一 賍物故買罪は賍物であることを知りながらこれを買受けることによつて成立するものであるが、その故意が成立する爲めには必ずしも買受くべき物が賍物であることを確定的に知つて居ることを必要としない或は賍物であるかも知れないと思いながらしかも敢てこれを買受ける意思(いわゆる未必の故意)があれば足りるものと解すべきである。 二 犯罪構成要件たる事實の大部分が他の證據の裏付によつて認め得られる以上其一部に付ては被告人の自白以外他に證據が無くても刑訴應急措置法第一〇條第三項に違反するものでないこと既に當裁判所の判例とする處で(昭和二二年一二月一六日言渡昭和二二年(れ)第一三六號事件判決參照)今なお變更の要を認めない。
一 賍物故買罪に於ける犯意 二 犯罪構成要件たる事實の一小部分に付き被告人の自白以外他に證據なき場合
刑法256條2項
判旨
盗品等有償譲受罪における「盗品その他財産罪に当たる罪に関わる物であることの知情(故意)」は、必ずしも確定的な認識を要せず、未必的な認識があれば足りる。また、犯罪構成要件の大部分が他の証拠で立証されている場合、故意等の主観的要件が自白のみに基づき認定されても、自白のみによる処罰(憲法38条3項等)には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 盗品等有償譲受罪における「知情」の程度として、未必の故意で足りるか。 2. 故意(知情)という一部の構成要件要素について、自白のみによって認定することは、自白の補強法則に反しないか。
規範
1. 盗品等有償譲受罪(刑法256条2項)の故意が成立するためには、目的物が盗品であることを確定的に知っている必要はなく、盗品であるかもしれないと思いながら敢えてこれを買い受ける意思(未必の故意)があれば足りる。 2. 憲法38条3項(および応急措置法10条3項)が禁じる「自白のみによる有罪判決」に関し、犯罪構成要件たる事実の大部分が他の証拠により認められる以上、故意等の主観的要件という一部の事実について自白以外の証拠がなくても、同条に違反しない。
重要事実
被告人は、Aらから衣類を買い受ける際、(1)Aが早く処置(処分)しなければいけないと言ったこと、(2)近頃各地で衣類盗難が発生していたこと、(3)売り主の属性や態度から、「Aらが盗んできたものではないか」と疑いを持ちながらこれを買い受けた。原審は、被告人の司法警察官に対する供述調書および公判廷での供述(「おかしいと思った」等の自白)に基づき、盗品であることの知情(未必の故意)を認定して有罪とした。これに対し弁護人は、確定的な認識がなかったこと、および知情の事実について自白以外の証拠がないことを理由に上告した。
あてはめ
1. 被告人は、売り主が処分の急ぎを求めたことや社会情勢、売り主の属性等の諸般の事情から、「盗んで来たものではなかろうか」と推量しており、これは「或は賍物ではないか」との疑いを持ちながら買い受けた事実に他ならない。かかる認識は未必の故意として、盗品等罪の知情の認定に十分である。 2. 盗品等有償譲受罪において、目的物が盗品であることの主観的な認識(知情)は構成要件の一部分に過ぎない。客観的な譲受けの事実など、犯罪を構成する主要な事実の大部分が他の証拠により裏付けられている本件においては、知情の点についてのみ自白以外に証拠がないとしても、憲法上の補強法則の趣旨には反しない。
結論
1. 未必の故意があれば、盗品等罪の知情の要件を満たす。 2. 犯罪事実の大部分に裏付けがある以上、故意の認定が自白のみであっても、補強法則に違反せず有罪とできる。
実務上の射程
故意(未必の故意)の認定手法として「物品の性質、数量、売渡人の属性・態度等」という判断枠組みを示した基本判例である。また、補強証拠の要否に関し、主観的要素(故意)については必ずしも独立の補強証拠を要しないとする実務上の重要な指針となっている。
事件番号: 昭和28(あ)5280 / 裁判年月日: 昭和29年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品関与罪(旧賍物罪)における故意は、対象物が盗品等であることの確実な認識は不要であり、盗品等であるかもしれないという未必の認識があれば足りる。 第1 事案の概要:被告人は、買受けの対象となっている物が「賍物(盗品等)」である可能性を認識しながら、あえてこれを買い受けたとして、賍物故買罪に問われた…