一 原判決書には裁判官の表示並に署名捺印が存し該裁判官が公判に關與した裁判官であること原審公判調書により明白であるから原判決には裁判をした裁判官の署名捺印を缺く違法はなく、その慣例に基く裁判官の表示「判事」としたのは正當であつて原判決には所論の缺點は毫も存しない。 二 舊刑訴第六八條(刑訴規則第五五條參照)には「裁判書ニハ裁判ヲ爲シタル判事(裁判官)署名捺印(押印)スベシ云々」とのみあつて、裁判書に特に裁判官の官名をも記載すべきことを要求してはいないのである。されば裁判書に裁判官又は裁判長なる官職名をも記載するのは全く便宜に基く慣行たるに過ぎないものである。 三 裁判の審級制度について上告審を純然たる法律審すなわち法令違反を理由とするときに限り上告を爲すことを得るものとするか又は法令違反の外に量刑不當乃至事實誤認の上告理由をも認めて事實審理をも行うものとするかは立法を以て適當に決定すべき事項であつて憲法の命令又は禁止するところでないから刑訴應急措置法第一三條第二項の規定が憲法第三二條に違反するものでないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第五六號同二三年二月六日大法廷判決参照) 四 旧刑訴法第六八条(刑訴規則第五五条参照)には「裁判書ニハ裁判ヲ為シタル判事(裁判官)署名捺印(押印)スベシ言々」とのみあつて、裁判書に特に裁判官の官名をも記載すべきことを要求してはいないのである。されば判決書に裁判官又は裁判長なる官職名をも記載するのは全く便宜に基く慣行たるに過ぎないものである。
一 判決書における裁判官の表示を「判事」としたことの正否 二 舊刑訴法第六八條の法意と裁判官の官名記載の要否 三 刑訴應急措置法第一三條第二項と憲法第三二條 四 旧刑訴法第六八条の法意と裁判官の官名記載の要否
舊刑訴法68條,旧刑訴法68条,裁判所法5条2項,刑訴應急措置法13條2項,憲法32條
判旨
裁判書における裁判官の官職名の記載は法的義務ではなく便宜上の慣行にすぎず、署名押印があれば有効である。また、上告理由を法令違反に限定する刑事訴訟法応急措置法の規定は、裁判を受ける権利や法の下の平等に反しない。
問題の所在(論点)
裁判書に裁判官の官職名が記載されていないことは判決の無効事由となるか。また、上告理由を法律論に限定する立法は、裁判を受ける権利や平等原則を侵害し違憲といえるか。
規範
1. 裁判書の形式的要件:裁判書には裁判を行った裁判官の署名押印が必要であるが(旧刑事訴訟法68条)、官職名の記載を要求する明文規定はない。したがって、官職名の記載は便宜上の慣行にすぎない。 2. 審級制度と憲法:上告審を純然たる法律審とするか事後審的要素を認めるかは、立法政策の裁量に属し、憲法32条の保障する裁判を受ける権利に直結しない。 3. 法の下の平等:訴訟法は手続法であり、上告時の法律を何人にも平等に適用する限り、犯罪行為時の如何によって区別が生じても憲法14条には違反しない。
重要事実
被告人が詐欺罪等の事実で有罪判決を受けた事案において、被告人側は、①原判決が食糧緊急措置令ではなく刑法を適用した点、②判決書に裁判官の「判事」という表示はあるが詳細な官職名がない点、③上告理由を制限する刑事訴訟法応急措置法13条2項が憲法32条(裁判を受ける権利)および14条(平等原則)に違反する点を理由として上告を申し立てた。
あてはめ
1. 形式要件について:本件原判決書には裁判官の表示および署名押印があり、公判に関与した裁判官であることは調書から明白である。法律が要求するのは署名押印のみであるから、慣行に従い「判事」と表示したことに違法はない。 2. 憲法違反について:憲法32条は審級の具体的な内容を命令しておらず、法律審に限定する立法は適法である。また、手続法は犯罪時ではなく上告時を基準に適用されるのが当然であり、何人にも等しく適用されている以上、憲法14条の差別には当たらない。
結論
本件各規定および手続に違憲・違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判書の形式的瑕疵(署名押印の有無)が論点となる際の判断枠組みとして活用できる。また、上告理由の制限などの訴訟手続の合憲性について、立法裁量を広く認める判例として引用可能である。
事件番号: 昭和24(れ)519 / 裁判年月日: 昭和24年9月10日 / 結論: 棄却
一 舊刑事訴訟法第六九條第二項により判決書に記載すべき檢事の氏名は公判に關與した檢事の氏名であるから、審理又は判決言渡のいずれかの公判に關與した檢事の氏名であればよいのであつて、必ず審理に關與した檢事の氏名でなければならないと解すべき理由はない。 二 控訴審の公判期日に被告人を召喚する手続がとられていなくても、その期日…