一 所論公訴棄却の判決は、その公訴にかゝる強盜の事實については既にそれと連續犯の關係にある窃盜の事實について別に公訴が提起せられてあつたがために、一個の連續犯に對して重ねて公訴を提起することは、許されないとの理由によつてその公訴自体を不適法として棄却したものであつて、その公訴にかゝる強盜の事實について何ら、實質上の審判をしたものでないことは、本件記録上あきらかである。しかして、かかる公訴棄却の判決は、その確定した後においても、その對象となつた事案について、訴訟條件を具備した上には更に實質上の審判をすることは、亳も差しつかえないところである。 二 いわゆる「連續犯通知」なるものは、檢察官が起訴状記載の公訴事實と連續犯の關係にある他の事實を探知した場合にこれを裁判所に通知し、同事實に對する裁判所の審判を求めるもので、これは單に裁判所の職權作用を促すに過ぎないものであつて所論のように新なる公訴提起の性質を有するものではないのであるから、これまた、所論公訴棄却の判決の有無、若しくはその判決の既に確定したか否かに、亳もかかわるところはないのである。 三 各訊問調書の謄本は、その原本を作成した司法検察官と同一警察署(鴻巣警察署)に在勤する司法警察吏、巡査Aが適法に認證作成したものであることは記録添付の右各謄本に徴してあきらかであつて、このように適法に作成された書類の謄本はそれが謄本であらからといつて、それがためにその證據能力を否定すべき何らの根據もなくかつ、右謄本については、原審公判において適法に證據調を經たものと解すべきことは、前段説明のとおりであるから、被告人に對して、「謄本作成の正確性に關しても、これをたゞす機會は十分に與え」られてあるものというべく、從つて原判決が右謄本を證據としたことについて、所論のような違法があるものということはできない。
一 二重起訴の場合その一につきなされた公訴棄却の確定判決の効力 二 いわゆる「連續犯通知」の意義 三 司法警察吏が適法に認證作成した訊問調書謄本の證據能力
刑法55條(改正前),舊刑訴法364條4號,舊刑訴法291條,舊刑訴法337條,舊刑訴法338條1項
判旨
実質的審理を経ていない公訴棄却判決の確定は、同一事案に対する後の実質的審判を妨げるものではない。また、一罪の一部として起訴された事実について、追起訴に代えてなされる「連続犯通知(現在の一罪の一部追加)」は裁判所の職権発動を促す作用に留まり、二重起訴の禁止には抵触しない。
問題の所在(論点)
1. 実質的審判を経ていない公訴棄却判決の確定後、同一の事実について実質的審理を行うことができるか。 2. 検察官による「連続犯通知」は、新たな公訴提起にあたり二重起訴として禁止されるか。
規範
1. 公訴棄却の判決は、訴訟条件の欠如等を理由に公訴を不適法として退ける形式裁判であり、実質的な審理を行うものではない。したがって、同判決が確定しても事案の同一性に基づく既判力(一事不再理効)は発生せず、訴訟条件を具備した上での再度の実質的審理を妨げない。 2. いわゆる「連続犯通知(起訴状に記載のない余罪を審判対象に加える趣旨の通知)」は、裁判所の職権作用を促す性質を有するものであり、独立した新たな公訴提起には当たらない。
重要事実
被告人が窃盗罪で起訴され、その控訴審が継続中であった。これとは別に、検察官は当該窃盗と連続犯の関係にある強盗の事実について公訴を提起したが、二重起訴(一個の連続犯に対する重複起訴)に当たるとして公訴棄却判決を受け、これが確定した。その後、検察官は窃盗罪の控訴審に対し、当該強盗の事実についても審判を求める旨の「連続犯通知」を行った。弁護人は、確定した公訴棄却判決の効力や二重起訴の禁止に反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 本件の公訴棄却判決は、連続犯の一部について二重に公訴が提起されたことを理由とする不適法却下であり、強盗の事実について実質的な審理を何ら行っていない。ゆえに、判決確定後であっても、訴訟条件を具備する限り実質的審判を行うことは何ら差し支えない。 2. 本件強盗の事実は起訴済みの窃盗と一罪の関係にあるため、当該裁判所は当然に審判権限を有する。検察官が行った「連続犯通知」は、裁判所の職権発動を促すものに過ぎず、新訴の提起ではない。したがって、前の公訴棄却判決の有無や確定の成否にかかわらず、有効に裁判所の審判対象となり得る。
結論
公訴棄却判決に実質的確定力は認められず、また連続犯通知は新訴提起ではないため、原審が強盗の事実を審判対象としたことに違法はない。
実務上の射程
実務上、訴訟条件の欠缺(刑訴法338条、339条)による形式裁判には既判力が及ばないことを示す基礎的な判例である。また、旧法下の「連続犯」に関する判断ではあるが、現行法における「訴因変更(追記)」や「一罪の一部起訴と余罪の関係」において、形式裁判後の再起訴や、審判対象の拡張が許される限界を検討する際の理論的支柱となる。
事件番号: 昭和26(れ)1572 / 裁判年月日: 昭和26年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文には具体的な判旨が記載されておらず、上告理由が刑事訴訟法405条に該当せず、同法411条を適用すべき事由も認められないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決の認定事実に異議を唱え、弁護人が上告趣意を申し立てた事案。しかし、判決文からは具体的な起訴事実や事件の背景、…
事件番号: 昭和24(れ)2907 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 棄却
住居侵入罪と強盜致死罪竝に強盜傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行爲は強盜致死及び強盜傷人罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であるから、前者が後者に處罰上吸收せられると做す所論は理由がない。しかも右の兩者の間には通常手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盜致死…