一 第一審公判廷における被告人の自白は、刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」に含まれない。 二 被告人は昭和二一年三月一六日から同一二年二六日(第一審の判決宣告の日)まで勾留されていたのであるが、本件事案の性質その他諸般の事情にかんがみて、該勾留をもつて、不當に長い拘禁とすることはできない。 三 豫審訊問調書を公判廷に於て聞讀かせ、被告人が之を自認した事實を公判調書に記載した場合には、右公判調書の記載自體が、右豫審訊問調書記載の事實を證明する證據として形式的證據力を具有するものである。 四 豫審中死亡した共同被告人に對する司法警察官の聽取書を原審が證據として採用するに當り、同人死亡の事實を公判廷に於て被告人に告げなかつたとしても、原審は刑訴應急措置法第一二條第一項但書の趣旨に從つて適當の考慮をした上で右の聽取書を證據としたものと解するのが相當である。
一 第一審公判廷における被告人の自白と刑訴應急措置法第一〇條第三項の「本人の自白」 二 刑訴應急措置法第一〇條第二項に所謂不當に長い拘禁の程度 三 豫審訊問調書を引用した公判調書の形式的證據力 四 刑訴應急措置法第一二條の供述者死亡の場合、死亡の事實を公判廷に於て告げることの要否
刑訴應急措置法10條3項,刑訴應急措置法10條2項,刑訴應急措置法12條1項但書,憲法38條3項,憲法38條2項,刑訴法60條8號,刑訴法60條9號,刑訴法336條,刑訴法343條1項1號
判旨
憲法38条3項(旧刑事訴訟法応急措置法10条3項)にいう「自白」には、公判廷における自白は含まれないため、被告人が公判廷で共謀の事実を認めた場合には、他に補強証拠がなくても当該自白のみを証拠として有罪と認定することができる。
問題の所在(論点)
公判廷における被告人の自白が「自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合」(憲法38条3項等)の「自白」に含まれるか。すなわち、公判廷の自白のみで犯罪事実を認定できるかが問題となる。
規範
日本国憲法38条3項及び旧刑事訴訟法応急措置法10条3項(現行刑訴法319条2項)が定める「自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合」の「自白」には、公判廷における自白を包含しない。したがって、公判廷における自白は、補強証拠を要せず、それのみで犯罪事実を認定するに足りる独立の証拠能力を有する。
重要事実
被告人Aらは、他人の家で金員を喝取しようとして共謀し、「粉にしてしまえ」等と怒鳴り散らして恐喝行為に及んだとして起訴された。第一審の公判廷において、被告人Aは共謀の事実を認める供述(自白)を行った。原審(控訴審)は、この公判廷における自白を唯一の資料として共謀の事実を認定した。これに対し被告人側は、本人による不利益な唯一の証拠が自白である場合に当たり、補強証拠がないため有罪認定は違憲・違法であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判例の趣旨に照らせば、憲法及び応急措置法が自白のみによる処罰を禁じたのは、強要や拷問による不当な自白から被告人を保護し、誤判を防止するためである。しかし、裁判官の前で公開かつ任意に行われる公判廷の自白は、その性質上、虚偽が介入する危険性が低く、手続的保障も十分になされている。本件において、被告人Aが第一審の公判期日で行った供述はまさに公判廷における自白であり、これを唯一の資料として共謀を認定しても、法が定める自白の補強法則には抵触しない。
結論
公判廷における自白は憲法38条3項等の「自白」に含まれないため、これのみを証拠として有罪を認定した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の補強法則(刑訴法319条2項)の解釈に関する重要判例である。現行法下でも実務上、公判廷の自白は補強証拠を要しないものと扱われるが、司法試験答案上は「公判廷外の自白」と「公判廷の自白」を峻別する際に本判例の論理を用いる。特に共謀共同正犯の成否などで、公判廷での自白以外に有力な証拠がない事案での事実認定の根拠として位置づけられる。
事件番号: 昭和23(れ)286 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項いわゆる「本人の自白」には、公判廷における被告人の自白を含まない。
事件番号: 昭和27(あ)4243 / 裁判年月日: 昭和29年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の供述や証人の証言が証拠として存在する場合、被告人本人の自白のみによって犯罪事実を認定したことにはならず、憲法38条3項(自白の補強証拠)に違反しない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cらは犯罪事実を争い上告した。特に被告人Aの弁護人は、第一審が本人の自白のみによって犯罪事実を認定した…
事件番号: 昭和22(れ)153 / 裁判年月日: 昭和23年6月9日 / 結論: 棄却
一 原判決は、被告人の自白のみによつて判示事實を認定したものではなくて、被告人の自白の外に、Aの提出した(強盗)盗難被害届と匕首の存在とを總合して判示事實を認定したものであることは記録上明白であり、右證據によつて優に判示事實を認定するに足るものである。所論の如く被告人がB、C等と共謀したという事實に對する證據は被告人の…