本件第一審第一回の公判の審理に關與した判事小山市次が、第二審裁判所に關與したことは、所論のとおりである。しかし同判事は第一審第二回の公判以降の審判には關與せず、第二回公判期日には公判手續が更新されている。第一回公判廷では、被告人に對して詳細な事實調がなされているが、そのときの被告人の供述は第一審判決の證據として採用されてはいない。又第一回公判では證人訊問もなされてはいない。さすれば同判事は、舊刑訴法第二四條第八號にいわゆる「前審の裁判又はその基礎となりたる取調に關與した」ものということはできない。從つて、同判事は第二審に於ける職務の執行から除斥せられるべきもであるとの主張する論旨は採用することができない。
舊刑訴法第二四條第八號にいわゆる「前審の裁判又はその基礎となりたる取調に關與した」場合に該らぬ一事例
舊刑訴法24條8號
判旨
強盗致死罪の成立には、強盗の機会における暴行によって死の結果が生じれば足り、殺意や傷害の意図は不要であり、暴行の認識があれば足りる。
問題の所在(論点)
強盗致死罪の成立に、殺意または傷害の意思が必要か。暴行の認識のみで足りるか。
規範
強盗致死罪(刑法240条後段)が成立するためには、強盗の機会における暴行により相手方を負傷させ、その結果死に至らしめれば足りる。したがって、死の結果について過失がある場合であっても、暴行の認識さえあれば、相手方を傷害する意思や死に至らしめる意思(殺意)があることを必要としない。
重要事実
被告人は、被害者に目を醒まされ大声を上げられたことに驚き、逮捕を免れるために短刀を手に取って被害者の右胸部を強力に突き刺し、即死させた。弁護人は、被害者の死は被告人の過失に基づくものであるから強盗致死罪は成立しないと主張した。
あてはめ
本件では、被告人が逮捕を免れるために短刀で被害者の胸部を突き刺したという暴行の事実が認められる。強盗致死罪は、強盗の機会における暴行によって死の結果が生じれば足りるため、被告人に殺意や傷害の意思がなかったとしても、暴行の認識がある以上、本罪の成立を妨げない。したがって、過失による死であるとの主張は、暴行の認識が認められる本件においては、強盗致死罪の成立を左右しない。
結論
強盗致死罪が成立するためには、殺意や傷害の意思は不要であり、暴行の認識があれば足りる。よって原判決に違法はない。
実務上の射程
強盗致死傷罪が結果的加重犯としての性質を有することを確認した判例である。答案上は、殺意がない事案であっても、強盗の手段たる暴行(または強盗の機会における暴行)と死傷の結果との間に因果関係があり、かつ暴行の認識があれば、本罪が成立することを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和24(れ)1959 / 裁判年月日: 昭和24年11月15日 / 結論: 棄却
犯人が強盜を爲すに當つて暴行々爲によつて人を死に致したときは殺意はなくても、又被告人の爲した暴行々爲が直接被害者死亡の原因とならなかつたとしても共犯者の行爲によつて致死の結果を生じた以上被告人も強盜致死の責を負わなければならないのである。
事件番号: 昭和24(れ)1091 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
上告趣意一の強盜行爲(原判決判示第一の事實)は未遂であることは原判決もそのとおりに認定しているのであるが、その現場において傷人した以上は、たとい強盜行爲は未遂であつても、刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪は成立するのである。
事件番号: 昭和24(れ)1012 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
刑法第二四〇條後段は「強盜人ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ虞ス」と規定して殺意の有無を問はず強盜犯人が暴行の結果人を死に致せば強盜殺人罪の成立することを明らかにしているのである。それは暴行脅迫によつて他人の財物を強奪する強盜というやうな危險極まる兇悪な犯罪を敢てするものが、その暴行によつて人を死亡せしめるなら、…