競輪選手が他の選手(又は第三者)と通謀して実力に非ざる競技をなすいわゆる八百長レースにより賞金及び払戻金を受領する行為は、刑法の詐欺罪を構成する。
競輪選手が八百長レースにより賞金、払戻金を受領する行為と詐欺罪の成否
刑法246条,自転車競技法23条(昭和27年法律220号による改正前の同法16条)
判旨
競輪の八百長レースによる賞金・払戻金の領得は詐欺罪を構成し、その被欺罔者は競輪施行者及び実施担当団体の係員であり、被害者は施行者である。
問題の所在(論点)
八百長レースによる賞金等の領得が詐欺罪(刑法246条1項)を構成するか。特に、誰が「被欺罔者」および「被害者」であり、どのような「錯誤」が必要とされるかが問題となる。
規範
競輪選手が通謀して実力によらない競技を行ういわゆる八百長レースにより賞金・払戻金を受領する行為は、刑法246条の詐欺罪を構成する。実行の着手は、八百長を通謀した選手らがスタートラインに立った時であり、既遂時期は通謀者が賞金・払戻金を請求し受領した時である。被欺罔者は公正なレースが行われると誤信した施行者側の係員(審判員・管理部員・支払係等)であり、被害者は車券代金が帰属し賞金を支出する施行者(自治体等)である。
重要事実
被告人らは競輪選手であり、他の選手らと通謀して実力によらない「八百長レース」を行い、これに基づき岐阜市(施行者)及び岐阜県自転車振興会(実施担当)から賞金及び払戻金を受領した。第一審判決は、被欺罔者を競輪関係の係員らだけでなく、多数の一般投票者(観客)も含むものとして判示していた。
あてはめ
本件では、賞金の支払事務を行う主事やレースを監視する審判員らが、当該レースが公正に行われるものと誤信して賞金支払や確定判断を行っており、これが欺罔による錯誤にあたる。一般投票者については、公正なレースが行われたと誤信した事実は認められるものの、詐欺罪の構成要件としての被欺罔者にはあたらない。また、払戻金の原資となる車券購入代金は発売と同時に施行者に帰属し、賞金も施行者の財源から支出されるため、財産的損害を被る被害者は施行者である岐阜市といえる。
結論
八百長レースにより賞金等を受領する行為は詐欺罪に該当する。被欺罔者を一般投票者まで含めた原判決の判示は一部誤りであるが、施行者側の係員を被欺罔者とする結論に影響はなく、有罪とした判断は維持される。
実務上の射程
公営競技における不正行為が詐欺罪を構成することを明示した。答案上は、被欺罔者と被害者が同一である必要はない(三角詐欺的構造を含む)ことや、不法な目的による競技であっても、支払の基礎となる前提事実(公正な競技)を偽れば詐欺罪が成立することを確認する際に参照すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)1176 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
競輪施行者でない個人が営業として不特定多数の者から競輪の勝者投票券購入の依頼を受け、投票券一枚につき一一〇円替の金員を徴収しこれと引換えに購入依頼者に対しそれぞれ同人等が勝者投票の的中者となつた場合、競輪主催者が該当競走の的中勝者に払戻す金額と同一金額を払戻す預り証と題する証票を交付する行為は、昭和二七年法律第二二〇号…