一 數人が強盗又は窃盗の實行を共謀した場合において共謀者のある者が屋外の見張りをした場合でも、共同正犯は成立する。 二 いやしくも他人を脅迫して金品を奪い取る意思を以て他人を脅迫した場合において脅迫者は強盗をする意思はなかつたとしても脅迫の行われた周圍の事情や被害者の精神上體力上等の關係如何により強度の畏怖心をおこし強度に自由を抑壓された場合において客観的に観察して被害者が自由を抑壓されることは當然であると認められる場合は強盗を以て論ずべきである。 三 窃盗と強盗の連續行爲は刑法第五五條にいわゆる同一罪名にふれるものであるということは當裁判所判例(昭和二二年(れ)第一五四號事件)の示すところである。從つて被告人の犯した判示第一の強盗行爲と、これに連續して行われた第二の窃盗行爲に對し刑法第五五條を適用して強盗の一罪として處斷した原審判決は正當であつて所論の如き違法はない。
一 強盗又は窃盗の見張りと共同正犯 二 強盗罪の成立 三 窃盗と強盗の連續行爲と刑法第五五條
刑法60條,刑法235條,刑法236條,刑法55條
判旨
窃盗罪等の実行を共謀した者が、現場の屋外で見張りを行った場合であっても、共同正犯が成立する。また、恐喝の意思で脅迫を行ったとしても、周囲の状況や被害者の状態等から客観的に見て被害者の反抗が抑圧される程度に至っている場合は、強盗罪が成立する。
問題の所在(論点)
実行行為の一部である「見張り」のみを行った者に共同正犯が成立するか。また、恐喝の意思で行われた脅迫が、客観的に反抗抑圧に至る程度であった場合に強盗罪が成立するか。
規範
1.共謀共同正犯の成否について:数人が窃盗等の実行を共謀した場合、共謀者のうちある者が屋外で見張りをしたにすぎないときでも、犯罪を共同して実行したものとして共同正犯が成立する。2.強盗罪の暴行・脅迫の程度:他人の金品を奪う意思で脅迫した際、行為者に強盗の認識がなかったとしても、脅迫が行われた周囲の事情、被害者の精神的・身体的条件等に照らし、客観的にみて被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであれば、強盗罪の構成要件を満たす。
重要事実
被告人は、知人らと共謀して深夜の工場に侵入し、綿糸を窃取しようとした際、塀の外で見張りを行った。また、その後別の者と共謀し、午前1時頃の街頭で通行人に対し、前方と後方から挟み撃ちにする態勢をとり「金を出せ」と脅迫して金員を強取した。被告人は、見張りは幇助にすぎないこと、また後者の事件ではピストルを突きつけた事実はなく、単なる恐喝の意思であったと主張して上告した。
あてはめ
1.見張り行為について:被告人は共謀に基づき、犯行現場において見張りという重要な役割を分担している。これは大審院以来の判例に照らし、共同して犯罪を実行したといえるため、窃盗罪の共同正犯が認められる。2.強盗の成否について:真夜中の人通りのない道路上で、二人で挟み撃ちにして脅迫する行為は、被害者の反抗を抑圧するに十分な状況を作り出している。被告人に「喝上げ(恐喝)」の認識しかなくとも、客観的に被害者の自由を抑圧するに足りる脅迫である以上、強盗罪の成立を妨げない。なお、旧刑法下の連続犯(現行法の包括一罪等に相当する議論)において窃盗と強盗は同一罪種として扱われる。
結論
見張り役にも窃盗罪の共同正犯が成立し、また客観的に反抗抑圧に至る脅迫があれば、行為者の認識が恐喝であっても強盗罪が成立する。
実務上の射程
共謀共同正犯における見張りの重要性と、強盗罪における「反抗抑圧」の客観的判断基準を示す。特に強盗罪の主観的態様において、行為者の認識が「恐喝」であっても、客観的状況から強盗の規範的評価が可能であることを示す際に有用である。
事件番号: 昭和23(れ)792 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 數名共同で強盜することを謀議して、その實行行爲の分擔を定め、各自の行爲を集結して所期の目的を達成した以上、たとい犯行現場において見張をしたに過ぎないものであつても、なお強盜の共同正犯たるの責を兔れ得ないものであるということは當裁判所の判例とするところである。 二 窃盜罪における被害物件の判示としては、窃取された財物…
事件番号: 昭和23(れ)356 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
數名のものが強盜の共謀をしてその内一名が屋外の見張りを擔當し他のものが強盜の實行行爲をした場合には、その見張りをした者についても強盜の共同正犯が成立することは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年三月一六日言渡昭和二二年(れ)第二三五號事件判決)
事件番号: 昭和23(れ)1205 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
一 被告人は相被告人と共謀して強取行爲をも分擔したものというべく、從つて、假りに所論のごとく被告人は相被告人の兇器所持並びに兇器使用の事實を知らなかつたとしても原判決が證據によらずして強盜共謀の事實を認定した違法ありといえない。 二 犯罪の日時は、法律上別段の定め(例えば日出前又は夜間においてというごとき)のない限り、…