一 本件犯罪(傷害致死)の動機は犯罪構成事實ではないからいから證據によつてこれを認定した理由を説明する必要なきものである。 二 傷害致死罪における結果發生の日時場所は犯罪構成事實でないからこれを認めた理由を證據によつて説明する必要はない。 三 沒收については、その物が刑法第一九條の法定要件に該當すること及びその所有關係を證據に依つて認めた理由を判決において説明する必要はない。 四 論旨は證人申請を却下したことは裁判長の偏見豫斷によるものであると主張するのであるが證據の取捨判斷は原審の專權に屬するところであるから證人申請を却下したからとて豫斷をいだいたと即斷することは當を得ない。なお憲法第三七條第一項に所謂公平な裁判所の裁判というのは偏頗や不公平のおそれのない組織と構成とをもつ裁判所による裁判を意味するのであることは當裁判所判例の示す通りであり原裁判所が組織構成において偏頗のおそれがある裁判所であることは何等これを認むべき資料がないから論旨は理由がない。
一 傷害致死罪の動機認定の理由判示の要否 二 傷害致死罪における結果發生の日時場所の認定理由判示の要否 三 沒收の理由及び沒收物の所有についての認定證據の説明の要否 四 證人申請の却下と憲法第三七條第一項に所謂公平な「裁判所の裁判」
刑法205條,刑法19條,刑訴法360條1項,刑訴法344條1項,憲法37條1項
判旨
傷害致死罪における結果発生(被害者の死亡)の日時・場所や犯罪の動機は、厳格な証明を要する「犯罪構成事実」そのものではない。したがって、これらを認めるに際して証拠による理由説明が欠けていたとしても、直ちに判決に違法があるとはいえない。
問題の所在(論点)
犯罪の動機や、傷害致死罪における結果発生(被害者の死亡)の日時・場所は、判決書において証拠により認定理由を説明すべき「犯罪構成事実」に含まれるか。
規範
判決書において証拠によって認定し理由を説明すべき対象は「犯罪構成事実」に限られる。犯罪の動機や、傷害致死罪における結果(死亡)の発生した具体的な日時・場所は、犯罪構成事実そのものではないため、これらを認定した理由を証拠により詳細に説明する必要はない。
重要事実
被告人が傷害致死罪で起訴された事案。第一審判決は被害者の死亡の日時・場所を明示し、被告人も公判でこれを確認していたが、上告人は「動機の認定に証拠がない」ことや「死亡の日時・場所という結果発生の事実を認めた理由が証拠によって説明されていない」こと等を理由に、判決の違法を主張して上告した。
あてはめ
まず動機については、犯行当時の状況や供述から認定可能であり、かつ犯罪構成事実ではないため理由説明を要しない。次に結果発生の日時・場所についても、被告人が事実関係を認めている上、傷害致死罪の成立に直接必要な構成要件的事実(実行行為等)そのものではないから、同様に証拠による説明を欠いても違法ではない。さらに没収の対象物についても、刑法19条の適用が判示事実から明らかならば、詳細な証拠説明は不要である。
結論
犯罪の動機や傷害致死の結果発生の日時・場所は犯罪構成事実ではないため、証拠による理由説明を欠いても違法ではなく、上告は棄却される。
実務上の射程
実務上、判決書に記載すべき「罪となるべき事実」の範囲を画定する際の基準となる。構成要件要素に直接該当しない付随的事実(動機、結果の微細な日時場所等)については、証拠との対応関係の記載が簡略であっても許容されることを示唆しており、答案作成上は「理由不備」の主張を排斥する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5087 / 裁判年月日: 昭和30年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第一審判決を破棄して自判する際、殺意を否定して傷害致死罪を適用しながら「第一審判決の認めている罪となるべき事実に法律を適用する」と判示した場合でも、文脈上、事実を修正して適用した趣旨と解される限り、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:第一審は被告人に殺意を認め殺人罪で有罪とした。控…