一 上告趣意書に記載された上告申立の理由が明らかに刑訴第四〇五条各号に定める事由に該当しないときは、同法第四一四条に則り、同法第三八六条第一項第三号を準用し決定で上告を棄却すべきものである。 二 上告の申立は刑訴第四〇五條に定めてある事由があることを理由とするときにこれを爲すことができるものであつて、同法第四一一條は上告申立の理由を定めたものではない。同條の規定は前記第四〇五條各號に規定する事由がない場合であつても、上告裁判所が原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認める場合におけるその職權による破棄の理由を定めたものである。 三 公判期日において刑訴法第一四六條により證言を拒んだ證人並びに供述をした證人の檢察官に對する各供述録取書及び被告人の司法警察職員に對する供述録取書を、檢察官が證據として提出したのに對して、辯護人から證人の右供述録取書は同法第三二一條第一項第二號に定める要件を備えていないものであり、被告人の右供述録取書は同法第三二二條により證據能力を有しないとの主張があつた場合に、これを證據書類として受理することができるかどうかは、もつぱら同法第三二一條及び第三二二條の解釋如何によるものであつて憲法上の問題でない。
一 上告趣意書に記載された上告申立の理由が明らかに刑訴第四〇五条の事由に該当しない場合の裁判 二 刑訴法第四〇五條に定める事由を内容とする上告理由 三 供述録取書を證據として受理したことの適否と憲法上の問題
刑訴法405条,刑訴法414条,刑訴法386条1項3号,刑訴法411條,刑訴法146條,刑訴法321條,刑訴法321條1項2號,刑訴法322條,刑訴法198條
判旨
刑事訴訟法411条は上告裁判所が職権で原判決を破棄できる事由を定めたものであり、同法405条所定の上告理由がない場合に、当事者が同法411条の事由を直接の上告理由として主張することはできない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法411条に掲げられた事由を、当事者が刑事訴訟法405条所定の上告理由とは別に、独立した上告理由として主張することができるか。
規範
刑事訴訟法405条は上告の申立てが許される事由を限定的に列挙している。これに対し、同法411条は、405条各号に掲げる事由がない場合であっても、原判決を破棄しなければ「著しく正義に反する」と認められるときに、上告裁判所が「職権」によって判決を破棄できる事由を定めたものである。したがって、411条は当事者が上告の申立てにおいて直接主張すべき理由を規定したものではない。
事件番号: 昭和25(あ)932 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条に規定される上告理由に当たらない主張や、同法411条を適用して判決を破棄すべき事由が認められない場合、上告は棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人が原判決の変更を求めて上告を申し立てたが、弁護人が主張する上告趣意の内容が刑訴法405条の規定に合致するか、および記録を精査…
重要事実
弁護人は、上告趣意書において上告の申立てを行った。しかし、その主張内容は刑事訴訟法405条に規定された上告理由(憲法違反、憲法解釈の誤り、判例違反)に該当するものではなく、実質的に刑事訴訟法411条(判決に影響を及ぼすべき法令の違反、刑の量定の不当等)に該当する事由を理由とするものであった。
あてはめ
本件の上告趣意は、明らかに刑事訴訟法405条が定める事由(憲法違反または判例違反)に該当しない。当事者が主張の根拠としている事由は、同法411条が定める職権破棄事由にすぎず、同条は裁判所が職権を行使するための基準を示すものである。そのため、405条の事由を欠く本件上告は、適法な上告理由を備えていないものといえる。
結論
刑事訴訟法405条所定の事由に基づかない本件上告は不適法であり、棄却を免れない。
実務上の射程
上告審の構造(事後審・制限上告制)を理解する上で重要。答案上は、法令違反や事実誤認が「著しく正義に反する」場合であっても、それはあくまで職権発動を促す趣旨(職権発動の申告)にとどまり、405条の適法な上告理由とは峻別すべきことを示す際に用いる。
事件番号: 昭和24新(れ)22 / 裁判年月日: 昭和25年9月27日 / 結論: 棄却
元來一時不再理の原則は、何人も同じ犯行について、二度以上罪の有無に關する裁判を受ける危險に曝さるべきものではないという根本思想に基くことは言うをまたぬ。そして、その危險とは、同一の事件においては、訴訟手續の開始から終末に至るまでの一つの繼續的状態と見るを相當とする。されば、一審の手續も控訴審の手續もまた、上告審のそれも…
事件番号: 昭和25(あ)2411 / 裁判年月日: 昭和26年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告について、刑事訴訟法405条所定の上告理由に当たらないとして棄却した事例である。 第1 事案の概要:本件において、被告人側の弁護人は、下級審の判断に対し不服を申し立て上告を提起した。しかし、提示された上告趣意の内容、および訴訟記録の全容を精査した結果、上告を正当化する法的根拠…
事件番号: 昭和25(あ)665 / 裁判年月日: 昭和26年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として憲法違反を主張していても、その実質が単なる刑事訴訟法411条(判決に影響を及ぼすべき著しい誤り)の主張にすぎない場合は、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を理由として上告を申し立てた事案であるが、その主張の具体的な内容については判決文からは不明である。最…
事件番号: 昭和26(あ)982 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告について刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないと判断し、職権調査によっても同法411条の破棄事由が認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、判決文本文には具体的な公訴事実や下級審の判断内容、弁護人が主張した上告趣…