刑訴法第四〇三條に「原判決の刑より重き刑を言渡すことを得ず」と規定した趣旨は、判決主文の刑すなわち判決の結果を原判決の結果に比し被告人の不利益に變更することを禁ずるにある。それ故、判決主文において全體として被告人に不利益な結果を生ずべき言渡をしない限り、單に原判決と異り被告人の不利益となるべき犯罪事實の認定をしても同條に違反するということはできない。
被告人に不利益な犯罪事實の認定と刑訴第四〇三條
刑訴法403條
判旨
不利益変更禁止の原則(刑事訴訟法402条。旧法403条)は、判決主文の刑を原判決より重くすることを禁じるものであり、判決主文において被告人に不利益な結果を生じない限り、事実認定が不利益に変更されても同条に違反しない。
問題の所在(論点)
被告人のみが控訴した事件等において、判決主文の刑が原判決より軽くなっている場合に、犯罪事実をより重い罪名(単純賭博から常習賭博)に変更して認定することが、刑事訴訟法402条(旧403条)の不利益変更禁止の原則に抵触するか。
規範
刑事訴訟法における不利益変更禁止の規定(現行402条)の趣旨は、判決主文の刑、すなわち判決の結果を原判決の結果に比して被告人の不利益に変更することを禁ずる点にある。したがって、判決主文において全体として被告人に不利益な結果を生ずべき言渡しをしない限り、単に原判決と異なり被告人の不利益となるべき犯罪事実の認定をしても、同条に違反するものではない。
重要事実
被告人が賭博罪に問われた事案において、第一審判決は被告人の行為を「単純な賭博」と認定したが、控訴審判決はこれを「常習賭博」と認定した。もっとも、控訴審が言い渡した判決主文の刑(量刑)は、第一審の刑に比して軽減されていた。これに対し弁護人は、事実認定が不利益に変更されたことは不利益変更禁止の原則に反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)1524 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、弁護人が主張する事由は単なる事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しないと判断した。また、職権による破棄を定めた同法411条を適用すべき事由も認められないとして、上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人(被告人)側が、原判決(第2審)の認定事実について不服を申し立て…
あてはめ
本件において、控訴審は第一審が認定した単純賭博の事実を常習賭博へと変更しており、事実認定の点では被告人に不利益な変更がなされているといえる。しかし、不利益変更禁止の原則が対象とするのは「判決の結果たる主文の刑」である。本件の控訴審判決による主文の刑は、第一審の刑よりも軽減されていることが明白であり、判決の結果として被告人に不利益な変更は生じていないと解される。
結論
判決主文の刑が軽減されている以上、事実認定が重く変更されても不利益変更禁止の原則には違反しない。
実務上の射程
不利益変更の有無は「判決の主文」を基準に判断し、理由中の事実認定や罪名の変更自体は、最終的な刑が重くならない限り許容されることを示した。答案上は、罪名が重くなりつつ量刑が維持・軽減された場合の適法性を基礎づける際に活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)745 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示する該其連續した行爲の始期終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪であつて被害者又は賍額に異同があるときは被害者中ある者の氏名を表示する外他は員數を掲げ賍額の合計…