三審制を採用する裁判制度において上告審をもつて純然たる法律審とするか又は事實審理の權限をも上告審に與えるかは立法政策上の問題ではあるが、憲法上の適否の問題ではあり得ない。故に舊憲法時代に於て、量刑不當をもつて上告の理由となすことを許しておつたに拘わらず、刑訴應急措置法第一三條第二項が量刑不當を上告の理由となすことが出來ないと定めても、毫も國民の基本的人權を侵害することにはならない。從つて國民の基本的人權を侵害することを理由として右規定を憲法違反なりとすることは出來ない。
刑訴應急措置法第一三條第二項の合憲性
刑訴應急措置法13條2項
判旨
刑法66条の酌量減軽は裁判所の職権裁量に属し、また上告理由を法令違反に限定し量刑不当を排除する立法政策は、基本的人権を侵害せず憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 裁判所が刑法66条の酌量減軽を適用しないことが、直ちに法令違反となるか。 2. 刑事手続において量刑不当を上告理由から排除する立法は、基本的人権を侵害し憲法に違反するか。
規範
1. 刑法66条に基づく酌量減軽は、裁判所が個別の事案ごとに犯罪の情状を審究し、その職権裁量によって許否を決定すべき事項である。 2. 上告審を純然たる法律審(法令違反を理由とする場合に限定)とするか、量刑不当や事実誤認を理由とする上告を認めるかは、諸般の事情を勘案して決定される立法政策の問題であり、憲法上に制限規定がない限り、立法府の裁量に委ねられる。
重要事実
被告人は強盗罪に問われ、原審で懲役5年の実刑判決を受けた。弁護人は、被告人が20歳の青年であり、前科もなく一時的な出来心による犯行であること等の諸事情に照らせば、刑法66条の酌量減軽を適用しないのは不当であると主張した。また、刑事訴訟法応急措置法が量刑不当を上告理由から除外したことは、基本的人権を保障する憲法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 酌量減軽の適否について、原審は被告人の年齢や諸般の情状を斟酌した上で適用しない判断を下しており、裁判官の主観的恣意や懈怠による不適用とは認められない。したがって、職権裁量の範囲内であり、違法はない。 2. 上告理由の範囲設定は、三審制の設計にかかわる立法政策の問題である。日本国憲法施行に伴う応急措置法により量刑不当が上告理由から除外されたとしても、それは憲法が禁ずる人権侵害には当たらず、立法権の適正な行使といえる。
結論
1. 酌量減軽は裁判所の自由裁量に属し、原判決に違法はない。 2. 量刑不当を上告理由から排除する規定は合憲である。以上より、本件上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所の広範な量刑裁量を認める際のリファレンスとなる。特に、現行刑事訴訟法405条等における上告理由の限定が憲法に反しないとする理論的根拠(立法政策論)として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2353 / 裁判年月日: 昭和26年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が単なる量刑不当の主張に帰する場合には、刑事訴訟法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を理由として上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書では憲法違反が形式的に主張されていたが、その具体的な内容は原判決の量刑が…