一 間接国税犯則事件において、当該官吏の告発は公訴提起の有効条件であるけれども、一個の犯罪事実の一部に対する告発は、その全部について効力を生ずるものと解すべきである。 二 製造場から移出した物品を同一製造場内に戻入した事実があり、後にその戻入について所轄税務署承認があつても、その承認前すでに納期が到来して既遂となつている物品税逋脱罪に対しては、なんら影響をおよぼすものではない。 三 物品税逋事件につき訴訟記録の紛失により公訴棄却の判決があつたため、当初の通告処分後二年有半を経過したのちあらためて告発がなされたからといつて、右告発を無効とすべきいわれはない。 四 訴訟記録の紛失により公訴が適法な手続により提起されたことを証明すべき方法がないという理由で、刑訴第三三八条第四号にもとずく公訴棄却の判決があつたのち、同一事件につき再度公訴を提起することは、なんら法の禁じるところではない。
一 間接国税犯則事件における一個の犯罪事実の一部に対する告発の効力 二 戻入に関する税務署の承認とすでに成立している物品税逋脱罪への影響 三 通告処分後二年有半を経過してあらためてなされた告発の効力 四 訴訟記録の紛失を理由とする公訴棄却の判決と再起訴
国税犯則取締法17条1項,刑訴法239条,刑訴法338条4号,物品税法(昭和23年12月21日法律262号による改正前のもの)4条,物品税法(昭和23年12月21日法律262号による改正前のもの)9条1項,物品税法(昭和23年12月21日法律262号による改正前のもの)10条1項,物品税法(昭和23年12月21日法律262号による改正前のもの)18条1項2項,物品税法施行規則(昭和24年4月30日政令83号による改正前のもの)17条,憲法39条
判旨
間接国税犯則事件における告発は、一個の犯罪事実の一部に対してなされた場合であっても、その全部について効力が及ぶ。また、刑事訴訟法338条4号に基づく公訴棄却判決の確定後、同一事件について再度の公訴提起を行うことは妨げられない。
問題の所在(論点)
1.一個の犯罪事実の一部に対する告発の効力が、その全部に及ぶか(告発の不可分性)。2.刑訴法338条4号による公訴棄却判決後、同一事件について再度公訴を提起することは許されるか。
規範
間接国税犯則事件における告発は公訴提起の有効条件であるが、一個の犯罪事実(一税周期ごとの逋脱罪)の一部に対してなされた告発は、その犯罪事実の全部について効力を生ずる。また、刑事訴訟法338条4号により「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」として公訴棄却がなされた後であっても、同一事件について再度公訴を提起することは、法が禁じるところではない。
重要事実
被告人は物品税逋脱罪に問われたが、起訴状に記載された公訴事実(逋脱数額等)が、事前の告発書に記載された内容と一部異なっていた。また、当初の告発の存在が立証困難となった等の事情により一度は公訴棄却(刑訴法338条4号)の判決が下されていたが、検察官は同一事件について本件告発に基づき再度公訴を提起した。被告人側は、告発の範囲の不一致および再度の公訴提起の違法性を主張して争った。
あてはめ
1.本件の物品税逋脱行為は各月分ごとに一個の罪を構成する。起訴状の事実が告発書記載の数額等と異なっても、告発の対象となった各月の逋脱罪の範囲内である以上、告発の効力は及んでおり公訴提起は適法である。2.訴訟記録の紛失等により手続が無効として公訴棄却された場合、それは実体判決ではないため既判力は生じず、再度適法に公訴を提起することを妨げる特段の法的根拠はない。
結論
本件公訴提起は適法であり、告発の効力は公訴事実全体に及び、かつ前訴の公訴棄却判決は再度の公訴提起を妨げない。
実務上の射程
専売法や税法違反などの「告発」が訴訟条件となる事件において、告発の客観的不可分の原則を確認した判例として活用できる。また、刑訴法340条が「公訴取消しによる公訴棄却」後の再起訴を制限しているのに対し、338条4号による公訴棄却後は再起訴が原則自由であることを示す際にも有用である。
事件番号: 昭和33(あ)2535 / 裁判年月日: 昭和38年4月9日 / 結論: その他
物品税逋脱の意思による場合であつても、単に法定の申告書を提出しないで右税を免れたというだけでは、物品税法(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)第一八条第一項の罪(物品税逋脱罪)は成立しない。