上告審において原審の事實認定の可否及び刑の量定の當否を判断するには自ら事實審査をしなければならない。盖刑の軽重は犯況、情状等に付き詳細の審査をしなければ之れを定めることが出來ないものだからである。故に原審の事實認定乃至刑の量定に對する批難を上告の理由として認めるか否かは上告審においても事實審査をすることにするかどうかの問題となり、結局審級制の問題に帰着する。刑訴應急措置法第一三條第二項が刑訴法第四一二條乃至第四一四條の規定を適用しない旨を定めたのは畢竟審級制度の問題として實體上の事實審査は第二審を以て打切り上告審においてはこれをしないことにする趣旨に出たものである。而して憲法は審級制度を如何にすべきかに付ては第八一條以外何等規定する處がないから此の點以外の審級制度は立法を以て適宜に之れを定むべきものである。從つて刑訴應急措置法第一三條第二項が前記の如く事實審査を第二審限りとし刑事訴訟法第四一二條乃至第四一四條の規定を適用しないことにしたからと云つてこれを憲法違反なりとすることは出來ない。故に右規定が違憲であることを主張しこれを前提として原審の刑の量定を攻撃せんとする論旨は上告の理由とならない。
刑訴應急措置法第一三條第二項の合憲性
刑訴應急措置法13條2項
判旨
憲法は審級制度をいかにすべきかについて特段の規定を置いておらず、立法府が適宜定めるべき事項である。したがって、事実審査を第二審限りとし、上告審での量刑不当等を理由とする上告を制限する法律は合憲である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法(応急措置法)において、事実誤認や量刑不当を理由とする上告を制限することが、憲法が予定する審級制度に反し違憲といえるか。
規範
憲法第81条が、最高裁判所を一切の法律等が憲法に適合するか否かを決定する権限を有する「終審裁判所」と定めている以外、審級制度の具体的な内容は憲法に規定されていない。したがって、どのような場合に上告を認めるかといった審級制度の構成は、立法政策に委ねられた事項であり、法律をもって適宜に定めることができる。
重要事実
被告人は、他の共犯者の指示により電球函を運搬した行為につき、原審で懲役4年の判決を受けた。被告人は、事実誤認や量刑不当を理由に上告を申し立てたが、「刑事訴訟法の応急的措置に関する法律」13条2項が、当時の刑事訴訟法における事実誤認・量刑不当を理由とする上告規定(旧412条〜414条)を適用しないと定めていた。弁護人は、このような上告の制限は重大な事実誤認や量刑不当を救済できず、憲法に違反すると主張した。
あてはめ
上告審において量刑の当否を判断するには犯況や情状等の詳細な事実審査が不可欠である。応急措置法が旧刑事訴訟法の規定を適用外としたのは、実体上の事実審査を第二審をもって打ち切り、上告審ではこれを行わないという趣旨である。憲法は、最高裁判所が「終審裁判所」であること以外に審級制度の具体的なあり方を規定していないため、事実審査を第二審限りとする制度設計も立法府の裁量範囲内といえる。したがって、当該制限規定は憲法に違反しない。
結論
応急措置法による上告の制限は憲法に違反しない。したがって、原審の事実認定や量刑を攻撃する主張は適法な上告理由とならない。
実務上の射程
司法審査の対象となる「審級制度」について、憲法の明文規定(81条)以外の部分は広範な立法裁量を認める重要判例である。裁判を受ける権利(32条)との関係でも、三審制そのものが当然に保障されるわけではないことを示す法理として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)231 / 裁判年月日: 昭和26年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として上告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):量刑が不当であるという主張が、上告の適法な理由となるか。 第3 規範:刑事訴訟法応急…
事件番号: 昭和26(れ)195 / 裁判年月日: 昭和26年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑訴法下の量刑不当の主張は、刑訴応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件について判決を受けた後、弁護人が量刑が不当に重いことを不服として上告を申し立てた事案である。判決文には被告人の具体的な犯罪事実や第一審・第二審の刑の詳細は記載されていな…
事件番号: 平成23(あ)13 / 裁判年月日: 平成24年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判員制度の憲法適合性 第1 事案の概要:被告人は、建造物侵入、強盗致傷、強盗の罪により起訴された。本件は裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(裁判員法)に基づき、裁判員が参加する公判手続によって審理が行われた。これに対し弁護人は、裁判員制度自体が憲法に違反するものであるとして、上告を申し立てた。…