競輪施行者でない個人が営業として不特定多数の者から競輪の勝者投票券購入の依頼を受け、投票券一枚につき一一〇円替の金員を徴収しこれと引換えに購入依頼者に対しそれぞれ同人等が勝者投票の的中者となつた場合、競輪主催者が該当競走の的中勝者に払戻す金額と同一金額を払戻す預り証と題する証票を交付する行為は、昭和二七年法律第二二〇号による改正前の自転車競技法第一四条第一号後段にいわゆる勝者投票券発売類似の行為に該当する。
昭和二七年法律第二二〇号による改正前の自転車競技法第一四条第一号後段にいわゆる勝者投票券発売類似の行為に当る事例
自転車競技法(昭和23年法律209号)1条,自転車競技法(昭和23年法律209号)7条,自転車競技法(昭和23年法律209号)14条1号,自転車競技法(昭和27年法律220号)1条3項,自転車競技法(昭和27年法律220号)18条,自転車競技法(昭和27年法律220号)19条2号
判旨
自転車競技法施行者でない者が、勝者投票券の購入を委託する名義で現金を授受し、的中時に施行者が支払うべき金額と同額を払い戻す約束をした場合、現実に投票券を購入したか否かにかかわらず、同法違反(勝者投票券発売類似行為)が成立する。
問題の所在(論点)
自転車競技施行者ではない者が、購入代行の名目で現金を受領し、的中時に配当相当額を払い戻す約束をしたが、現実に投票券を購入したことが証明されない場合であっても、同法14条1号(当時)の「発売類似行為」に該当するか。
規範
自転車競技法14条1号(当時)にいう「勝者投票券発売類似の行為」とは、自転車競技施行者以外の者が、投票券の購入委託を受ける形をとりつつ、実質的に投票の結果に関連して金銭の授受を行う行為を指す。本罪の成立には、受託者が委託内容に従って現実に勝者投票券を購入したか否かは関係なく、施行者が発売する投票券と同一の経済的利害関係を生じさせる契約の存在をもって足りる。
重要事実
被告人は自転車競争施行者でないにもかかわらず、営業所を設け、顧客から京都市主催の競輪における勝者投票券の購入委託を受ける名義の下、投票券額面に手数料を加算した現金と引き換えに「会員申込書」と題する証票を交付した。その契約内容は、的中した場合には施行者が払い戻すべき金額と同額を被告人が支払う一方、外れた場合には代金を返還しないというものであり、現金の授受は終始被告人と顧客との間で行われていた。
あてはめ
被告人の行為は、購入委託という形式をとっているが、実態は顧客との間で的中・不的中による金銭の得喪を合意するものである。契約上、的中時に被告人が施行者と同額の払戻金を支払う義務を負い、外れた場合には顧客が支払った代金が没収される関係にある。このような合意のもとで現金の授受が被告人と顧客との間で完結している以上、客観的に施行者が行う投票券の発売と極めて類似した経済的効果を生じさせているといえる。したがって、被告人が実際に委託通り投票券を購入したか否かは、当該行為の違法性を左右するものではない。
結論
被告人の行為は自転車競技法14条1号(改正前)の勝者投票券発売類似行為に該当し、現実に投票券を購入したか否かは犯罪の成否に影響しない。
実務上の射程
ノミ行為の処罰根拠を明確にした判例である。形式的に「購入代行(委託)」を標榜していても、実質的な経済的利害が当事者間で完結していれば、公営ギャンブルの独占的施行権を侵すものとして処罰対象となることを示している。答案上は、構成要件の解釈において形式ではなく実態を重視するあてはめの論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1247 / 裁判年月日: 昭和29年10月22日 / 結論: 棄却
競輪選手が他の選手(又は第三者)と通謀して実力に非ざる競技をなすいわゆる八百長レースにより賞金及び払戻金を受領する行為は、刑法の詐欺罪を構成する。