数人が「ジタバタするな」とか「黙つておれ」とか申向けて脅迫し財物を強取しようと共謀した以上、その一人が「旅の者だ、俺は礼幌の者だ、人殺を知つているだろう」、「騒げば身が危いぞ」と申し向け、共謀のときに打ち合わせた脅迫文言と異つた文言を實際に使用したからとて、強盜共犯の成立を妨げるものではない。
共犯者の一人が現実に使用した脅迫文言があらかじめ打ち合わせたところと異なる場合と強盜共犯の成否
刑法60条,刑法236条1項
判旨
強盗の共謀が認められる場合、実行行為において実際に使用された脅迫文言が共謀時に打ち合わせた内容と多少異なっていたとしても、強盗罪の共同正犯の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
強盗の共謀において予定していた脅迫の文言と、実行行為で実際に行われた脅迫の文言が異なる場合に、なお強盗罪の共同正犯が成立するか。
規範
共謀共同正犯が成立するためには、特定の犯罪を行うことの合意(共謀)が必要であるが、実行行為の細部までが共謀の内容と厳密に一致することまでは要しない。実行行為において、共謀の範囲内といえる態様で構成要件的行為が行われたのであれば、共謀した犯罪の共同正犯が成立する。
重要事実
被告人A、B、C、Dの4名は、E方から衣類を盗むことを相談した際、被告人Cが「男はいないから、妻が目を覚ましたらジタバタするな、黙っていろと言え。相手は女だから大丈夫だ」と発言し、他の3名もこれに同意した。その後、実際の実行段階において、被告人Bは被害者Fに対し「旅の者だ、俺は札幌の者だ、人殺しを知っているだろう」「騒げば身が危ないぞ」と、当初の打ち合わせとは異なる文言を用いて脅迫を行った。
あてはめ
本件では、被告人らは被害者が目を覚ました場合に脅迫して財物を強取しようとする強盗罪を共謀したといえる。実行犯であるBが実際に用いた「人殺しを知っているだろう」「身が危ないぞ」という文言は、当初の「ジタバタするな」「黙っていろ」という打ち合わせ内容とは多少異なる。しかし、これらはいずれも被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫に該当し、強盗を行うという共謀の範囲内の行為と認められる。したがって、文言に多少の相違があっても共謀の性質を左右するものではない。
結論
強盗罪の共同正犯が成立する。実行行為における脅迫文言の細かな差異は、強盗罪の成立に影響しない。
実務上の射程
共謀と実行の「多少の不一致」が許容されることを示した事例である。答案上は、共謀の範囲内(因果性の及ぶ範囲)といえる程度の乖離であれば、特定の構成要件を充足する限り、共謀した罪の成立を認める論拠として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1205 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
一 被告人は相被告人と共謀して強取行爲をも分擔したものというべく、從つて、假りに所論のごとく被告人は相被告人の兇器所持並びに兇器使用の事實を知らなかつたとしても原判決が證據によらずして強盜共謀の事實を認定した違法ありといえない。 二 犯罪の日時は、法律上別段の定め(例えば日出前又は夜間においてというごとき)のない限り、…
事件番号: 昭和23(れ)1370 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
被告人が相被告人と共謀の上、強盜をした事實を認定している原判決において、二人共謀の事實と共犯者のどちらかが現實に脅迫の實行行爲をしたことが判分上明確である以上、共犯者のうちどちらかが現實に實行行爲をしたかを明示していなくても、被告人の「罪トナルヘキ事實」の判示として缺くるところはない。