一 労働争議中の工場に擅に入場する行為は、たとえ争議目的達成のためなされたしても、憲法第二八条、労働組合法第一条の正当行為にあたらない。 二 労働関係の当事者たる労働組合員以外の者が、労働争議中組合の争議行為を応援するためにした行為は、争議行為にあたらない。
一 正当争議行為にあたらない一事例 二 争議行為にあたらない一事例
憲法28条,労働組合法1条(昭和24年法律174号による改正前のもの),労働関係調整法6条,刑法130条
判旨
労働関係の当事者でない者の行為は労働争議行為の範囲に属すると認め難く、また、争議行為であっても目的の正当性のみで手段の正当性は担保されず、建造物侵入罪の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
労働関係の外部の者による行為が、労働基本権に基づく正当行為として違法性を阻却されるか。また、目的が正当であれば手段の如何を問わず正当化されるか。
規範
労働基本権(憲法28条、労組法1条等)に基づく正当行為として違法性が阻却されるためには、当該行為が争議行為の範囲内に属することを要する。また、争議目的が正当であっても、その手段が当然に正当化されるわけではなく、具体的状況に照らし社会通念上相当な範囲のものであることを要する。
重要事実
被告人は、A工業株式会社B工場の労働組合員ではなかったが、同工場における労働争議に関連して工場敷地内に侵入した。これに対し、建造物侵入罪等の成否が争われた事案である。
あてはめ
まず、被告人は本件労働関係の当事者である工場の労働組合員ではないため、その行為は客観的に見て労働争議行為の範囲内に属するものとは認められない。さらに、仮に被告人の行為が争議行為の一環としての性質を有し、その目的において正当性が認められる余地があったとしても、工場への侵入という手段自体が当然に正当化されるものではない。したがって、本件侵入行為は憲法28条や労働組合法1条等にいう正当行為には該当しないと解される。
結論
被告人の行為は正当行為とは認められず、建造物侵入罪等の刑事責任を免れない。
実務上の射程
労働組合員以外の第三者が支援のために行う争議行為の正当性限界を画した判例である。目的の正当性とは別に手段の相当性を厳格に判断する実務上の枠組みを提示しており、団結権の行使が他者の施設管理権を侵害する場合の検討材料となる。
事件番号: 昭和28(あ)56 / 裁判年月日: 昭和31年10月24日 / 結論: その他
某会社がその従業員一三名に対し解雇通知および同会社への立入禁止の通告をしたのに対し、同会社労働組合側では右解雇通知の当否を調査し、不当なものについては法定の手続によつて救済を求むべく事後の対策を協議中にもかかわらず、右解雇および立入禁止の通告を受けた二名およびこれを関知した同会社従業員でもなく同会社労働組合員でもない一…