一 昭和二二年政令第三二八號には、「國會議員たる構成員を有する政黨の幹事長その他これに準ずる主幹者は、昭和二二年中における當該政黨に對する有力な財政的援助者(中略)の住所及び氏名並びにその援助の金額を、昭和二三年一月一五日までに、當該政黨の主たる事務所の所在地の都道府縣知事に届け出なければならない。前項の規定による届け出をせず、又は虚僞の届け出をした者は、これを十年以下の懲役亦は禁錮に處する云々」と規定して、昭和二一年勅令第一〇一號(政黨、協會其ノ他團體ノ結成ノ禁止等ニ關スル件)第五條第一項の規定に該當する團體中特に國會議員たる構成員を有する政黨に限り昭和二二年中における當該政黨に對する同條第二項第五號の事項につき特別の届け出義務あることを定めている。從つて、同政令の届出義務は財政的援助が當該政黨に對する場合、換言すれば、その財政的援助の使用若しくは収益又は處分等を爲す權利が當該政黨に歸屬する場合に限り存在するものであつて、その構成員個人のみに歸屬するに過ぎない場合を包含しないこと同勅令就中同第五條が團體の結成を禁止しその内容を公開する立法趣旨であること並びに右政令の規定の明文が當該政黨に對する」とあるに照し極めて明瞭である。 二 既に被告人の主觀的認識にして黨に對する寄附金に非ずして個人に對する献金なりとする以上、假りに寄附者側の意團が黨に對するものであつたとしても、本件政令違反の不成立を妨ぐるものでない。 三 舊刑訴法第四三四條第二項に基き職權を以て調査するに、昭和二二年法律大二二五號議院における證人の宣誓及び證言等に關する法律は、その律法の經過に照し、各議院の國勢に關する調査の必要上規定せられた議院内部の手續に關するものである。そして議院における僞證罪等の告發について特に同法第八條本文及び但書のごとき特別の規定を設けた趣旨に徴すれば議院内部の事は、議員の自治問題として取扱い同罪については同條所定の告發を起訴條件としたものと解するを相當とする。然るに本件僞證罪については衆議院又は判示委員會の告發がないこと明らかであるから、同罪に對する公訴は不適法といわねばならぬ。從つて、本件僞證罪に対する公訴を受理し、これにつき實體的審理を行い被告人を無罪とした原判決は違法であるというべく、この部分に對する本件上告は、結局その理由あるに歸し、原判決は破毀を免れない。
一 昭和二二年政令第三二八號、及び昭和二一年勅令第一〇一號(政黨、協會其ノ他團體ノ結成ノ禁止等ニ關スル件)第五條第一項の届出義務の意義 二 個人に對する献金であるとする被告人の主觀的認識に對し寄附者側の意團が黨に對するものである場合の政令違反の成否 三 議院における證人の宣誓及び證言に關する法律第八條の告發を缺く公訴の適否
昭和21年勅令101號,昭和22年政令328號,舊刑訴法364條5號,舊刑訴法410條6號,昭和22年法律225號「議院における證人の宣誓及び證言時に關する」法律8條
判旨
政党に対する財政的援助の届出義務は、援助の使用・処分権が政党に帰属する場合に限られ、また、議院証言法違反の罪は議院による告発を起訴条件とする。
問題の所在(論点)
1. 政党の幹部個人に交付された資金が、政令上の「政党に対する財政的援助」に該当するか。また、その認識が必要か。 2. 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(議院証言法)違反の罪について、議院の告発は起訴条件となるか。
事件番号: 昭和23(れ)2118 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 破棄自判
一 所論、昭和二三年當裁判所規則第九號(同年當裁判所規則第三五號を以つて一部改正以前の當初規定)の規定中、上告審のみに適用あるい第四條の規定を除けば、すべて從來裁判所又は裁判長の裁量に委せられた事項につきただその裁量の範圍に制限を加えた規定をなしたに過ぎないものであつて、如何なる見地からするも違憲などというべきものでは…
規範
1. 政治資金の届出義務(昭和22年政令328号)は、財政的援助が当該政党に帰属する場合にのみ生じ、構成員個人に帰属する場合には及ばない。また、同義務違反の成否には、行為者が「財政的援助が政党に対するものであること」を主観的に認識していることを要する。 2. 議院証言法違反(偽証罪等)の公訴提起には、同法8条に基づく議院又は委員会の告発を要し、これは訴訟条件(起訴条件)である。
重要事実
日本社会党の書記長であった被告人が、業者側から50万円を受領した際、これを政党に対する寄附として届け出ず、また議院の委員会において「個人に対する献金である」旨の証言を行った。原審は、業者側が社会党左派を除いた右派指導者たる被告人個人に処分を一任する趣旨で供与したと認定し、被告人も個人への寄附と認識していたとして、政令違反および偽証罪について無罪とした。検察官がこれに対し上告した。
あてはめ
1. 政令の規定及び立法趣旨に照らせば、届出義務は政党そのものに権利が帰属する場合に限定される。本件では、原審が自由な証拠評価に基づき、資金が被告人個人の処分に一任されたものと認定しており、被告人もそのように認識していた以上、政令違反の故意は認められない。 2. 議院証言法は議院内部の手続に関するものであり、同法8条が告発に関する特別の規定を置いた趣旨は、議院内部の事項を議院の自治に委ねる点にある。本件では衆議院又は委員会による告発が存在しないため、公訴は不適法である。
結論
1. 政令違反については、被告人に政党への寄附であるとの認識がないため、無罪とした原判決は正当であり上告棄却。 2. 偽証罪については、告発を欠き公訴不適法であるため、実体的審理を行った原判決を破棄し、公訴を棄却する。
実務上の射程
実質的意義の刑事手続において、特別法が定める告発の要否(起訴条件)を判断する際の重要判例。また、政治資金規正法等の前身となる規定の解釈において、資金の帰属先(政党か個人か)の区別と故意の帰趨を示しており、規正法違反の事案における規範定立に活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)226 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 破棄差戻
一 証人の陳述中証人が実験した事実、又は実験した事実によつて推測した事項の陳述ではなく、単に意見を表示したにすぎないとみられる部分は、証拠に採用することができない。 二 然るに原判決はその證據説明中にかような證人の意見に過ぎない陳述をも挿入しそれを「然し」という言葉で接續して、その前後の供述の順序を變えて、記録に現はれ…
事件番号: 昭和24(れ)129 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二二年法律第二二五號議院における證人の宣誓及び證言等に關する法律違反の罪は、同法第八條所定の各議院若しくは委員會又は兩議院の合同審査會の告發をもつて控訴提起の條件と爲すべきものであることは、既に當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一九五一號昭和二四年六月一日大法廷判決) 二 有毒飲食物等取締令第…
事件番号: 昭和28(あ)1613 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
一 被疑者の供述調書に供述拒否権を告知した旨の記載がないからといつて、直ちにこの告知がなかつたとはいえない。 二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書は刑訴第一九八条の適用を受け、刑訴規則第三九条の適用は受けない。 三 法律条証拠能力のある書面については、これを証拠とすることに同意するかどうかを確める必要はない。
事件番号: 昭和24(れ)2542 / 裁判年月日: 昭和25年3月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年政令第一六護號にいわゆる「收受」とは同令第一條所定の財産につき所持即ち實力的支配關係(昭和二三年(れ)第九五六號同二四年五月一八日最高裁判所大法廷判決參照)を承繼的に取得する意味に解すべきである。