一 贈賄被疑及び同被告事件につき勾留されたこと、贈賄罪により罰金二百八十圓に處せられた事實は、公職禁止、退職等に關する昭和二二年勅令第一號第一六條第一項第一號にいわゆる「重要な事項」に該當しない。 二 公職に關する就職禁止、退職等に關する昭和二二年勅令第七條第一項の調査表に所謂著述した刊行物とは、一定の思想を發表するための文書に作成刊行せられたものを謂うのであつて、たとえ一片の紙片であつて單行本冊子の體を具えないでも、苟くも一定の思想を發表する目的で印刷し多數人に頒布せられたものである以上、右に所謂著述した刊行物であると解するのが相當である。從つて本件勤勞奉忠隊結成趣意書は、まさに調査表に所謂著述した刊行物に該當するに拘わらず原判決がこれを著述した刊行物にあらずとしたのは、法律の解釋を誤つた違法がある。 三 戰局急迫の際印刷頒布した「勤勞奉忠隊結成趣意書」と題する印刷物は公職に關する就職禁止、退職等に關する昭和二二年勅令第一六條第一項第一號にいわゆる「重要に事項」に該當しない。
一 贈賄罪に關する勾留及び前科と公職禁止令第一六條第一項第一號にいわゆる「重要な事項」 二 公職禁止令第七條第一項の調査表にいわゆる「刊行物」の意義 三 「勤勞奉忠隊結成趣意書」と公職禁止令第一六條第一項第一號にいわゆる「重要な事項」
昭和22年勅令1号公職追放令16条1項1号,昭和22年勅令1号公職追放令7条1項
判旨
公職追放に関する調査表の「重要な事項」とは、被調査者が軍国主義者等として公職追放の該当者であるか否かを審査するにつき、実質的牽連のある事項をいう。虚偽記載罪の成否は、項目そのものではなく、記載内容が審査資料として実質的意義を有するか否かにより具体的に判断される。
問題の所在(論点)
昭和22年勅令第1号16条1項1号にいう「重要な事項」の意義、および過去の軽微な前科や戦時中の一般的啓蒙活動がこれに該当するか。
規範
「重要な事項」とは、調査表を徴する目的である軍国主義者・極端な国家主義者の追放(ポツダム宣言等の趣旨)に照らし、被調査者が追放該当者であるか否かを審査するにつき、実質的牽連のある事項を指す。その有無は項目ごとに抽象的に決まるのではなく、記載内容から具体的に判断すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)435 / 裁判年月日: 昭和26年3月23日 / 結論: 棄却
一 しかし原審が本件において被告人が判示村帝国在郷軍人分会副長に就任した事実をもつて覚書該当者であるか否かを審査するにつき実質的牽連のある事項で追放令第一六条第一項第一号にいわゆる「調査表の重要な事項」に該当すると判断したのは所論引用の当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第九三四号同年九月八日第二小法廷判決参照)に則した判…
重要事実
旭川市長選挙に立候補した被告人が、調査表に(1)約10年前の贈賄罪による罰金前科(市長選の謝礼目的で5名に計800円)および勾留事実、(2)戦時中に戦局挽回を唱えた「勤労奉忠隊結成趣意書」の刊行頒布事実、の2点を記載しなかった。これにより、昭和22年勅令第1号16条1項1号違反(重要事項の不記載)に問われた。
あてはめ
(1)前科等については、十数年前の古い事実にすぎず、その刑も罰金280円と軽微であって、被告人が軍国主義者等に該当するかを審査する上で実質的牽連はない。(2)趣意書の刊行については、その内容は戦局悪化に際し国民の生産増強を提唱したにすぎず、当時の情勢では一般的であり、軍国主義を鼓吹する資料とはいえない。激越な言葉(聖戦、一億族滅等)は当時の常套語であり、断片的用語ではなく全趣旨から判断すべきである。
結論
被告人の不記載は「重要な事項」に関するものとはいえず、虚偽記載罪は成立しない。被告人は無罪。
実務上の射程
行政上の届出・申告における「重要事項」の虚偽記載罪全般において、単なる形式的記載義務の違反ではなく、制度の目的(審査の有効性)に照らして実質的な重要性を要するとする解釈の指針として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1455 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年勅令第一號(公職に關する就職禁止退官退職等に關する勅令)第一六條第一項第一號に「調査表の重要な事項について……事實をかくした記載をした者」とあるのは、調査表に記載すべき重要な事項について、實在する事實を、その實在することを確認しながら、記載しなかつたものという意味である。この認識の外に特定の事實を他人に知…
事件番号: 昭和26(あ)2230 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和22年勅令第1号15条にいう「政治上の活動」は、目的犯のように政治的目的ないし政治的意図を要件とするものではない。政府等の施策活動に関する論議であり、現実の政治に影響を与える行動であれば、主観的な目的の有無にかかわらず同条の活動に該当する。 第1 事案の概要:被告人が行った論議が、昭和22年勅…
事件番号: 昭和23(れ)1862 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときの…
事件番号: 昭和25(れ)1021 / 裁判年月日: 昭和25年12月20日 / 結論: 棄却
一 A組合の主事であつたことを調査表に記載しなかつたたという公訴事実と、同組合の主宰者であつたことを調査表に記載しなかつたという事実とは公訴事実の同一性がない。 二 調査表に不実の記載をした罪については、不実であることについて犯意を要するのであるが、その犯意は未心的故意をもつて足りる。