昭和二〇年厚生省第四四號第一條は、麻藥取締という立法の目的に鑑みて、塩酸ヂアセチルモルヒネ及びその製劑の輸送を、國の内に於けると外に對するとを問わず一般に禁止する趣旨であること明かであつて、そのいわゆる「輸送」を、所論のように海外取引に付て輸出入に限ると解すべき根據は少しもない。
昭和二〇年厚生省第四四號第一條にいわゆる「輸送」の意義
昭和20年厚生省44號1條
判旨
麻薬取締法規における「輸送」とは、海外取引に伴う輸出入に限定されず、国内における移動も含まれる。また、当該物件が禁止された麻薬であるとの認識があれば、保管等の動機にかかわらず輸送の罪が成立する。
問題の所在(論点)
1.麻薬取締法規(昭和20年厚生省令44号)における「輸送」に国内移動が含まれるか。2.麻薬輸送罪の成立に、禁止物件であることの認識以上の「不法輸送の意思」や特定の動機が必要か。
規範
1.「輸送」の意義について:麻薬取締という立法の目的に鑑み、禁止された薬剤の輸送は国内・国外を問わず一般に禁止される。2.主観的要件について:当該薬剤が禁止された麻薬であるとの認識(故意)があれば足り、不法な輸送の意思や特定の動機(保管目的等)までは不要である。
重要事実
被告人は、三重県衛生試験所の主任という立場にありながら、没収を免れる目的または保管目的で塩酸ジアセチルモルヒネ(麻薬)を運搬したとして、昭和20年厚生省令第44号違反で起訴された。被告人側は、同省令にいう「輸送」とは海外取引に伴う輸出入を指すものであり、また単なる保管目的であって不法輸送の意思はなかったと主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)400 / 裁判年月日: 昭和24年7月26日 / 結論: 棄却
一 原判決の認定した事實によれば本件物件を金一五萬圓に見積り、被告人が買受けるキヤラコ代金の内金の代りとして交付したというのであるから、原判決において適応した昭和二〇年一一月二〇日厚生省令第四四號第一條にいわゆる「販賣」に該當するものと解すべきである。 二 塩酸ヂアセチルモルヒネを販売した行為が、相手方の詐欺に基くもの…
あてはめ
1.麻薬取締の立法目的は、有害な薬剤の流通を厳格に管理することにある。したがって、海外取引のみならず、国内における一切の移動も「輸送」に含まれると解するのが正当である。2.被告人は本件物件が塩酸ジアセチルモルヒネであることを認識した上で運搬しており、故意は認められる。仮に動機が「保管」のためであったとしても、禁止物件である認識を持って輸送行為に及んでいる以上、犯罪の成立を妨げるものではない。
結論
被告人の行為は、国内の運搬であっても省令上の「輸送」に該当し、麻薬であることの認識がある以上、保管目的であっても同罪が成立する。
実務上の射程
行政法規の処罰規定における「行為」の解釈を立法目的に照らして広く捉える姿勢を示している。答案上は、特別法犯における故意の対象を「対象物の認識」に絞り、動機や不法な目的の有無を問わないとする規範を定立する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)3021 / 裁判年月日: 昭和27年2月21日 / 結論: 棄却
麻薬取締法の規定にいわゆる所持には第一審判決の判示のような販売する目的での所持は勿論、利益をうる意思なき者の所持をも包含すると解すべきことはいうまでもないところである。