一 所論のように、第一審判決の後、被告人が、被害者に、被害を辨償したという新しい事情が發生したとしても、第二審裁判所は必ず第一審判決より輕い刑を言渡さなければならぬということはない。 二 犯罪事實を認定した直接の證據は被告人の自白のみであつても、他の諸般の證據を被告人の自白に對する補強證據として、犯罪事實を認定した場合には、被告人の自白を唯一の證據として、これを認定したものということは出來ない。
一 第一審判決後の被害辨償と第二審における量刑 二 賍物故買の知情の唯一の證據が自白である場合と刑訴應急措置法第一〇條第三項
旧刑訴法403條,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
被告人が盗品であることの主観的認識(知情)を自白している場合、これと符合する客観的事実や過去の取引経緯等の外部的状況を補強証拠とすることで、自白のみによる犯罪事実の認定を禁じた憲法・刑訴法の趣旨に反することなく知情の事実を認定できる。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法319条2項(および憲法38条3項)に基づき、盗品等有償譲受罪における「盗品であることの認識(知情)」という主観的事実について、被告人の自白以外に補強証拠が必要か、またどのような証拠が補強証拠となり得るか。
規範
被告人の自白のみに基づいて有罪とされることを防ぐ補強法則の要請の下、犯意や知情といった主観的構成要件要素についても、自白のみならず、これと関連する客観的状況や第三者の供述等の補強証拠を総合して認定すべきである。
重要事実
被告人Bは盗品等有償譲受罪で起訴された。被告人は自白していたが、盗品であるとの「知情」の点について直接の証拠は自白のみであった。原審は、売主である窃盗犯人らの供述のほか、今回の取引のわずか半月前に別の物件を買い受けた際、被告人が「忍びか、たたき(窃盗か強盗)の品か」と問い、売主から「忍びだ」との回答を得ていた事実等を証拠として、知情を認定した。
あてはめ
被告人の自白に加え、売主たる窃盗犯人の供述や、本件の直近になされた別件取引の際、被告人が目的物の出自が犯罪によるものであるかを確認し、窃盗の品である旨の回答を得ていた事実が存在する。これらの諸般の証拠は、被告人が本件各物件についても盗品であることを認識し得た状況を示すものであり、自白と相まって知情の事実を裏付ける補強証拠として十分である。したがって、自白のみによる認定には当たらない。
結論
被告人の自白に加えて、取引の経緯や売主の供述等の補強証拠がある以上、知情の事実を認定した原判決に憲法・刑訴法違反の違法はない。
実務上の射程
主観的要素(犯意、知情、目的等)について補強証拠が必要かという論点において、実務上、自白を補強する間接事実(過去の類類型的事実や第三者の供述)があれば足りることを示す。答案では「主観的構成要件要素についても補強証拠を要するか」という文脈で、実質的に自白の真実性を担保する証拠があれば足りるとする論拠として引用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1698 / 裁判年月日: 昭和26年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の補強証拠は、犯罪の客観的事実について必要とされるが、犯意等の主観的要件については、自白が架空のものでないと認められる限り、自白のみで認定しても憲法38条3項等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が盗品等有償譲受けの罪で起訴された事案。第一審判決は、被告人の自白、共犯者の公判供述、および被…