憲法第三二條の趣旨は凡て國民は憲法又は法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける權利を有し裁判所以外の機關によつて裁判をされることはないことを保障したものであつて訴訟法で定める管轄權を有する具體的裁判所において裁判を受ける權利を保障したものではない。從つて假りに所論の如く本件公判請求書は昭和二二年五月二日に福知山區裁判所において受理したものではなくて同年同月五日京都地方裁判所福知山支部が受理したものであるとしても、その違法はただ管轄違の裁判所のなした第二審判決を原審が是認したという刑事訴訟法上の違背があるということに歸着するだけであつて、そのために原判決を目して憲法違反のものであるとはいい得ない。從つて原判決は憲法に違反することを主張する。論旨は再上告適法の理由とはならない。
管轄違の裁判と憲法第三二條
憲法32條
判旨
憲法32条の保障する「裁判を受ける権利」は、裁判所以外の機関によって裁判されないことを意味し、具体的裁判所の管轄権までも保障するものではない。
問題の所在(論点)
管轄違いの裁判所による裁判が、憲法32条の保障する「裁判を受ける権利」を侵害し、憲法違反となるか。
規範
憲法32条は、国民に対し、憲法または法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を保障したものであって、裁判所以外の機関によって裁判をされないことを保障した趣旨である。したがって、同条は訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利までを保障したものではない。
重要事実
本件において、公判請求書の受理日に関し、本来であれば大阪高等裁判所に管轄があるべき事案であったにもかかわらず、京都地方裁判所福知山支部がこれを受理し、京都地方裁判所合議体が第二審として判決を下した。上告人は、管轄権のない裁判所による裁判は憲法32条に違反すると主張した。
事件番号: 昭和22(れ)323 / 裁判年月日: 昭和23年6月23日 / 結論: 棄却
一 被告人がAから返還をうけた金百四十圓の金錢は性質上代替物であるから押收されていたとか又は封金で特別に保管されていたとかその他特定していることが明かでない限り没收することができない場合に該當するものとしてその價額を追徴することは毫も差支えないところである。 二 憲法第三六條は「公務員による拷問及殘虐な、刑罰は、絶對に…
あてはめ
憲法32条の趣旨は司法権の独占にある。本件において、被告人は司法機関である裁判所によって裁判を受けている。仮に訴訟法上の管轄規定に反し、本来の管轄裁判所とは異なる裁判所が第二審判決を行ったという事実があるとしても、それは刑事訴訟法上の違背という法律問題に帰着するにすぎない。裁判所以外の機関によって裁判が行われたわけではない以上、憲法32条が保障する核心的権利は侵害されていないといえる。
結論
管轄権を有する具体的裁判所で裁判を受ける権利までは憲法32条により保障されないため、本件の管轄違背は憲法違反にはあたらない。
実務上の射程
裁判所以外の機関(行政機関等)が終審として裁判を行うことは許されないが、司法裁判所間の管轄の誤りは、上告理由としての「憲法違反」には直接結びつかない。実務上は、訴訟法上の管轄違いとして争うべき問題であり、憲法問題としては構成できない。ただし、反対意見が指摘するように、極端な管轄無視が平等原則(14条)や適正手続(31条)に抵触する可能性は理論上残り得る点に留意が必要である。
事件番号: 昭和23(れ)680 / 裁判年月日: 昭和23年10月26日 / 結論: 棄却
刑訴應急措置法附則の規定によれば、刑事訴訟法の規定により上告することができるのは刑訴應急措置法の施行前に終結した辯論に基いて言い渡された判決に對してだけであるから、たとえ犯行が憲法の施行前であつても右の要件を缺いた本件については刑訴應急措置法の規定によらなければ上告することはできない。そして、同法第一三條第二項によれば…
事件番号: 昭和23(れ)1111 / 裁判年月日: 昭和24年3月26日 / 結論: 棄却
所論第二審におけるAに對する證人訊問は同人は舊刑訴法第二〇一條第一項第五號に該當する者であるのに、之に宣誓せしめて訊問したのは同條違反であり、延いて憲法第三八條第一項に違反するものであるとしても、第二審判決は同證人の證言は之を證據に採つてはいないのであるから、假令右條違反があるとしても舊刑訴法第四一一條の規定に依り判決…
事件番号: 昭和24(れ)34 / 裁判年月日: 昭和24年6月25日 / 結論: 棄却
公訴の時効中斷の事由として舊刑訴法第二八五條第一項に規定してある公判の處分というのは公判裁判所における當該事件に關する處分行爲を指すものであるが公判における裁判長の期日の指定並びにその變更は舊刑訴法第三二〇條第一項並びに同第三二二條の規定による裁判長の命令であるから公判裁判所における一の處分行爲として前記舊刑訴法第二八…
事件番号: 昭和22(れ)143 / 裁判年月日: 昭和22年12月15日 / 結論: 破棄差戻
司法警察官の聽取書の供述者を證人として訊問することを辯護人が申請しているにかかわらず、これを却下し、供述者を公判期日において訊問する機曾を被告人に興えないで、前記聴取書を證據として採つたことは、刑訴應急措置法第一二條に反するものである。