公判調書に某判事が裁判長判事として列席したと記載してあり、且つ、右調書の末尾に右判事が裁判長判事として署名捺印している場合には、公判調害が虚偽又は偽造であると認むべき事情か存在しない限り、右某判事が裁判長判事として公判に列席したものと認むべきである。
裁判長判事として公判に列席した事実の認定
刑訴法60条,刑訴法410条4号,刑訴法63条1項,刑訴法64条
判旨
公判調書に記載された列席裁判官は、他に特段の事情がない限り、適法に列席した裁判官であると認めるのが相当である。また、被告人の自白以外に、犯行に関連する物品の換価代金が存在する場合には、自白のみを唯一の証拠として刑を科したものとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 公判期日召喚状の記載が公判調書の記載と異なる場合、公判調書の証明力が覆されるか。2. 被告人の自白と、犯行対象物の換価代金の存在を総合して事実認定を行うことは、自白のみによる処罰の禁止に抵触するか。
規範
1. 公判調書の記載と列席裁判官の同一性:公判調書に特定の裁判官が列席し、署名押印した旨の記載がある場合、刑訴法(旧法)の規定に照らし、他に特段の事情がない限り、当該裁判官が列席したものと認める。2. 自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項):被告人の自白以外に、犯行に供された物品の換価代金等の客観的事実が存在する場合、これらを総合して事実を認定することは適法であり、自白のみによる処罰には当たらない。
重要事実
被告人らは精米の運搬輸送に関する罪に問われた。原審の第一回乃至第三回公判調書には、裁判長として判事Aが列席し、末尾にAの署名押印があった。しかし、弁護人は公判期日召喚状に裁判長として記名押印していたのは判事Bであったことを理由に、列席した裁判長はBであり調書の記載は虚偽であると主張した。また、原判決が被告人らの自白と、押収された精米の換価代金(2055円51銭)の存在を証拠として事実を認定したことに対し、自白のみを唯一の証拠とした違憲・違法があるとして上告した。
あてはめ
1. 公判調書の正確性について:公判調書には列席した裁判官が署名押印すべきことが定められており、本件調書には判事Aの署名押印がある。公判期日を指定した裁判官が必ずしも現実に公判に列席するとは限らないため、召喚状に判事Bの記名があることのみをもって、調書が虚偽であると断定することはできない。ほかに調書が偽造であると認めるべき形跡もないため、判事Aが適法に列席したと認められる。2. 補強証拠について:原判決は被告人らの自白だけでなく、本件運搬輸送に係る精米の換価代金という客観的な事実を総合して事実認定を行っている。したがって、自白のみを唯一の証拠として刑を科したものではない。
結論
本件各上告を棄却する。原判決に裁判所の構成に関する違法や、自白の補強法則に関する違憲・違法は認められない。
実務上の射程
公判調書の証明力(刑訴法52条参照)に関する基本的な考え方を示すとともに、自白の補強証拠として、犯行対象物から派生した金員(換価代金)が有効であることを認めた点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和24(れ)3126 / 裁判年月日: 昭和25年5月23日 / 結論: 棄却
しかし被告人の前科は、罪となるべき事實ではなく、單なる情状に過ぎないから、これについて厳格を證據説明を必要としないものであるのみならず原判決が證據として採用したのは被告人の原審公判廷における供述である。さうして公判廷における被告人の供述が憲法第三八條第三項にいわゆる本人の自白中に含まれないことは既に當裁判所の判例(昭和…
事件番号: 昭和23(れ)1403 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれず、補強証拠がなくとも当該自白のみで犯罪事実を認定できる。 第1 事案の概要:被告人が10日間にわたり拘禁され、その間に作成された書類や公判廷における自白の証拠能力および証明力が争点となった。被告人側は、不当に長…