一 所論、昭和二三年當裁判所規則第九號(同年當裁判所規則第三五號を以つて一部改正以前の當初規定)の規定中、上告審のみに適用あるい第四條の規定を除けば、すべて從來裁判所又は裁判長の裁量に委せられた事項につきただその裁量の範圍に制限を加えた規定をなしたに過ぎないものであつて、如何なる見地からするも違憲などというべきものではない。從つて之を適用して裁判をした原判決に違法がありとは考えられない。 二 所論は、第四條の第一回口頭辯論期日の指定及び上告趣意書の提出期日に關する規定を違憲なりとして上告理由としているが、上告理由は原審判決の法令違反を理由とすべきものであるから、前記第四條の違憲を主張する論旨は、上告適法の理由として認めることはできない。 三 論旨の焦點は昭和二二年勅令第七七號により改正追加せられた右第一五條第一六條第一項第七號の規定が昭和二〇年勅令第五四二號(以下ポツダム勅令と稱す)所定の「連合國最高司令官ノ爲ス要求ニ係ル事項」たりや否やの一點に存する。當裁判所の職權調査の結果に依れば「昭和二二年二月末頃連合國最高司令部民政局から政府に對し、同年四月に行われる各種選舉に際し、昭和二二年一月四日附連合國總司令部發日本政府宛覺書該當者の選舉運動等を禁止する規定を作るよう、口頭上の要求があつたこと。政府は右に基ずき草案を作成し、民政局に提出したところ、選舉運動に關連ある政治活動のみでは狭いから、すべての政治活動を禁止するようにとの要求があつたこと。その結果追加各條項のとおり制定すべしとの指示があつたこと」の事實を確認することができる。(記録編綴、昭和二四年三月二八日附當裁判所宛法務總裁回答文書參照)然らば所論各追加規定はポツダム勅令所定の連合國最高司令官の要求に係る事項であることは寔に明瞭であるから、論旨は理由がない。 四 公職追放令第一五條に所謂政治上の活動とは、原則として政府地方公共團體政黨その他の政治團體又は公職に在る者の政治上の主義、綱領、施策又は活動の企畫決定に參與し、之を推進し支持し若しくは之に反對し、或は公職の候補者を推薦し支持し若しくは之に反對し、或は日本國と諸外國との關係に關し、論議すること等によつて、現實の政治に影響を與えると認められるような行動をすることを云うものと解するを相當とすることは、當裁判所の他の案件において、尚詳細に亘つて之を判示するところである。(昭和二三年(れ)第一八六二號、昭和二四年六月一三日大法廷判決) 五 衆議院議員選挙に際し、特定の政党に属する議員候補者に対しその選挙運動資金を提供する意思ある甲の意向を候補者に伝え同候補者と甲との間を斡旋し、甲をして候補者に右資金を交付するに至らしめた行為は、昭和二二年勅令第一号第一五条にいわゆる「政治上の活動」にあたる。 六 議院における證人の宣誓及び證言等に關する法律(以下議院證人法と稱する)違反の罪については、同法第八條所定の、各議院又は各委員會若しくは兩議院合同審査會の告發を俟つて、公訴提起の條件としたものと解するを相當とすることは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一九五一號同二四年六月一日大法廷判決)
一 昭和二三年最高裁判所規則第九號の合憲性 二 昭和二三年最高裁判所規則第九號第四條に對する違憲の主張と上告の適否 三 昭和二二年勅令第七七號により改正追加された勅令第一號第一五條第一六條第一項第七號の規定が昭和二〇年勅令第五四二號所定の「連合國最高司令官ノ爲ス要求ニ係ル事項」に該當することの有無 四 昭和二二勅令第一號第一五條にいわゆる「政治上の活動」の意義 五 議員候補者に対する選挙運動資金交付の斡旋と昭和二二年勅令第一号第一五條にいわゆる「政治上の活動」 六 議院における證人の宣誓及び證言等に關する法律第八條の告發を缺く公訴の適否
憲法31條,昭和23年最高裁判所規則9號,昭和23年最高裁判所規則9號4條,舊刑訴法409條,昭和22年勅令1號,昭和22年勅令77號15條,昭和22年勅令16條1項7號,昭和22年勅令1號15條,昭和20年勅令542號,昭和22年法律225號
判旨
議院証人法違反の罪については、同法8条所定の議院、委員会または両議院合同審査会による告発が公訴提起の有効要件であり、告発を欠く公訴提起は不適法として棄却されるべきである。
事件番号: 昭和24(れ)226 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 破棄差戻
一 証人の陳述中証人が実験した事実、又は実験した事実によつて推測した事項の陳述ではなく、単に意見を表示したにすぎないとみられる部分は、証拠に採用することができない。 二 然るに原判決はその證據説明中にかような證人の意見に過ぎない陳述をも挿入しそれを「然し」という言葉で接續して、その前後の供述の順序を變えて、記録に現はれ…
問題の所在(論点)
議院証人法8条に基づく議院等の告発が、同法違反の罪における公訴提起の有効要件(訴訟条件)となるか。また、告発を欠く公訴提起がなされた場合の裁判所の措置が問題となる。
規範
議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(議院証人法)違反の罪における公訴提起の有効要件については、同法8条所定の各議院、各委員会、または両議院合同審査会による「告発」を待って、初めて公訴提起が可能となると解するのが相当である。すなわち、同法における告発は、適法な公訴提起のための訴訟条件(親告罪における告訴に準ずるもの)を構成する。
重要事実
被告人らは、衆議院不当財産取引調査特別委員会において偽証したとして、議院証人法違反の罪で起訴された。しかし、当該事件の公訴提起に際し、偽証の舞台となった衆議院の委員会または衆議院自体のいずれからも、同法8条に基づく正式な告発はなされていなかった。第一審および控訴審は実体的審理を行い有罪としたが、弁護人は告発を欠く公訴提起は不適法であるとして上告した。
あてはめ
本件における証言が行われた衆議院不当財産取引調査特別委員会または衆議院のいずれからも、議院証人法8条に定める告発が行われていない。同条が告発を規定している趣旨は、議院の自律的運営を尊重しつつ、偽証等の処罰を議院側の判断に委ねる点にある。本件では、訴訟条件である告発が欠けている以上、実体的な審理に入る前提を欠いており、公訴提起自体が不適法であるといえる。したがって、被告人らを有罪とした原判決は、訴訟条件の存否を誤認した違法がある。
結論
被告人らに対する議院証人法違反に関する公訴は、告発を欠き不適法である。よって、原判決を破棄し、旧刑事訴訟法に基づき本件公訴を棄却すべきである。
実務上の射程
司法試験において、公訴提起の有効要件(訴訟条件)が論点となる際、特に特別法において特定の国家機関による告発が必要とされている場合のリーディングケースとして活用できる。刑事訴訟法338条4号の「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」の具体例として論じる際に有用である。
事件番号: 昭和23(れ)1951 / 裁判年月日: 昭和24年6月1日 / 結論: その他
一 昭和二二年政令第三二八號には、「國會議員たる構成員を有する政黨の幹事長その他これに準ずる主幹者は、昭和二二年中における當該政黨に對する有力な財政的援助者(中略)の住所及び氏名並びにその援助の金額を、昭和二三年一月一五日までに、當該政黨の主たる事務所の所在地の都道府縣知事に届け出なければならない。前項の規定による届け…
事件番号: 昭和24(れ)129 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二二年法律第二二五號議院における證人の宣誓及び證言等に關する法律違反の罪は、同法第八條所定の各議院若しくは委員會又は兩議院の合同審査會の告發をもつて控訴提起の條件と爲すべきものであることは、既に當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一九五一號昭和二四年六月一日大法廷判決) 二 有毒飲食物等取締令第…
事件番号: 昭和23(れ)1455 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年勅令第一號(公職に關する就職禁止退官退職等に關する勅令)第一六條第一項第一號に「調査表の重要な事項について……事實をかくした記載をした者」とあるのは、調査表に記載すべき重要な事項について、實在する事實を、その實在することを確認しながら、記載しなかつたものという意味である。この認識の外に特定の事實を他人に知…
事件番号: 昭和23(れ)1054 / 裁判年月日: 昭和23年9月22日 / 結論: 棄却
本來、公判廷外における訊問に對する供述は、それが其のまま證據になるのではなく、其の調書が書證として證據になるのであり、其の内容は必ず被告人に讀み聞けられ、それに對して不滿があれば、被告人は更に審問することを請求することが出來るのであるから、被告人に對する不通知は、實質上からいえば、そう大した意義のあるものではないといい…