一 記録を調べてみると被告人兩名が勾留せられたのは、昭和二二年四月二一日であつて、同年五月九日には兩名共保釋を許されている。そうして第二審判決が舉示する證據の中、司法警察官の右兩名に對する聽取書記載の供述はいずれも勾留前(Aに對するもの同年四月一八日、Bに對するもの同月年四月一六日及び同月一八日)になされ、右兩名に對する檢事の聽取書記載の供述はいずれも勾留後七日を經た四月二八日になされたものである。このような供述が憲法第三八條第二項及び刑訴應急措置法第一〇條第二項にいわゆる「不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」にあたらないことは、當裁判所の判例(昭和二三年(れ第四三五號同年一〇月六日大法廷判決集第二卷第一一號第一二七七頁)の趣旨に徴して明かである。 二 共同被告人の間にいわゆる必要的共犯の關係があつても、民訴第六二條第一項の規定を根據として共同被告人の供述は、補強證據となり得ないものということはできない。
一 不當に長く抑留又は拘禁された後の自白にあたらない事例 二 必要的共犯たる共同被告人の供述の證據力と民訴第六二條第一項
憲法38條2項,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條2項,刑訴應急措置法10條3項,民訴62條1項
判旨
共同被告人または共犯者の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には当たらず、必要的共犯の場合であっても他の共犯者の有罪判決のための補強証拠となり得る。
問題の所在(論点)
共同被告人や共犯者の自白が憲法38条3項(および刑訴法319条2項)にいう「本人の自白」に該当するか。また、これらを補強証拠として用いることができるか(特に必要的共犯の場合)。
規範
憲法38条3項が「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が、本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定する「本人の自白」には、共同被告人や共犯者の供述は含まれない。したがって、共犯者の供述は他の被告人の罪を認定する際の補強証拠(刑訴法319条2項)として用いることができる。この理は、構成要件上複数の行為者を必要とする必要的共犯であっても同様に適用される。
重要事実
被告人AおよびBは共犯関係にあり、勾留前(A:4月18日、B:4月16・18日)および勾留から7日経過後(4月28日)に司法警察官や検察官に対して自白を含む供述を行った。第1審および第2審は、これら共犯者の供述を相互に補強証拠として採用し、有罪判決を下した。これに対し、弁護側は共犯者の自白は「本人の自白」に含まれるべきであり、必要的共犯において共犯者の供述を補強証拠とすることは憲法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、既に確立された判例に基づき、共犯者の自白は「本人の自白」には当たらないと判示した。本件においても、必要的共犯であるからといってこの解釈を異にする理由はない。また、不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項等)についても検討されたが、被告人らは勾留後約18日間で保釈されており、問題となる供述も勾留前または勾留後わずか7日の段階でなされたものである。記録上、強制による疑いも認められないため、これらの供述には証拠能力が認められ、補強証拠として採用した判断は正当である。
結論
共犯者の自白は「本人の自白」に含まれない。したがって、必要的共犯の場合であっても、共犯者の供述を補強証拠として被告人を有罪とすることは憲法38条3項に違反しない。
実務上の射程
刑事訴訟法319条2項の「自白」の範囲に関する重要判例。答案上は、共犯者の供述の証拠能力(321条以下)を認めた上で、証明力の問題として「補強証拠の要否」を論じる際に活用する。必要的共犯であっても例外ではない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和29(あ)2492 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の供述は、憲法38条3項の「自白」には含まれず、被告人の自白を補強する証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人が公判廷内および公判廷外で自白をしていた事案において、第一審裁判所は、これらの自白に加えて、共犯者(共同正犯および必要的共犯)の公判廷外の供述を証拠として被告人を有罪と認定した。こ…