暴行又は傷害の故意のないということから、ただちに傷害事實を全面的に否定することはできないのであるから、原判決が「被告人の加害行爲が暴行又は傷害の故意を以てなされたと認むべき證據なし」との一點を把えて、結局犯罪の證明なき場合に該當するものとして公訴事實中傷害の點に對し無罪の言渡をしたのは理由不備の違法がある。
暴行又は傷害の故意がない場合における過失傷害罪の責任の有無――刑訴法第四一〇條第一九號の「判決ノ理由ニ齟齬アルトキ」
刑法20條,刑法209條,刑訴法410條19號
判旨
恐喝行為の手段として傷害を負わせた場合、恐喝罪と傷害罪(結果的加重犯としての性質を含む)が成立し、両罪は刑法54条1項前段により観念的競合となる。
問題の所在(論点)
恐喝の手段として行われた加害行為により傷害の結果が生じた場合、傷害の故意が認められないことを理由に直ちに傷害罪の成立を否定できるか。また、恐喝罪と傷害罪の罪数関係はどうなるか。
規範
傷害行為が恐喝行為の手段として直ちになされた場合、暴行・傷害の故意の有無にかかわらず、傷害の結果が発生している以上は傷害罪の成否を検討すべきであり、恐喝罪と傷害罪は刑法54条1項前段の観念的競合として処断される。
重要事実
被告人は、短刀を用いて被害者を畏怖させて金員を交付させた(恐喝)。その際、同短刀で被害者の左側鼠蹊部を突き刺し、全治三週間の切刺傷を負わせた(傷害)。原審は、恐喝の手段は脅迫であって暴行ではなく、かつ被告人に暴行・傷害の故意を認める証拠がないとして、傷害罪について無罪を言い渡した。
事件番号: 昭和22(れ)683 / 裁判年月日: 昭和23年11月4日 / 結論: 棄却
被告人が一定の期間法定の除外事由なくして本件日本刀を所持していた事實が認定される以上、その日本刀の所有權が何人に屬していたとか、或はその間接所有者が何人であつたかというような事情は本件銃砲等所持禁止令違反罪の成立には何等の消長をも來たすものではない。
あてはめ
本件では、傷害行為は恐喝行為と別個に前後してなされたものではなく、恐喝の手段として直ちに行われている。このような場合、仮に暴行・傷害の故意が認められないとしても、結果として傷害が生じている以上、直ちに傷害事実を全面的に否定することはできない。原判決が故意の欠如のみを理由に無罪としたのは、結果的加重犯的な側面や事実関係の検討を怠った理由不備の違法がある。
結論
傷害の故意がないとしても直ちに無罪とはならず、恐喝罪と傷害罪の観念的競合が成立し得る。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
恐喝の手段として傷害を負わせた場合の罪数関係(観念的競合)を示す基本判例である。答案上は、恐喝の手段たる「脅迫」が同時に傷害罪の実行行為(暴行)を兼ねる場合、一段階重い評価として両罪を成立させ、観念的競合として処理する際の根拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)756 / 裁判年月日: 昭和23年11月13日 / 結論: 棄却
原審に於ては被告人からも、辯護人からも、被告人の行爲が正當防衞に出たものであるということは主張されていないのであるから原審がこの點についての判斷を示さなかつたのは當然である。
事件番号: 昭和25(れ)1003 / 裁判年月日: 昭和25年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】傷害罪(刑法204条)の成立には、必ずしも傷害の意思(生理的機能障害を生じさせる認識・認容)があることを要せず、暴行の意思をもって暴行を加え傷害の結果を生じさせた場合も含まれる。 第1 事案の概要:被告人は、被害者に対して暴行を加えたところ、被害者が傷害を負い、その結果として死亡するに至った(傷害…
事件番号: 昭和23(れ)1469 / 裁判年月日: 昭和24年7月13日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令附則大二項所定の所持許可の申請期間は同令第一條第一項第一乃至四號に該當する銃砲等について定められたものであつて、かかる銃砲等についても、右の許可申請をしないときは、右期間内の所持も不法であるとなすこと當裁判所の判例に示されている通りである(昭和二二年(れ)第一八一號、昭和二三年四月一七日第二小法廷判…
事件番号: 昭和25(れ)1159 / 裁判年月日: 昭和25年10月3日 / 結論: 棄却
所論中には、本件日本刀の所持の点につき被告人がさきに連合国占領軍の軍事裁判所において処罰ずみの趣旨の陳述があるが、仮りにそのような事実があつたとしても軍事裁判所は我が国の裁判ではないので本件に既判力を及ぼすものではないので問題とはならない。