一 被告人がAから返還をうけた金百四十圓の金錢は性質上代替物であるから押收されていたとか又は封金で特別に保管されていたとかその他特定していることが明かでない限り没收することができない場合に該當するものとしてその價額を追徴することは毫も差支えないところである。 二 憲法第三六條は「公務員による拷問及殘虐な、刑罰は、絶對にこれを禁ずる」と規定しているが、ここにいわゆる「殘虐な刑罰」とは不必要な精神的肉體的苦痛を内容とする人道上殘酷と認められる刑罰を意味するのである。事實審の裁判官が、普通の刑を法律において許された範圍内でん量定した場合においてそれが被告人の側から観て過重の刑であるとしても、これももつて直ちに所論のごとく憲法にいわゆる「殘虐な刑罰」と呼ぶことはできない。
一 特定していない金錢の没收不能と追徴 二 憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」の意義
衆議院議員選舉法114條,刑法19條の2,憲法36條
判旨
憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。また、性質上の代替物である金銭は、特定されていることが明らかでない限り没収できず、その価額を追徴することは適法である。
問題の所在(論点)
1. 性質上の代替物である金銭について、特定がない場合に追徴をすることの是非。 2. 憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」の定義と、裁量権の範囲内での量刑がこれに該当するか。
規範
1. 憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする、人道上残酷と認められる刑罰を意味する。法定刑の範囲内で量定された刑が、被告人にとって過重であっても、直ちにこれに該当するものではない。 2. 金銭は性質上代替物であるため、押収や封金等により特定されている場合を除き、没収不能としてその価額を追徴することができる。
重要事実
事件番号: 昭和23(れ)1111 / 裁判年月日: 昭和24年3月26日 / 結論: 棄却
所論第二審におけるAに對する證人訊問は同人は舊刑訴法第二〇一條第一項第五號に該當する者であるのに、之に宣誓せしめて訊問したのは同條違反であり、延いて憲法第三八條第一項に違反するものであるとしても、第二審判決は同證人の證言は之を證據に採つてはいないのであるから、假令右條違反があるとしても舊刑訴法第四一一條の規定に依り判決…
被告人はAから140円の返還を受けた。原審は、この金銭が特定されていないことを理由に、没収に代えてその価額の追徴を命じ、また法律の範囲内で量刑を決定した。これに対し被告人側は、追徴の不当性および量刑が過重であり憲法36条の「残虐な刑罰」に該当すると主張して上告した。
あてはめ
1. 被告人が受け取った140円は性質上代替物であり、本件において押収されていたり封金で特別に保管されていたりする等の特定が認められない。したがって、現物の没収は不能であり、追徴を認めることは正当である。 2. 憲法36条の「残虐な刑罰」は人道上の観点から判断されるべきものである。本件の量刑は裁判官の自由裁量に属する事項であり、法律が許容する範囲内の刑であれば、たとえ被告人にとって重きに失するものであっても、不必要な精神的・肉体的苦痛を強いる人道上残酷な刑罰とはいえない。
結論
本件追徴は適法であり、また本件量刑は憲法36条に違反しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」の定義を示したリーディングケースであり、死刑制度の合憲性論議等でも引用される。答案上では、法定刑自体の残虐性や、刑の執行方法の非人道性が問題となる場面で、本判例の定義(不必要な苦痛・人道上の残酷性)を規範として用いる。
事件番号: 昭和23(れ)107 / 裁判年月日: 昭和23年6月2日 / 結論: 棄却
刑訴第六〇條第二項第四號には訴訟手續の公開を禁じたときは、その旨及び理由を公判調書に記載すべき旨を規定しているが公開した旨を公判調書に特に記載すべき旨を規定していないから公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り公判は公開して行われたものと認むるのが相當である。