本來、公判廷外における訊問に對する供述は、それが其のまま證據になるのではなく、其の調書が書證として證據になるのであり、其の内容は必ず被告人に讀み聞けられ、それに對して不滿があれば、被告人は更に審問することを請求することが出來るのであるから、被告人に對する不通知は、實質上からいえば、そう大した意義のあるものではないといい得るであろう。しかも、本件においては、前記の如く證人の申請人である辯護人には通知してあり、裁判長の事後の叮嚀な注意もあつて、被告人にも辯護人にも何等異議不服も無かつたものと見られるのであるから、かかる場合は、被告人自身に通知が無かつたとしても、それ丈けで判決破毀の理由とはならないものと解するを相當とする。
公判定外における證人訊問を被告人に通知しなかつた場合と上告理由
憲法37條2項,刑訴法326條,刑訴法323條2項,刑訴法323條3項
判旨
公判外の証人尋問について被告人自身に期日の通知がなされなかったとしても、弁護人に適法に通知され、かつ事後の公判で被告人に異議を申し立てる機会が十分に与えられていた場合には、直ちに判決の破棄理由とはならない。
問題の所在(論点)
公判外の証人尋問に際し、被告人本人に期日の通知を怠った手続上の瑕疵が、刑事訴訟法上の判決破棄事由(違法)に該当するか。
規範
公判外の証人尋問における被告人への通知不備が判決の破棄事由となるかは、被告人の防御権が実質的に侵害されたか否かにより判断すべきである。具体的には、①申請人である弁護人に対し適法な通知がなされていたか、②事後の公判手続において、当該証人尋問調書の内容が被告人に告知され、意見・弁解や再尋問の機会が実質的に保障されていたか、③被告人及び弁護人が手続上の不備に対し異議を申し立てていたか等の諸事情を総合考慮して決定する。
重要事実
事件番号: 昭和24(れ)425 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
記録を調べて見るに、所論書類はその編綴の個所から見て、原審第一回公判期日前に原裁判所え提出されたことが伺はれるし、又原審公判廷では右書類について證據調をしなかつたことは所論のとおりである。しかし所論の各書類は本件訴訟關係人から證據物又は證據書類として證據調を求める趣旨の下に提出されたものとは到底認めることができない。從…
第一審(原審)において、弁護人が申請した証人の公判外尋問が行われたが、被告人本人に対しては尋問期日の通知がなされていなかった。一方で、申請人である弁護人に対しては適法に通知されていた。その後の公判において、裁判長は当該証人尋問調書を被告人に読み聞かせ、意見や弁解の有無、再尋問請求の権利、利益証拠の提出が可能である旨を告げた。これに対し、被告人は特段の意見はない旨を回答し、弁護人も通知不備について異議を述べなかった。
あてはめ
本件では、被告人本人への通知はないものの、証人を申請した弁護人には適法な通知がなされている(①充足)。また、事後の公判で尋問調書の内容が被告人に読み聞かされ、不満があれば再尋問を請求できる旨の丁寧な注意がなされたが、被告人は意見や弁解はないと答えている(②充足)。さらに、被告人と弁護人のいずれからも、通知不備を含め手続に関する異議や審問の希望が一切なされていない(③充足)。以上から、被告人への不通知は実質的な防御権の侵害を伴うものではなく、重大な意義を有する瑕疵とはいえない。
結論
被告人に対する不通知があったとしても、本件の状況下では判決を破棄すべき違法があるとは認められない。
実務上の射程
刑事手続における不規則な進行がなされた場合でも、弁護人への通知や事後の代替的な手続(調書の朗読・異議申立機会の付与)によって実質的な防御権が担保されていれば、手続的権利の放棄(黙認)と評価され、訴訟手続の法令違反として破棄されることはないという「実質的防御権」の観点を示す射程を持つ。
事件番号: 昭和23(れ)1455 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年勅令第一號(公職に關する就職禁止退官退職等に關する勅令)第一六條第一項第一號に「調査表の重要な事項について……事實をかくした記載をした者」とあるのは、調査表に記載すべき重要な事項について、實在する事實を、その實在することを確認しながら、記載しなかつたものという意味である。この認識の外に特定の事實を他人に知…
事件番号: 昭和24(れ)226 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 破棄差戻
一 証人の陳述中証人が実験した事実、又は実験した事実によつて推測した事項の陳述ではなく、単に意見を表示したにすぎないとみられる部分は、証拠に採用することができない。 二 然るに原判決はその證據説明中にかような證人の意見に過ぎない陳述をも挿入しそれを「然し」という言葉で接續して、その前後の供述の順序を變えて、記録に現はれ…
事件番号: 昭和23(れ)2118 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 破棄自判
一 所論、昭和二三年當裁判所規則第九號(同年當裁判所規則第三五號を以つて一部改正以前の當初規定)の規定中、上告審のみに適用あるい第四條の規定を除けば、すべて從來裁判所又は裁判長の裁量に委せられた事項につきただその裁量の範圍に制限を加えた規定をなしたに過ぎないものであつて、如何なる見地からするも違憲などというべきものでは…
事件番号: 昭和24(れ)356 / 裁判年月日: 昭和24年3月24日 / 結論: 破棄差戻
原判決摘示の被告人の供述部分は、寧ろ被告人が假指定の事實を知らなかつた有力なる反證と見るのが相當である。しかるに原判決が被告人のその前後の供述部分を無視抹殺して全然反對の立證趣旨にこれを供したのは實驗則に反して事實を認定した違法があるものといわざるを得ない。