常習賭博罪を構成する二個の賭博行爲の中一個の賭博行爲を被告人の第一審公判廷の自白のみに依り認定した場合は、他の行爲について右自白の外に補強證據があつても刑訴應急措置法第一〇條第三項に違反する。
常習賭博罪を構成する二個の賭博行爲の中一個の賭博行爲を被告人の第一審公判廷における自白のみに依り認定した場合と刑訴應急措置法第一〇條第三項違反の有無
刑訴應急措置法10條3項,刑法186條
判旨
被告人の自白のみで有罪とされることを禁じた補強法則の適用に関し、複数の犯行が併合罪として起訴されている場合、個々の犯罪事実ごとに自白を裏付ける補強証拠が必要である。
問題の所在(論点)
併合罪として複数の犯罪事実が認定されている場合において、特定の犯罪事実(6月23日の犯行)について補強証拠を欠いたまま自白のみで有罪とすることができるか。すなわち、他の犯罪事実(6月19日の犯行)に係る証拠を補強証拠として流用できるか。
規範
憲法38条3項及び刑事訴訟法(当時:刑訴応急措置法10条3項)に基づく補強法則の適用に関し、各個の犯罪事実の認定には、それぞれにつき自白を裏付ける補強証拠を必要とする。特定の日の犯行に関する証拠を、別の日に行われた他の犯行事実の補強証拠として流用することはできない。
重要事実
被告人は昭和23年6月19日と、同年6月23日の2回にわたる賭博(麻雀)行為について起訴された。原審(控訴審)は、両日の犯罪事実を認定する証拠として、司法警察官によるAの聴取書、検察官によるBの聴取書、及び被告人の公判廷での自白を援用した。しかし、A及びBの供述内容は、いずれも6月19日の犯行に関するものであり、6月23日の犯行については言及がなかった。被告人は原審公判廷において、6月23日の件については金銭の得喪を争った(賭博の重要要素)事実を否認していたため、第1審の自白のみが証拠として残る形となった。
あてはめ
原判決が挙げた証拠のうち、Aの聴取書及びBの聴取書は、いずれも昭和23年6月19日の犯行にのみ関するものであった。これに対し、昭和23年6月23日の犯行については、被告人が原審で事実を否認している以上、その認定根拠は被告人の第1審公判廷における自白(旧法の性質上、ここでは補強を要する自白として扱われる)のみに帰着する。6月19日の事実に係る証拠は、時間的・場所的に別個の犯行である6月23日の犯罪事実を証明するための補強証拠とはなり得ない。したがって、6月23日の犯行認定は自白のみによるものと言わざるを得ない。
結論
被告人の自白のみで特定の犯罪事実を認定した原判決には、補強法則に違反する違法がある。よって、原判決を破棄し、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
司法試験においては、併合罪(刑法45条前段)における補強法則の単位が問われた際に活用する。本判決により、各犯罪事実が時間的・場所的に分離している場合には、個別に補強証拠が必要であることが明確化されている。実務・答案上、包括一罪的な処理ができない個別の余罪や併合罪の事実認定において、証拠の対応関係を厳格にチェックするための指針となる。
事件番号: 昭和25(れ)1453 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
常習賭博罪における数個の賭博行為は、包括して単純な一罪を構成する。