一 正犯らが某者殺害の成功謝金につき「一〇萬圓出せ」「九萬圓で辛抱しろ」と折衝を重ねていた際、傍で「その位でやつてやれ、禮金は引受けた」と助言し結局實行正犯に九萬圓支拂う約束の下に右殺害の謀議が成立し、擔當者においてこれを實行した以上、特段の事情の認められない限り、右助言によつて正犯の犯行が容易にせられたものと推認することができる。 二 殺人幇助の事實につき、(從犯たる)被告人の自白がなくても、正犯たる第一審相被告人の一人が檢事に對して被告人が右幇助の言動に出た旨供述して居り、該供述が架空のものでないことを保證する證據があるばかりでなく、被告人の檢事に對する供述により被告人と右殺人幇助の事實との結びつきまで裏書されている以上、これらの證據を綜合して右幇助の事實を認定しても、憲法第三八條第三項に違反しない。
一 助言による幇助の一例 二 正犯の公判外の供述による從犯の幇助行爲の認定とその補強證據
刑法62條,憲法38條3項
判旨
共犯者の自白は、他の共犯者の自白の補強証拠となり得るとともに、幇助行為は正犯の犯行を容易にしたと推認できれば、正犯者が助言によって決意を強固にした等の事情がなくとも成立する。
問題の所在(論点)
1. 共犯者の供述が、他の共犯者の自白に対する補強証拠となり得るか(自白の補強法則の適用範囲)。2. 正犯者が助言によって決意を強固にした等の供述がない場合でも、幇助罪の因果関係を認めることができるか。
規範
1. 自白の補強証拠(刑訴法319条2項)について、共犯者の供述は、自己の自白との間に実質的な同一性がない限り、相互に他の共犯者の自白の真実性を担保する補強証拠となり得る。2. 幇助犯(刑法62条1項)の因果関係について、正犯の実行行為を物理的または精神的に容易にしたと認められれば足り、正犯者が当該助言等によって現に殺意を強固にしたといった主観的反応の立証までは必ずしも必要とされない。
重要事実
被告人AらによるG殺害の計画において、報酬額の交渉(5万円から10万円の間での折衝)が行われていた際、被告人Jが「その位でやってやれ、礼金は引き受けた」と助言した。この助言の後、報酬9万円で殺害の謀議が成立し、実行犯Cらによって殺害が実行された。被告人Jは殺人幇助罪で起訴されたが、弁護側は、実行犯らがJの助言により殺意を強固にした等の供述がないため、幇助の因果関係が認められないと主張した。また、被告人らの有罪認定にあたり、共犯者相互の供述が補強証拠として用いられた。
あてはめ
1. 被告人H、Iらの自白に対し、共同被告人の各供述は、自白の真実性を直接間接に保障し、犯行を裏書するに十分であるため、補強証拠として許容される。2. 被告人Jの助言は、報酬額の折衝という犯行の成立に関わる重要な局面で行われており、この助言によって最終的に9万円での殺害謀議が成立した。かかる状況下では、実行犯らが「助言により殺意を強固にした」と明示的に供述していなくとも、特段の事情がない限り、当該助言が犯行を容易にしたと推認するのが相当である。
結論
共犯者の供述は補強証拠となり得る。また、被告人Jの助言は正犯の犯行を容易にしたといえるため、殺人幇助罪が成立する。
実務上の射程
共犯者の供述が補強証拠となる点は、現在の判例実務でも維持されている重要な規範である(いわゆる「共犯者の自白」の証拠能力と証明力)。幇助の因果関係については、精神的幇助における「犯行の容易化」の判断枠組みとして、正犯の心理的経過の直接立証が困難な場面での推認を認める基準として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2239 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみで有罪とすることは憲法38条3項及び刑訴法319条1項により禁じられるが、自白以外の補強証拠が存在し、かつ自白の任意性が認められる場合には、有罪判決の基礎とすることができる。 第1 事案の概要:被告人両名(うち1名はA)に対し、一審及び二審において有罪判決が下された。被告人側は、当…
事件番号: 昭和59(あ)1199 / 裁判年月日: 昭和63年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の自白は、被告人の自白に対する補強証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人は内妻である共犯者Cと共謀の上、保険金目的でA及びBを殺害した。被告人にはこれら殺害の事実について自白が存在した。一方で、共犯者Cについても同様に殺害に関与した旨の自白が存在した。被告人側は、憲法38条3項を根拠に、…