一 原審の判決後に、刑の執行猶豫の條件に關する規定が改正された場合、前審の判決は法令に違反する場合と同樣な結果を生じないので、上告審はこれを破毀して自判することができず、從つて自ら刑を言渡し得ず、從つて刑の執行猶豫の條件に關する改正規定を適用する餘地はない。(裁判官齋藤悠輔の補足意見がある) 二 共謀者は犯行に加擔せざるもの責を免れないものであるから共謀者の犯罪行爲については各自の分擔行爲を一々判示するの要なきものである。 三 刑の執行猶豫の條件に關する規定の變更は、特定の犯罪を處罰する刑の種類又は量を變更するものではないから、刑法第六條の刑の變更に當らない。 四 刑の執行猶豫の條件に關する規定が改正された場合に新舊いずれの規定を適用すべきかは、刑法第六條にょつて決まるものではなく、改正規定の立法趣旨にょつて判斷しなければならない問題となる。そして刑法の一部を改正する法律(昭和二二年法律第一二四號)附則第四項の規定の反面解釋によると、刑法第二五條の改正規定は同法施行前の行爲についても適用される趣旨が窺われるので事實審が判決で刑の言渡をする場合に刑の執行猶豫をも同時に言渡すか否かの判斷をする條件については新規定によるべきこと當然である。
一 第二審判決後刑の執行猶豫の條件に關する規定が改正された場合と上告理由 二 共謀者の分擔行爲を各別に判示することの要否 三 刑の執行猶豫の條件に關する規定の改正と刑法第六條の刑の變更 四 刑の執行猶豫の條件に關する規定の改正と改正前の行爲に對する新規定の適用
刑法25條,刑法6條,刑法60條,刑訴法415條,刑訴法360條1項,刑法の一部を改正する法律附則4項
判旨
刑法6条の「刑の変更」とは、特定の犯罪を処罰する刑の種類または量の変更を指し、刑の執行猶予の条件に関する規定の変更はこれに含まれない。執行猶予は刑の執行方法にすぎず、刑そのものの内容ではないため、改正規定の適用は立法趣旨に基づき判断されるべきである。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予の条件を緩和する法改正が、刑法6条にいう「刑の変更」に該当し、裁判時の新法が遡及的に適用されるべきか。
規範
刑法6条が適用される「刑の変更」とは、特定の犯罪を処罰する刑の種類または量が法令の改正によって差異を生じた場合をいう。刑の執行猶予は刑の執行を一時猶予する執行の仕方にすぎず、刑そのものの内容(種類・量)ではない。したがって、執行猶予の条件に関する規定の改正は「刑の変更」に当たらず、その適用は改正規定の立法趣旨によって判断される。
重要事実
被告人は強盗罪の共謀加担により懲役3年の判決を受けた。原審判決当時、刑法25条の執行猶予は「2年以下の懲役又は禁錮」が要件であったため、被告人に執行猶予は付されなかった。しかし、原審判決後の法改正により、執行猶予の要件が「3年以下の懲役若しくは禁錮又は5千円以下の罰金」に緩和された。被告人は、この改正が刑法6条の「刑の変更」に該当し、より軽微な新法が適用されるべきであるとして上告した。
あてはめ
刑法6条の「刑の変更」は、刑罰法令の各本条や総則の加重減軽規定の改正により、刑の種類や量そのものが変更される場合を指す。一方、執行猶予は刑法第4章「刑」とは別の第5章に規定されており、刑法10条の刑の軽重比較の対象にも含まれていない。本件改正は執行猶予の付与要件を広げるものであり、犯罪に対して科される刑自体の種類や量を変更するものではない。よって「刑の変更」には当たらない。また、本件改正法の附則の解釈によれば、新規定は施行前の行為にも適用されるが、それは事実審が判決を言い渡す際の条件を定めたものにすぎない。原審判決時に未施行であれば新法適用の余地はなく、上告審においても原判決に違法がない以上、新法を適用して破棄自判することはできない。
結論
刑の執行猶予の条件に関する規定の変更は「刑の変更」に当たらない。原審判決後に生じた執行猶予要件の緩和を理由に、原判決を破棄することはできない。
実務上の射程
刑法6条の「刑の変更」の意義を狭義(種類・量)に限定した重要判例である。答案上は、時の経過による法の変遷(限時法の問題等)において、刑罰の種類・量の変更か、それ以外の付随的処分の変更かを区別する際の基準として用いる。
事件番号: 昭和22(れ)56 / 裁判年月日: 昭和23年2月6日 / 結論: 棄却
三審制を採用する裁判制度において上告審をもつて純然たる法律審とするか又は事實審理の權限をも上告審に與えるかは立法政策上の問題ではあるが、憲法上の適否の問題ではあり得ない。故に舊憲法時代に於て、量刑不當をもつて上告の理由となすことを許しておつたに拘わらず、刑訴應急措置法第一三條第二項が量刑不當を上告の理由となすことが出來…