略式命令の請求は、區裁判所(簡易裁判所)に対し、その管轄に屬する事件につき、公判前における對審でない手續として略式命令で、罰金又は科料を科せられたき旨の公訴に附帶する檢察官の請求を云うものであつて、その請求の基礎たる公訴の提起そのもの又はこれと不可分の一體を成す特種の提起方法を指すものではない。これ舊刑訴法第五二四條(新刑訴法第四六二條參照)において略式命令の請求は公訴の提起と同時に書面でこれを爲すべきものとのみ規定し、公訴そのものの提起の方式については一般原則に譲つている所以である。されば假りの略式命令の請求が憲法に違反して無効であるとしても(しかしその有効であることは昭和二三年(れ)第八六八號同二四年七月一三日大法廷判決參照)公訴提起そのものの効力には何等影響を及ぼすものではないから、原判決には所論の違法は存しない。
略式命令の請求と公訴提起との關係
憲法82条,旧刑訴法523条,旧刑訴法524条
判旨
略式命令の請求は、公訴の提起に附帯して行われる検察官の請求であり、公訴提起そのものや不可分一体の特種な公訴提起方法ではない。そのため、仮に略式命令の請求が無効であっても、公訴提起の効力には影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
略式命令の請求(刑事訴訟法462条)が公訴提起と同時に行われるべきものとされる中で、略式命令の請求が無効である場合に、それに附帯してなされた公訴提起自体の効力も無効となるか。
規範
略式命令の請求は、公訴の提起に附帯する検察官の請求であって、公訴提起そのものやこれと不可分一体を成す特種の公訴提起方法を指すものではない。したがって、略式命令の請求の効力が否定されたとしても、それにより当然に公訴提起そのものの効力が否定されることはない。
重要事実
検察官が簡易裁判所に対し、略式命令の請求を行った事案である。弁護人は、略式命令の請求は憲法に違反して無効であり、それと不可分一体を成す公訴提起そのものも無効である旨を主張して上告した。
あてはめ
略式命令の請求は、簡易裁判所の管轄事件につき、公判前における非対審手続として罰金または科料を科すよう求める「公訴に附帯する請求」にすぎない。刑事訴訟法462条が公訴提起と同時に書面で行うべきと規定しているのは、手続の同時性を定めたものにすぎず、公訴提起の方式自体については一般原則が適用される。したがって、略式命令の請求が仮に憲法違反等で無効であったとしても、その基礎となる公訴提起の効力を左右するものではないといえる。
結論
略式命令の請求が無効であっても、公訴提起そのものの効力には何ら影響を及ぼさない。よって、原判決に違法はなく、再上告は棄却される。
実務上の射程
略式手続と通常の公訴提起を相対的に分離して捉える判例であり、略式命令の請求の瑕疵が公訴提起の有効性に波及しないことを示す。司法試験においては、公訴提起の有効性や訴訟条件の存否が争点となる場面で、附帯的な手続の瑕疵が本旨たる公訴提起を無効にするか否かの論理(可分性の判断)として参照し得る。
事件番号: 昭和23(れ)868 / 裁判年月日: 昭和24年7月13日 / 結論: 棄却
一 略式手續は、對審判決の公開に關する憲法第八二條の適用を受けるものではなく、また、同法第三七條所定の被告人の迅速な公開裁判を受ける權利、證人を求め若しくは訊問する權利又は辯護人を依頼する權利等を害するものでもなく、また、もとより被告人の自白に關する同法第三八條第三項に觸れるものでもない。しかのみならず口頭辯論に基く通…
事件番号: 昭和23(れ)446 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
原判決には、憲法によつて擁護される基本的人權を侵害した違法があると主張しても、その主張内容が實質において憲法違反を理由とするものでない以上、再上告の適法な理由とならない。補充意見裁判官齋藤悠輔