一 公判調書によれば、被告人並びに原審共同被告人Aの兩名は、第一審公判廷において、本件起訴状に引用されている司法警察官意見書記載の犯罪事實を續み聞かせられ且つ右意見書記載の犯罪事實は、原判決の判示犯罪事實と同一であることが認められる、されば第一審第一回公判調書中の被告人等の供述記載は、原判示犯罪事實を自認したものであつて、互に相待つて判示犯罪事實を證明するに足るものというべく、證據の種目としては被告人の供述記載であつて、司法警察官意見書の記載ではないといわなければならない。從つて原判決認定の證據上の根據は、結局第一審公判廷における被告人外一名の判示同趣旨の供述記載あることを知ることができるから、原判決は、舊刑訴法第三六〇條第一項の期待する證據上の根據を具体的に明示しているものといわなければならない。 二 第一審公判廷における共同被告人の供述記載は、それが司法警察官意見書記載の事實を内容とするものであつても、その供述者は、公判廷において尋問する機會を充分に與えられている共同被告人であつて、司法警察官ではないから、右意見書を作成した司法警察官を尋問する機會を被告人に與えないでも、證據とすることができる。
一 公判で意見書記載の罪事實を續聞けたのに對し、その通りなる旨の供述ある場合、右供述以外に意見書の記載を證據に採ることの要否 二 刑訴應急措置法第一二條にいわゆる供述者又は作成者に當らない一事例
舊刑訴法360條1項,刑訴應急措置法12條1項
判旨
共同被告人の公判廷における供述記載について、被告人に相手方を訊問する機会が十分に与えられていた場合には、証拠採用にあたって重ねてその供述者を訊問する機会を与える必要はない。また、自認の根拠となった司法警察官の意見書は供述の内容を構成するにすぎず、証拠の種目自体は公判調書中の供述記載と解される。
問題の所在(論点)
旧刑訴法360条1項(現刑訴法335条1項)が求める証拠の根拠の明示の程度、および共同被告人の公判廷での供述記載を証拠とする際に改めて訊問の機会を与える必要があるか。
規範
有罪判決の証拠上の根拠は具体的に明示される必要がある。また、被告人以外の者の供述を証拠とする場合には、反対尋問権等の防御の機会が確保されているべきであるが、共同被告人として公判期日に立ち会い、互いに相手方の供述に対し尋問する機会が十分に与えられていたのであれば、改めて供述者を訊問する手続を経ずとも、その供述記載を証拠として採用することが認められる。
重要事実
被告人らは、第一審の公判廷において、司法警察官の意見書に記載された犯罪事実を読み聞かされ、いずれも相違ない旨を自認する供述を行った。第一審の判決はこの公判調書中の被告人らの供述等を証拠として有罪を認定した。これに対し弁護側は、証拠の根拠が不明確であることや、意見書の作成者や共同被告人を改めて訊問する機会が与えられていないことが違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件では、第一審公判調書に被告人らが意見書の事実を自認した旨が記載されており、これが判示犯罪事実を証明する具体的根拠として示されている。証拠の種目は「司法警察官意見書」そのものではなく、それを自認した「被告人らの供述記載」であるため、証拠上の根拠は具体的に明示されているといえる。また、被告人らは第一審および第二審を通じて共同被告人として公判に立ち会っており、互いに相手方の供述を訊問する機会が十分に与えられていた。したがって、改めて供述者を訊問する必要はなく、証拠採用に手続上の瑕疵はない。
結論
被告人らの供述記載を証拠として有罪を認定した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
共同被告人の供述の証拠能力(憲法37条2項、刑訴法321条等)が問題となる場面で、公判廷での供述記載の援用可能性を基礎付ける判例として機能する。特に、反対尋問権の保障が実質的に図られているかどうかが判断の分水嶺となる。
事件番号: 昭和25(れ)274 / 裁判年月日: 昭和25年5月18日 / 結論: 棄却
記録によれば、所論Aは既に第一審公判廷に證人として喚問され被告人に對し同證人を審問する機會を充分に與えたものであるから、原審において重ねて同人を喚問しなかつたからといつて憲法の條項に反するとはいえない。