一 特定の行爲に起因して特定の結果が發生した場合に、これを一般的に観察して、その行爲によつて、その結果が發生する虞れのあることが實驗法上當然豫想し得られるにおいては、たとえその間、他人の行爲が介入して、その結果の發生を助長したとしても、これによつて因果關係は中斷せられず、先きの行爲を爲した者は、その結果につき責任を負うべきものと解するのが相當である。 二 被告人は酒の代用として燃料用アルコールを人體に生理上の障碍を與える虞れのあることを認識しながら、他人に販賣した場合には、その當時の情況上讓受人から更にこれを讓受けて飲用する者のあるべきことは一般的に観て當然豫想し得られるところであるから、右讓受人から更にアルコールを讓受けて飲用した者がその中毒によつて死亡した以上、被告人が後者の飲用の事實を豫見したと否とに關係なく、その傷害致死の結果につき責任を負はねばならない。
一 因果關係と他人の行爲の介入 二 被告人から酒の代用として燃料用アルコールを買受けた者から、さらに、これを買受けた者がこれを飲用しその結果死亡した場合の被告人の責任
刑法205條,刑法205條1項
判旨
行為から結果が発生するおそれが経験則上当然予想される場合、介在した第三者の行為が結果発生を助長したとしても、実行行為と結果との間の因果関係は否定されない。
問題の所在(論点)
実行行為(有害なアルコールの販売)の後に第三者(A)の転売・譲渡行為が介在して死亡結果(Bの死亡)が発生した場合において、実行行為と結果との間に刑法上の因果関係が認められるか。
規範
特定の行為に起因して特定の結果が発生した場合、その行為を一般的に観察して、当該結果が発生するおそれがあることが実験法上(経験則上)当然予想し得るときは、たとえその間に他人の行為が介入して結果発生を助長したとしても、因果関係は中断されない。
重要事実
被告人は、燃料用アルコールを水で希釈し、飲用すれば人体に生理的障害を与えるおそれがあることを認識しながら、酒の代用としてAに販売した。Aはこれをアルコールであると認識して購入・飲用し、中毒により両眼失明の傷害を負った。さらに、Aからその一部を譲り受けたBがこれを飲用し、メチルアルコール中毒により死亡するに至った。
あてはめ
被告人が有害な燃料用アルコールを酒の代用として販売した際、購入したAがさらに他者へ譲渡して飲用させる者が出ることは、当時の状況から一般的にみて当然予想し得る範囲内である。したがって、被告人が直接Bの飲用事実を予見していなかったとしても、被告人の販売行為からBの中毒死という結果が生じることは経験則上当然に予想可能であり、Aの介入によって因果関係が遮断されることはない。
結論
被告人の行為とBの死亡との間には因果関係が認められ、被告人は傷害致死罪の責任を負う。
実務上の射程
相当因果関係における「介在事情」の判断枠組みを示した初期の重要判例。第三者の行為が介入した場合でも、それが実行行為から「当然予想し得る」範囲内(蓋然性・通常性)であれば因果関係を肯定する。現在の実務で主流とされる「危険の現実化」説における、介在事情の異常性や寄与度を検討する際の基礎的な判断手法として機能する。
事件番号: 昭和23(れ)742 / 裁判年月日: 昭和23年11月30日 / 結論: 棄却
一 明示の意思の表示が無くても暗默にでも意思の連絡があれば共謀があつたといい得るのである。 二 公判外の自白と雖適法の證據調を經たものはこれを證據と爲し得ること勿論である。 三 原審の判示する處によれば判示被害者の死亡は被告人兩名の共謀による暴行の結果として發生したものであるから直接死因となつた暴行をした者がたとえ所論…