共同正犯と從犯とは両立しない観念である、其故原審が共同正犯であると判示した以上おのずから從犯でないことを示したものでそれ以上特に從犯でない旨の判示を必要とするものではない、論旨は理由がない(大正一五年(れ)第一〇〇六號同年九月二一日言渡大審院判決參照)
從犯であるとの主張と舊刑訴法第三六〇條第二項
刑法60條,刑法62條,舊刑訴法360條2項
判旨
共同正犯と従犯(幇助犯)は互いに相容れない性質を持つ概念であるため、判決において共同正犯の成立を認定した場合には、重ねて従犯が成立しないことを理由付けして判示する必要はない。
問題の所在(論点)
判決において、ある者の行為を共同正犯と認定した場合、それとは別に「従犯(幇助犯)には該当しない」旨を明示的に説示する必要があるか(共同正犯と従犯の排他的関係)。
規範
共同正犯(刑法60条)と従犯(同法62条1項)とは、その概念の性質上、互いに両立しない関係にある。したがって、事実認定において被告人を共同正犯であると判示した以上、その判断自体に従犯には当たらないという趣旨が包含されていると解するのが相当である。
重要事実
被告人が特定の犯罪行為に関与したとして起訴された事案において、原審は証拠に基づき、被告人が共同正犯として犯行に及んだ旨の事実認定を行い、有罪判決を言い渡した。これに対し弁護人は、原判決において被告人が「従犯」ではないことを具体的に判示していない点は理由不備の違法があると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、共同正犯と従犯は論理的に両立しない観念であることを前提とした。原審が証拠を総合して被告人の行為を共同正犯であると認定した以上、その認定によって自ずと従犯ではないことが示されたといえる。したがって、あえて従犯の成否について独立した判示を加えなくとも、旧刑事訴訟法360条(現行刑事訴訟法335条1項等)が要求する証拠説明として不十分な点はないと評価される。
結論
共同正犯と認定した以上、特段従犯でない旨を判示する必要はなく、原判決に違法はない。
実務上の射程
共犯の区別に関する基本的事理を示したものであり、実務上、正犯性の有無が争点となる事案において、共同正犯の成立要件(共謀、及びそれに基づく実行行為)が充足されれば、自動的に従犯の余地は排除されるという論理構成に用いる。答案上は、共同正犯の成立を論証した後に、従犯の可能性を別途否定する必要がないことの法的根拠として援用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1001 / 裁判年月日: 昭和24年7月12日 / 結論: 棄却
一 犯罪事實の一部に付き被告人本人の自白のみでこれを認定しても差支ないこと及び被告人の自白と相被告人の自白を綜合して事實を認定しても差支ないことはいずれも當裁判所大法廷の判示する處であつて原判決には所論の様な違法はない。(昭和二三年(れ)第一六八號事件昭和二三年七月二九日言渡判決、昭和二三年(れ)第一一二號事件、昭和二…