被告人は、甲が金品強取の目的で乙を殺害しようとしてその首を絞めているとき、その企図を察知共謀の上乙の抵抗を阻止し、また着用の腰紐を甲に与えて絞首殺害の目的を達成するに至らせた旨の訴因で、被告人において甲が乙殺害の目的でその首を絞めている企図を察知しながら、その着用の腰紐を甲に与えて、絞首殺害の目的達成を容易ならしめてこれを幇助したと認めるのには訴因の変更を必要としない
訴因の変更を必要としない事例(強盗殺人の共同正犯―殺人の幇助)
刑訴法312条,刑法240条,刑法199条,刑法60条,刑法62条
判旨
強盗殺人の共同正犯の訴因に対し、裁判所が訴因変更を経ずに殺人の幇助を認定することは、被告人の防御に不利益を与えない限り許容される。本件のように、外形的事実が同一で、認定された罪が訴因より有利であり、被告人が自ら幇助を主張していたような場合には、訴因変更の手続を要しない。
問題の所在(論点)
強盗殺人の共同正犯という訴因から、訴因変更手続(刑事訴訟法312条1項)を経ずに殺人の幇助罪を認定することが、訴因の機能である防御権の保障に照らし許されるか。
規範
訴因は審判の対象を明確にして被告人の防御に不利益を与えないために設定される。したがって、認定事実が訴因に含まれる外形的事実と同一であって、認定される罪が訴因よりも被告人に有利であり、かつ被告人の防御を害するおそれがない場合には、裁判所は訴因変更の手続を経ることなく別個の罪を認定することができる。
重要事実
被告人は強盗殺人の共同正犯として起訴された。しかし、原審は裁判手続において訴因変更の手続を経ることなく、被告人に対し殺人の幇助罪を認定した。これに対し、被告人側は訴因変更なしに幇助罪を認定することは違法であるとして上告した。なお、被告人自身は審判の過程で幇助に相当する主張を行っていた。
あてはめ
本件における犯罪の外形的事実は訴因と認定事実の間で全く同一である。また、共同正犯から幇助罪への変更は、どの程度の犯意があったかという評価の差異に帰結し、その法定刑も共同正犯より遥かに被告人に有利なものとなる。さらに、被告人自身が幇助に相当する主張をしていた事実に鑑みれば、訴因変更の手続を履践しなかったとしても、不意打ち等により被告人の防御を害したものとは認められない。
結論
共同正犯の訴因で幇助を認定することは、被告人の防御を害しない限り妨げられず、本件における訴因変更なき認定は適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
共同正犯から幇助への認定について、訴因変更の要否を判断したリーディングケースである。答案上は、訴因変更の要否の基準(一般的表示機能・具体的防御機能)を論じる際、本判決を根拠に「構成要件的に重なり合いがあり、かつ被告人に有利で不意打ちにならない場合」の典型例として、変更不要とする論理に活用できる。
事件番号: 昭和58(あ)1112 / 裁判年月日: 昭和60年12月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人と実行犯との一連のやり取りを述べる供述において、その中核部分の信用性に合理的な疑いがある場合、特段の事情がない限り、これと密接に関連する他の供述部分の信用性にも重大な疑惑が生じる。また、被告人と暴力団関係者との個人的親交があるからといって、直ちに組織的な殺害計画への加担や知情を推認することは…
事件番号: 昭和24(れ)409 / 裁判年月日: 昭和25年7月19日 / 結論: 棄却
一 正犯らが某者殺害の成功謝金につき「一〇萬圓出せ」「九萬圓で辛抱しろ」と折衝を重ねていた際、傍で「その位でやつてやれ、禮金は引受けた」と助言し結局實行正犯に九萬圓支拂う約束の下に右殺害の謀議が成立し、擔當者においてこれを實行した以上、特段の事情の認められない限り、右助言によつて正犯の犯行が容易にせられたものと推認する…