一 旧地方税法第一三六条第二項は憲法第一三条、第三六条に違反しない。 二 旧地方税法第一三六条第二項の不納入罪は特別徴収義務者が納入すべき金額を納入しないで法定の期限を経過することによつて当然に成立するものであつて、これに対して同法第四一条の督促状を発することは右不納入罪の成立要件ではない。 三 判決に被告人が入場税および同附加税を徴収した年月日を明示し、徴収した入場税を府税条例所定の期限内に所定の場所に納入しなかつた旨判示してある以上、旧地方税法第一三六条第二項の犯罪成立の年月日は判示されているものというべきである。 四 昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に為された入場税および同附加税犯則事件については国税犯則取締法所定の通告処分および告発を訴訟条件と解すべき余地はない。 五 入場税法の犯則取締について通告処分や告発を必要とするものと定めるか否かというが如きことは、国が立法政策として自由に決し得るところであつて、このことで法令の違憲問題を生ずるものではない。 六 税金不納入と刑事責任との関係が問題となつている税法違反被告事件において、債務の履行遅滞または不履行と損害賠償との関係に関する民事判例を引用して判例違反を主張するのは失当である。
一 昭和二三年七月七日法律第一一〇号による改正後で、同二五年七月三一日法律第二二六号による改正前の地方税法第一三六条第二項の合憲性 二 昭和二三年七月七日法律一一〇号による改正後で、同二後年七月三一日法律第二二六号による改正前の地方税法(以下旧地方税法と略称)第一三六条第二項の不納入罪の成立と同法第四一条の督促との関係 三 旧地方税法第一三六条第二項の犯罪の日時の判示に欠けるところのない事例 四 昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に為された入場税および同附加税犯則事件と通告処分および告発 五 入場税法の犯則取締について通告処分や告発を必要とするものと定めるか否かによつて法令の違憲の問題を生ずるか 六 税法違反被告事件について大審院民事判例を引用して判例違反を主張することの適否
旧地方税法136条2項(昭和23年7月7日法律110号による改正後で、同25年7月31日法律226号による改正前のもの),旧地方税法136条1項,旧地方税法136条2項,旧地方税法136条3項,旧地方税法140条,旧地方税法36条,旧地方税法37条,旧地方税法41条,旧地方税法46条,旧地方税法99条,旧地方税法141条,旧地方税法151条,憲法13条,憲法36条,刑訴法335条,刑訴法405条3号,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた部分,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた附則1項,昭和24年法律第169号中の地方税法に第126条の2を加えた附則3項,大阪府税条例58条,大阪府入場税条例6条,大阪府入場税条例7条,大阪市税条例39条,地方税法(昭和23年法律110号による改正後で、同25年法律226号による改正前のもの)136条2項
判旨
特別徴収義務者が徴収した地方税を納入しない行為に対し、脱税と同様の刑罰を科すことは憲法13条及び36条に違反しない。また、不納入罪は法定の納入期限を経過することによって当然に成立し、督促状の発付や通告処分を要件としない。
問題の所在(論点)
1. 特別徴収した地方税の不納入に対し、脱税と同様の重い刑罰を科すことは憲法13条・36条に違反するか。2. 不納入罪の成立に督促状の発付や通告処分等の手続が必要か。
規範
1. 憲法13条が定める国民の権利尊重の要請は、相当の理由に基づく刑罰規定が他の一般の刑に比して重いというだけで違憲の問題を生じさせるものではない。2. 憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。3. 特別徴収義務者の不納入罪は、納入期限の徒過により直ちに成立する(故意は必要であるが、それは刑法上の犯意を意味し、悪意までは不要である)。
重要事実
被告人は、入場税及び同付加税の特別徴収義務者として納税者から税金を徴収したが、これを大阪府税条例が定める期限内(徴収した月の翌月20日)に納入しなかった。旧地方税法136条2項は、この不納入に対し、詐欺脱税行為と同様の「3年以下の懲役又は納入しなかった税金の5倍以下の罰金等」を規定していた。弁護人は、単なる金銭債務の不履行に対して懲役刑を科すことは残虐であり、憲法13条及び36条に違反すると主張した。また、通告処分や督促状の発付が訴訟条件または構成要件として必要であるとも主張した。
あてはめ
1. 特別徴収義務者は納税者から預かった税金を納入すべき立場にあり、その不納入は「単純な滞納」ではなく「業務上横領に類似する性質」を有する。したがって、脱税と同様の刑に処しても刑罰の均衡を失する残酷な規定とはいえず、合理的な理由がある。2. 懲役刑や罰金刑それ自体は、不必要な精神的・肉体的苦痛を課すものとは認められず、憲法36条にいう残虐な刑罰には当たらない。3. 犯行当時の旧地方税法上、不納入罪について国税犯則取締法の準用規定はなく、通告処分や告発を必要とする明文の根拠を欠く。また、不納入罪は納入期限という「時の徒過」によって成立するものであり、督促は成立要件ではない。さらに、被告人には納入期限を徒過させることについての認識(故意)も認められる。
結論
特別徴収義務者の不納入罪に懲役刑等を科す規定は合憲である。また、本罪は納入期限の徒過により成立し、督促や通告処分を要しない。
実務上の射程
租税法における特別徴収制度の根幹を支える判例であり、徴収した税金の不納入が「預り金」としての性質から重い刑事責任を問われる正当性を示したもの。憲法上の「残虐な刑罰」の定義を引用する際や、手続的要件(通告処分等)が立法政策に委ねられることを論じる際にも参照される。
事件番号: 昭和58(あ)508 / 裁判年月日: 昭和59年10月15日 / 結論: 棄却
一 地方税法一二二条一項の不納入罪は、特別徴収義務者が同法一一九条二項の規定により徴収して納入すべき料理飲食等消費税に係る納入金を納入しないで法定の期限を経過することにより直ちに成立し、右期限後に都道府県知事が更正処分を行つたとしても、不納入罪の成立になんら消長を来さない。 二 バーの経営者が利用客から支払いを受けた飲…