一 しかし原審が本件において被告人が判示村帝国在郷軍人分会副長に就任した事実をもつて覚書該当者であるか否かを審査するにつき実質的牽連のある事項で追放令第一六条第一項第一号にいわゆる「調査表の重要な事項」に該当すると判断したのは所論引用の当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第九三四号同年九月八日第二小法廷判決参照)に則した判断であつて毫も右判例と相反する判断をしたものであるということはできない。 二 昭和二二年閣令内務省令第一号はその別表第一に覚書該当者としての指定をなすべき基準を示しその七号に「その他の軍国主義者及び極端な国家主義者」を挙げ、その備考として「この号に該当する者としての指定は個人的審査に俟たなければならないが、その審査の基準は概ね次の通りとする」と規定し帝国在郷軍人会については昭和一二年七月七日と昭和二〇年九月二日との間において「都市区町村連合分会長又は市区町村分会長の地位に在つた者」と挙示し分会副長を挙示していないのであるが、右の基準は一応の基準であつて結局個人的審査に俟たなければならぬ事項である。従つて帝国在郷軍人会の村分会副長の地位に在つた者でも在任中の活動状況等によつては覚書該当者として指定されるおそれが多分にある地位にあるものといわなければならない。それゆえ村分会副長の地位は前示閣令の内務省令第一号の一応の基準の中に入つていないという一事をもつてその地位に在つた事実は覚悟該当者であるか否を審査するにつき実質的牽連のない事項と即断することはできない。
一 帝国在郷軍人分会副長に就任した事実は、昭和二二年勅令第一号(公職追放令)第一六条第一項第一号にいう「調査表」の重要な事項に該当する 二 昭和二二年閣令内務省令第一号別表第一の七の趣旨と帝国在郷軍人分会副長の地位
昭和22年勅令1号16条1項1号,昭和22年閣令内務省令1号1条,昭和22年閣令内務省令7条,昭和22年閣令内務省令1号別表第1の7
判旨
追放令16条1項1号の「調査表の重要な事項」とは、覚書該当者であるか否かを審査するにつき実質的牽連のある事項を指し、法令に例示された基準に直接記載のない地位であっても、在任中の活動状況等により覚書該当者として指定されるおそれがある事実はこれに該当する。
問題の所在(論点)
追放令(昭和22年勅令第1号)16条1項1号にいう「調査表の重要な事項」の意義、および指定基準に明記されていない「村分会副長」の地位にあった事実がこれに該当するか。
規範
「調査表の重要な事項」とは、被調査者が覚書該当者(公職追放の対象者)であるか否かを審査するにつき、実質的牽連のある事項をいう。法令が定める指定基準は一応の目安にすぎず、最終的には個人的審査に委ねられるべき事項であるため、例示基準に明記されていない事実であっても、その地位や活動状況から指定の可能性を否定できない場合は、審査に影響を及ぼす「重要な事項」に含まれる。
事件番号: 昭和23(れ)934 / 裁判年月日: 昭和23年9月8日 / 結論: 破棄自判
一 贈賄被疑及び同被告事件につき勾留されたこと、贈賄罪により罰金二百八十圓に處せられた事實は、公職禁止、退職等に關する昭和二二年勅令第一號第一六條第一項第一號にいわゆる「重要な事項」に該當しない。 二 公職に關する就職禁止、退職等に關する昭和二二年勅令第七條第一項の調査表に所謂著述した刊行物とは、一定の思想を發表するた…
重要事実
被告人は、公職資格の適格審査に関する調査表において、過去に帝国在郷軍人会の村分会副長という地位にあった事実を記載しなかった。昭和22年閣令内務省令第1号の別表では、覚書該当者の基準として「市区町村分会長」を挙げているが、「分会副長」については明文の規定がなかった。被告人は、当該地位が基準に含まれていない以上、重要な事項には当たらないと主張して争った。
あてはめ
帝国在郷軍人会の村分会副長という地位は、法令の基準に直接の記載はないものの、在任中の活動状況等によっては、基準7号の「軍国主義者」等として個人的審査により覚書該当者に指定されるおそれが多分にある地位といえる。したがって、当該地位に在った事実は、審査当局が覚書該当性の有無を判断する上で実質的牽連を有する事項であると解される。単に形式的な基準に含まれていないことをもって、直ちに実質的牽連を否定することはできない。
結論
村分会副長の地位に在った事実は「調査表の重要な事項」に該当する。これを不実記載等した行為について、有罪とした原判決に法令解釈の誤りはない。
実務上の射程
行政上の届出や申告における「重要な事項」の解釈指針として活用できる。法令上の例示基準に限定されず、行政処分の目的(本件では公職追放の適正確保)に照らし、処分の成否を左右し得る実質的な関連性がある事実は、広く「重要」と判断される傾向にある点に注意を要する。
事件番号: 昭和25(れ)1021 / 裁判年月日: 昭和25年12月20日 / 結論: 棄却
一 A組合の主事であつたことを調査表に記載しなかつたたという公訴事実と、同組合の主宰者であつたことを調査表に記載しなかつたという事実とは公訴事実の同一性がない。 二 調査表に不実の記載をした罪については、不実であることについて犯意を要するのであるが、その犯意は未心的故意をもつて足りる。
事件番号: 昭和23(れ)1455 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年勅令第一號(公職に關する就職禁止退官退職等に關する勅令)第一六條第一項第一號に「調査表の重要な事項について……事實をかくした記載をした者」とあるのは、調査表に記載すべき重要な事項について、實在する事實を、その實在することを確認しながら、記載しなかつたものという意味である。この認識の外に特定の事實を他人に知…
事件番号: 昭和23(れ)1862 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときの…
事件番号: 昭和24(れ)356 / 裁判年月日: 昭和24年3月24日 / 結論: 破棄差戻
原判決摘示の被告人の供述部分は、寧ろ被告人が假指定の事實を知らなかつた有力なる反證と見るのが相當である。しかるに原判決が被告人のその前後の供述部分を無視抹殺して全然反對の立證趣旨にこれを供したのは實驗則に反して事實を認定した違法があるものといわざるを得ない。