一 略式手續は、對審判決の公開に關する憲法第八二條の適用を受けるものではなく、また、同法第三七條所定の被告人の迅速な公開裁判を受ける權利、證人を求め若しくは訊問する權利又は辯護人を依頼する權利等を害するものでもなく、また、もとより被告人の自白に關する同法第三八條第三項に觸れるものでもない。しかのみならず口頭辯論に基く通常の判決手續においても罰金以下の刑(新刑訴においては五千圓以下の罰金又は科料)にあたる事件については、被告人は特に裁判所の出頭命令がない限り、自から公判に出頭することを要するものではない。(舊刑訴法第三三一條新刑訴法第二八四條參照)そして、公判に出頭しないことは、被告人の側においても出頭の勞力と費用とを省き且つ就任環視の下に面目を失することを避け得る等の利益なしとしない。されば罰金又は科料のごとき財産刑に限りこれを科する公判前の命令手續として被告人に對しかかる利益考慮の餘地を與えると共に前示のごとき憲法上の權利の行使をも妨げない簡易手續を規定したからといつて毫も憲法に違反するものではない。(昭和二三年(つ)第二號同年七月二九日大法廷決定判例集第二巻第九號一一一五頁以下參照) 二 略式命令を請求する檢察官の請求は違憲でない。
一 略式手續の合憲性 二 略式命令の請求の合憲性
憲法37条,憲法38条3項,憲法82条,憲法32条,憲法37条1項,旧刑訴法523条
判旨
略式手続は、被告人の自由意思に基づく正式裁判の請求により通常の手続へ移行する機会が保障されているため、公開裁判を受ける権利(憲法37条1項、82条)等の諸権利を侵害せず合憲である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法が規定する略式手続は、公開の法廷での対審および証拠調べを経ずに刑を科す点において、憲法37条(迅速な公開裁判、証人審問権、弁護人依頼権)、憲法82条(対審の公開)、および憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)に違反しないか。
規範
略式命令は、被告人の自由意思による正式裁判の請求に基づき通常の手続において判決がなされることを解除条件とする裁判である。したがって、被告人が自らの意思で正式裁判を請求することにより、迅速な公開裁判を受ける権利(憲法37条1項)、対審の公開(82条)、証人審問権(37条2項)、弁護人依頼権(37条3項)等の諸権利を行使する機会が十分に確保されているといえる。
重要事実
検察官が略式命令の請求を行い、裁判所がこれに基づき公判手続を経ずに略式命令を発した事案において、被告人側が、略式手続は憲法が保障する公開裁判を受ける権利や証人喚問権、弁護人依頼権、自白に関する規定(憲法38条3項)に違反するとして、略式命令および検察官による略式請求の違憲性を主張して上告した。
あてはめ
略式命令を受けた被告人は、告知から7日以内に正式裁判の請求をすれば、通常の規定に従う審判を受けることができる。この場合、裁判所は略式命令に拘束されず、略式命令はその効力を失う。このように、被告人の選択によっていつでも憲法上の権利が保障される通常手続へ移行できる仕組みがある以上、略式手続そのものが公開裁判等の権利を奪うものとは解されない。また、罰金等の軽微な財産刑について、被告人が公判出頭の労力や衆人環視を避ける利益を考慮した簡易な手続を設けることは合理的である。
結論
略式手続に関する規定は憲法37条、38条3項、82条に違反しない。したがって、これに基づく検察官の略式請求も合憲である。
実務上の射程
刑事手続における簡略化された訴訟形式の合憲性を基礎づける最重要判例である。答案上は、被告人の「同意」や「正式裁判請求による通常手続への移行可能性」をキーワードとして、デュー・プロセスの保障と手続の合理性が両立していることを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和23(れ)871 / 裁判年月日: 昭和23年12月11日 / 結論: 棄却
一 略式手續が違憲でない以上略式命令の請求があつた場合に略式命令によるか又は通常の審判手續によるかは刑事訴訟法第五二五條により第一審が當該事件につき諸般の事情を勘案して決すべきものであるに拘わらず原審は本件公訴は通常の規定により審判すべきことを判示しているのであるからこの點に關する原審の見解は不當である。 二 刑事訴訟…