一 被告人の控訴が理由ある場合において控訴申立後の未決勾留日數の通算については刑事訴訟法第五五六條の規定により、判決確定後その執行を指揮せらるる際にこれをなさるべきものであつて、刑法第二一條の規定を適用して判決においてこれを宣告すべきものではない。 二 被告人が一度公判廷において自白した以上は、たとえ同一公判廷においてしかもその自白の直後において、これを變更しても裁判所が前の自白を證據として採用することは何等違法ではない。 三 被告人は第一審においては當時少年法の適用を受ける少年であつたので、懲役三年六ケ月以上五年以下の不定期刑の言渡を受け、これに對し控訴を申し立てたところ、第二審の判決言渡當時は被告人はもはや少年法の適用を受けなくなつた關係もあつて、第二審においては懲役三年六ケ月に處する旨の言渡を受けたこと記録上明瞭である。果して然らば被告人は第二審においては第一審よりも輕い刑の言渡を受けたのであるから、控訴はその理由あるものといはなければならない。
一 控訴申立後の未決勾留日數の通算と判決 二 公判廷における自白の變更と採證の自由 三 少年法の適用と控訴理由の有無
刑訴法556條1項2號,刑訴法337條,刑法21條
判旨
被告人が公判廷において一度自白した以上、その直後に自白の内容を変更・否定する供述をしたとしても、裁判所が先行する自白を証拠として採用することは適法である。また、暴行を受けた被害者が失神等に陥らない限り、犯行時の主要なやり取りを記憶していることは経験則に反しない。
問題の所在(論点)
1. 被告人が公判廷で自白を翻した場合、先行する自白を証拠として採用できるか。 2. 暴行・傷害を受けた被害者の犯行状況に関する供述は、経験則上、信用性を肯定できるか。
規範
1. 公判廷における自白の証拠能力:被告人が公判廷において一度犯罪事実を自白した以上、その後、同一公判廷でこれを変更・否定したとしても、裁判所が自由心証に基づき、先行する自白を証拠として採用することは妨げられない。 2. 暴行被害者の供述の信用性:暴行を受けた者が失神状態に陥らない限り、現場での主要な言動や問答の内容を記憶していることは、特段の事情がない限り経験則に合致する。
重要事実
被告人Mは、賭博で負けた腹いせに、勝ち逃げしようとした被害者Dに対し、金銭の貸与を強要。拒絶されたため、Dの顔面を拳固で強打して畏怖させ、共犯者Cに命じてDのポケットから現金530円を強取させた(強盗傷人被告事件)。Mは公判廷で当初これら主要事実を自白したが、その後の質問に対し「殴って金にする気はなかった」と犯意を否定する供述を行った。また、弁護人は「重傷を負って蹲っていた被害者が詳細な問答を記憶しているはずがない」として被害者供述の信用性を争った。
あてはめ
1. 被告人Mは、公判廷において強盗傷人罪の構成要件に該当する主要事実を一度自白している。その後、犯意を一部否定する供述(「殴って金にするつもりはなかった」等)に転じたとしても、一度なされた自白が当然に証拠価値を失うわけではない。裁判所が先行する自白を証拠として採用し、事実認定を行うことに違法はない。 2. 被害者の記憶について、被害者が失神等に陥った事実は認められない。暴行を受けている最中であっても、金銭の所在を問われ、これに回答し、他者が金を取り出すという一連の主要なやり取りは、被害者にとって強い印象を残す事柄である。したがって、これを記憶しているとする被害者Dの証言を採用することは、経験則に照らして正当である。
結論
被告人の先行する自白及び被害者の証言を証拠として事実を認定した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の撤回・変更があった場合の証拠能力に関する基礎的判例である。公判廷での自白(裁判上の自白)は、刑事訴訟においても自由心証を妨げるものではないが、一度なされた自白の証拠価値が事後の否定により当然に否定されるものではないことを示している。実務上、公判供述の変遷がある場合の事実認定において、どの段階の供述を重視すべきかを論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)1380 / 裁判年月日: 昭和24年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】予審における自白の証拠能力について、強制によるものと疑われる特段の事情がない限り、裁判官がその専権により証拠として採用し、公判廷での供述を排して事実認定の基礎とすることは適法である。 第1 事案の概要:被告人両名および共犯者Aは、公判廷において強盗の事実を否定する供述を行った。しかし、原審(控訴審…
事件番号: 昭和22(れ)77 / 裁判年月日: 昭和23年2月12日 / 結論: 棄却
憲法第三八條第三項並に刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」には、公判廷における被告人の自白を含まない。