賍物に關する罪の本質は、賍物を轉々して被害者の返還請求權の行使を困難もしくは不能ならしめる點にあるのであるから、いやしくも賍物たるの情を知りながら賍物の賣買を仲介周旋した事實があれば、既に被害者の返還請求權の行使を困難ならしめる行爲をしたといわなければならないから、其周旋にかかる賍物の賣買が成立しなくとも、賍物牙保罪の成立をさまたげるものではない。
周旋による賍物の賣買の不成立と賍物牙保罪の成立
刑法256條2項
判旨
盗品等周旋罪(刑法256条2項)の本質は被害者の返還請求権の行使を困難にする点にあり、売買が成立しなくとも、情を知って売却の周旋をした時点で罪が成立する。
問題の所在(論点)
刑法256条2項にいう「周旋」をしたといえるためには、周旋に係る契約が現実に成立すること(売買の成立等)を要するか。盗品等周旋罪の既遂時期が問題となる。
規範
盗品等に関する罪の本質は、盗品等を転々とさせて被害者の返還請求権の行使を困難または不能にする点にある。したがって、盗品等であることの情を知りながら、その売買を仲介周旋する行為があれば、それによって被害者の返還請求権の行使を困難にする行為がなされたといえるため、周旋に係る売買が成立しなくとも、盗品等周旋罪(贓物牙保罪)は成立する。
重要事実
被告人らは、第三者の依頼を受け、蒲団側178点、外衣類、手袋等が盗贓品であることの情を知りながら、別の者らに対し売却の周旋をした。しかし、当該周旋に係る売買は最終的に成立しなかった。弁護人は、売買が成立しなければ本罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人らは盗贓品であることの情を知りながら、売主と買主との間に介在して売買の仲介行為を行っている。本罪の本質は返還請求権の行使を困難にすることにあるが、このような仲介行為がなされた時点で、既に盗品等の所在が不明確になる蓋然性が高まり、返還請求権の行使を困難にする危険が生じている。したがって、契約の成否にかかわらず、周旋行為自体が認められる以上、本罪の構成要件を充足すると評価される。
結論
盗品等周旋罪は、売買が成立しなくとも、周旋行為が行われた時点で成立する。したがって、被告人らに本罪の成立を認めた原判決に違法はない。
実務上の射程
盗品等周旋罪の既遂時期について、媒介行為の着手をもって既遂とする「挙動犯」的構成を採った判例である。答案上は、本罪の保護法益(追求権説)から論証し、媒介・斡旋行為があれば結果の発生(契約成立)を待たずに既遂となる旨を記述する際に用いる。なお、本判決は旧法の「贓物牙保罪」に関するものだが、現行法の「周旋」にもそのまま妥当する。
事件番号: 昭和23(れ)1614 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等関与罪の成立において、被告人が当該物が盗品等であることの情を認識していれば足り、本犯の正体や具体的な犯罪の種類を認識している必要はない。 第1 事案の概要:被告人は自転車を売却する際、偽名を名乗り、第三者から依頼されたと嘘をついて売却を行った。第一審の公判調書において、被告人は当該自転車につ…
事件番号: 昭和23(れ)1373 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
一 賍物の賣買が所論のごとく被告人の名儀をもつてされたとしても他人の依頼に因り他人の利益のためにするものである以上論旨にいわゆる「賣買の周旋」というを妨げない。 二 賍物の賣却を爲した者が、自ら賣主として賍物を賣却したか、盜罪犯人の名儀若しくはその代理名儀で賣却したかは賍物牙保罪の成否に影響するところはない。