一 本件賭博は假りに所論の縷述するような賭金の少額なこと等の事情があるとしても、骨牌を使用し偶然のゆえいに關し金錢の得喪を爭つたものであることは、判文上明らかなところであつて、單に一時の娯樂のためにしたもので罪となるべきものではないとはいえない。 二 賭博の常習者として二回までも處罰された者がさらに犯した賭博であるとしたら、それが單に最後の前科のときから三年餘の後の犯行であるというだけでの事由で、賭博を反覆累行する習癖のあらわれでないとは必ずしもいうことができない。
一 少額賭金による賭博罪の成立 二 最後の前科から三年經過後の犯行につき賭博の常習性認定の當否
刑法185條,刑法186條
判旨
賭金の少額等の事情があっても、偶然の勝敗により金銭を争う行為は「一時の娯楽に供する物」とはいえず、また前科等の事跡から博習の習癖が認められれば、前回の犯行から一定期間が経過していても常習賭博罪が成立する。
問題の所在(論点)
少額の金銭を賭ける行為が刑法185条但書の「一時の娯楽に供する物」に該当するか、および、前科から3年以上の経過がある場合に「常習性」が認められるか。
規範
刑法186条1項の「常習」とは、賭博を反復累行する習癖があることをいい、前科の回数、内容、直近の犯行からの期間、犯行の態様などを総合して判断される。また、同法185条但書の「一時の娯楽に供する物」とは、即時娯楽のために消費される物を指し、金銭は原則としてこれに含まれない。
重要事実
被告人は、骨牌(かるた)を使用し、偶然の勝敗に関して金銭の得喪を争う賭博を行った。被告人には、賭博の常習者として過去に2回処罰された前科があった。今回の犯行は、前回の前科から3年余りが経過した後に行われたものであり、弁護側は、賭金が少額であること、および前科からの期間経過を理由に常習性を否定し、かつ一時の娯楽にすぎないと主張した。
あてはめ
まず、骨牌を用いて金銭を争う行為は、賭金が少額であっても偶然の勝敗により財物を得喪させるものである以上、「一時の娯楽のためにしたもので罪とならない」場合には当たらないと解される。次に、常習性については、過去2回にわたり賭博常習者として処罰されている事実は重く、前科から3年余りが経過しているという一事をもって、賭博を反復累行する習癖(習癖のあらわれ)が消滅したとはいえない。したがって、本件犯行も当該習癖の発露と評価できる。
結論
被告人の行為は、刑法185条但書には該当せず、また常習性も認められるため、常習賭博罪(186条1項)が成立する。
実務上の射程
金銭を賭ける行為が原則として賭博罪を構成することを再確認しつつ、常習性の判断において前科が決定的な要素となること、および数年の期間経過があっても直ちに習癖が否定されないことを示した。答案上は、常習性の認定において「習癖」をキーワードに、過去の経歴と今回の犯行を連結させる際のロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)563 / 裁判年月日: 昭和23年8月11日 / 結論: 棄却
一 博奕(ばくち)という言葉が、博戯の俗語であることは、顯著の事實であるし「本件賭博行爲を爲した事跡に徴して」と説示しているところから見ても、原判決においては、所論の「賭錢博奕」の語を金錢を賭してする博戯即ち刑法第一八五條同第一八六條にいわゆる博戯の義に用いているものであることは明白である。されば原判決には所論のように…