受けた。被告人らは自白をしていたが、弁護人は当該判決が…
事件番号: 昭和26(れ)450 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷における供述が犯罪事実を認めるものでない場合、それは「自白」には当たらない。また、自白以外の証拠も併せて事実認定に用いられているのであれば、憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)の違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、原審は第一審…