一 犯罪事實の一部に付き被告人本人の自白のみでこれを認定しても差支ないこと及び被告人の自白と相被告人の自白を綜合して事實を認定しても差支ないことはいずれも當裁判所大法廷の判示する處であつて原判決には所論の様な違法はない。(昭和二三年(れ)第一六八號事件昭和二三年七月二九日言渡判決、昭和二三年(れ)第一一二號事件、昭和二三年七月一四日言渡判決) 二 各證據を綜合すれば事實を認定することが出來る以上、その中の一つの証拠が證明力の弱いものであるからといつて、それだけの理由で右認定が實驗則に反するということは出來ない。 三 適法な手續で訊問された證人の證言は法令に別段の定めある場合(例えば刑訴應急措置法第一二條第一項の如き)を除いては其の内容の如何を問わず本件に適用ある舊刑事訴訟法上證據能力があるのであつてその證人が過去において事件に關與した立場や、證言の内容の如何によつてその證人の證人たる資格や、證言の證據能力を制限した法則はない。
一 本人の自白のみによる犯罪事實の一部の認定及び本人と相被告人の自白の綜合による事實認定の可否 二 一つの證明力の弱い證據と他の證據とによる綜合認定と實驗則 三 證人の證言の証拠能力
憲法37條3項,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法336條,舊刑訴法337條,舊刑訴法184條,刑訴應急措置法10條3項,刑訴應急措置法12條1項
判旨
共同正犯が成立するためには、犯行時に互いに意思の連絡があれば足り、事前に相談等の合意があることまでは必要とされない。また、伝聞や主観的意見を含む証言であっても、他の証拠と総合して事実認定に用いることは、直ちに経験則に反するものではなく許容される。
問題の所在(論点)
1. 共同正犯の成立に、事前の合意や相談が必要か。 2. 伝聞や主観的意見を含む証言を、他の証拠と総合して事実認定の資料に供することは許されるか。
規範
1. 共同正犯の成立要件(旧刑法60条、現刑法60条):共同正犯として処断されるためには、犯行の際、各人の間に互いに意思の連絡があれば足り、事前に共謀や相談を行うことは必ずしも必要ではない。 2. 証拠能力と証明力:適法な手続で聴取された証言は、内容の如何を問わず証拠能力を有する。伝聞や主観的意見を含む証言は一般に証明力が弱いが、他の証拠と総合して事実認定の資料とすることは、特段の事情がない限り自由心証及び経験則に反しない。
重要事実
被告人AおよびBは、被害者Dを日本刀で斬り殺害した。被告人らは、殺意の欠如、共同正犯の不成立(事前の相談がない)、および正当防衛(または誤想防衛)を主張した。また、証人Cの証言が伝聞や主観に基づくものであり、これを用いた事実認定は違法であると主張して上告した。
あてはめ
1. 共同正犯について:記録によれば、被告人らは日本刀で武装して攻撃に転じており、犯行時に互いの間に意思の連絡があったことは明白である。事前に相談がなかったとしても、現場での意思疎通により共同正犯は成立する。 2. 証拠の評価について:証人Cの証言には伝聞や主観が含まれるが、本件では他の多数の証拠と総合してA・Bの犯行を認定しており、その認定は経験則に照らして合理的である。証拠の取捨選択は事実審の専権であり、一部の証明力が弱いことをもって認定全体を違法とすることはできない。
結論
被告人らの間に犯行時の意思の連絡が認められる以上、共同正犯の成立を認めた原審の判断に違法はない。また、証拠の総合評価に基づく事実認定も適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、共同正犯における「意思の連絡」が現場での黙示的なものや同時的なもので足りることを示した実務上重要な先例である。答案上では、実行行為時における現場共謀を肯定する際の根拠として活用できる。また、証拠の総合評価における裁判所の広い裁量を認める一材料となる。
事件番号: 昭和24(れ)1401 / 裁判年月日: 昭和24年8月9日 / 結論: 棄却
一 元來被告人が犯行を否認する事件では動機の判明しないのがむしろ普通でありそうなことだが動機が不明でも犯罪の事實が相當の程度に立證されれば理由不備にはならない。 二 第一審裁判所に勾留原因開示の申立をしたのに、裁判所が何等これに對し、裁判をしなかつたのは、舊刑訴法第四一〇條第一五號の法意に違反するものであると主張する。…