選舉人並びに選舉運動者である者が、自己の投票と選舉運動に對する報酬及び費用並びに他の選舉人又は選舉運動者に對する報酬及び費用とに充てる趣旨の下に金銭をもらい受けた場合には、衆議院議員選舉法第一一二條第一項第四號の罪が成立する。
選舉人並びに選舉運動者である者が、自己の投票と選舉運動に對する報酬及び費用並びに他の選舉人又は選舉運動者に對する報酬及び費用に充てる趣旨の下に金錢をもらい受けた場合と衆議院議員選舉法第一一二條第一項第四號の罪が成立
判旨
選挙運動の報酬や他者への供与資金として一括して金員を授受した場合、その使途の内訳が特定されず被告人の裁量に委ねられているときは、全額につき受供与罪が成立する。
問題の所在(論点)
公職選挙法(旧法下の事案)における買収罪において、自己の報酬分と他者への配分用資金を区別せず一括して受領した場合、どの範囲で受供与罪が成立するか。
規範
特定の候補者に当選を得させる目的で、自己の報酬や他者への供与資金として金員を受領した場合、その中からどの程度を自己の所得とし、どの程度を他者へ供与するかが明示されず、その配分が全面的に受領者の裁量に委ねられているときは、一応その全額について受領者の所得に帰せしめる意図があったものと認められ、全額について受供与罪が成立する。
重要事実
被告人Aは、候補者を当選させる目的で、被告人BおよびCに対し、選挙運動の報酬および費用、ならびに他の選挙人等に供与するための資金として合計1万5000円を供与した。BおよびCは、その趣旨を了承してこれを受領した。この金員授受の際、Bらの報酬分と他者への供与分との内訳は明らかにされず、具体的な配分はすべてBらの裁量に委ねられていた。
あてはめ
本件では、授受された1万5000円の中に他者へ供与すべき金員が含まれていたものの、授受の時点では内訳が特定されていなかった。このように、金員の使途や配分が受領者の裁量に委ねられている事案においては、受領した全額が一旦は被告人の所得に帰する形での授受があったと評価できる。したがって、授受された金額の全体について受供与罪の構成要件を充足すると解される。
事件番号: 昭和25(あ)2676 / 裁判年月日: 昭和26年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙運動の報酬および資金として供与された金員が、受領者の所得に帰したものと認められる場合には、その全額が追徴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人Aは被告人Bに対し、選挙運動の報酬および資金として合計8万円を供与した。Bはこの趣旨を理解して当該金員を受け取り、その全額がBの所得に帰した。原審は、…
結論
被告人らの裁量により全額を自己の所得とする余地がある以上、受領した全額について受供与罪が成立する。
実務上の射程
買収資金の「中間受領者」の罪責に関する判断。使途が厳密に区分されず裁量が認められる場合には、受領額全額を犯罪組成とする実務上の処理を肯定した点に射程がある。受領した金員を実際に他者へ供与したとしても、受供与罪の成立自体は妨げられない。
事件番号: 昭和34(あ)2120 / 裁判年月日: 昭和35年4月8日 / 結論: 棄却
被告人が供与を受けた選挙買収金員を以て、その独自の裁量に基いて更に他を買収した場合には、前の受供与罪と後の供与罪との間に吸収の問題を生ずべき余地は存しない。