一 被告人の所爲が、所論のごとく、見張りを命ぜられて、終始家の外部にうろうろしておつたに過ぎないとしても被告人が、他の共犯者と本件犯行について共謀をした事實が認定せられる以上、強盜の實行行爲をした他の共犯者と共に、共同正犯の罪責を免れないことは、當裁判所の判例の示すところによつて明らかである。 二 自白を補強すべき證據は、必ずしも自白にかかる犯罪組成事實の全部に亘つて、もれなく、これを裏付けするものでなければならぬことはなく、自白にかかる事實の眞實性を保障し得るものであれば足るのである。
一 強盜の見張りと強盜の共同正犯 二 強盜證據と自白の裏付け
刑法235條,刑法60條,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
自白の補強証拠は、犯罪組成事実の全部を漏れなく裏付ける必要はなく、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りる。
問題の所在(論点)
自白を唯一の証拠として有罪とされないための「補強証拠」は、自白にかかる犯罪事実のどの程度の範囲を裏付ける必要があるか(実質説の採用)。
規範
補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)の要否および程度については、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足り、必ずしも犯罪組成事実の全部を漏れなく裏付けるものである必要はないと解する。
重要事実
被告人は共犯者と共謀の上、強盗の実行に際して家の外で見張りを行っていた。第一審公判における被告人の自白以外に、被害者Aの予審における供述調書が証拠として提出されていた。当該供述調書には、事件当夜に数人の犯人が押し入って強盗被害を受けた顛末が記載されていたが、被告人がその場にいたことや犯行に参加した事実自体を直接示す内容は含まれていなかった。
事件番号: 昭和22(れ)153 / 裁判年月日: 昭和23年6月9日 / 結論: 棄却
一 原判決は、被告人の自白のみによつて判示事實を認定したものではなくて、被告人の自白の外に、Aの提出した(強盗)盗難被害届と匕首の存在とを總合して判示事實を認定したものであることは記録上明白であり、右證據によつて優に判示事實を認定するに足るものである。所論の如く被告人がB、C等と共謀したという事實に對する證據は被告人の…
あてはめ
本件において、被害者Aの供述は被告人の加担事実を直接証明するものではない。しかし、当該供述により「数人の犯人が押し入って強盗被害を受けた」という客観的事実が認められる。これにより、被告人が強盗の共謀および見張りを行ったとする自白の内容が架空の事実ではないことが裏付けられ、その真実性が保障されるといえる。したがって、当該被害供述は自白の補強証拠として十分である。
結論
補強証拠は自白の真実性を保障すれば足りるため、被害供述により客観的事実が裏付けられている本件では、自白のみによる有罪認定には当たらない。
実務上の射程
自白の真実性保障説(実質説)を確立した重要判例である。答案上は、共犯者の自白や被告人自身の自白について補強証拠が必要となる場面で、補強の程度を論じる際の規範として用いる。客観的な被害事実に係る証拠があれば、犯人との結びつき(犯人性)まで補強を要しないとする結論を導く際に必須となる。
事件番号: 昭和23(れ)259 / 裁判年月日: 昭和23年6月1日 / 結論: 棄却
一 被告人が第一審公判における自白を第二審で覆した場合裁判所は諸般の資料状況に照し第一審における自白の方が眞實に合するとの心證を得たときは第二審の供述を採らず第一審の方を採つても違法でない。 二 他に補強證據なくして被告人の自白(公判廷以外の)のみで斷罪することは法の許さない處であること所論の通りである。しかし相當の補…