銃砲等所持禁止令の附則に、二ケ月(後に四ケ月)の期間をもうけたのは、第一條第一項に從つて、地方長官に許可を申請すべき期間を定めたもので、この期間經過の後は、許可の申請をすることもできないという趣旨であつて、この期間内の所持すべて適法ならしむるという意味でないことは、この勅令制定の趣意から考へて、容易に理解せらるゝところである。であるから、右の期間内に、許可の申請をしたものに對しては、たとえ許否の處分が右の期間を超えて未定であつても、そのあいだの所持を適法ならしむると同時に、この期間内でも許可の申請をしないで、銃砲等所持することは、絶對に許されないと解すべきである。況んや、右の期間内、ついに同令第一條にもとづく許可の申請をしなかつたものに對しては、同勅令施行後の、銃砲等所持を、適法ならしむる何等の理由も根據もないのである。
銃砲等所持禁止令による所持許可の申請と所持の適否
銃砲等所持禁止令1條1項、附則
判旨
銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第300号)附則に基づく許可申請期間内であっても、許可の申請をせずに銃砲等を所持することは同令違反を構成し、申請をした場合のみ処分があるまで適法とみなされる。
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令附則が定める許可申請期間内において、所持許可の申請を行っていない者の所持行為が、同令違反の罪を構成するか。
規範
本令の趣旨は銃砲等の所持を原則として全面的かつ厳重に禁止する点にある。附則が定める申請期間(当初2か月、後に4か月に延長)は、継続所持を希望する者が許可を申請すべき期間を定めたものに過ぎず、当該期間内の所持を一般的に適法化するものではない。したがって、期間内に適法な申請を行い許否の処分を待つ状態にない限り、本令施行後の所持は直ちに違法となる。
重要事実
被告人Aは、昭和21年6月17日から同年10月10日頃までの間、自宅に他人の日本刀を隠匿して所持した。被告人Eは、同年10月10日頃に共謀の上、日本刀を携帯・移動させた。両名は、銃砲等所持禁止令の許可申請期間(同年10月14日まで)内であれば、申請の有無にかかわらず所持は適法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1137 / 裁判年月日: 昭和24年9月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというない…
あてはめ
本令の目的は厳格な所持禁止にある。附則は、期間内に申請をした者についてのみ「許否の処分があるまで許可を受けたものとみなす」という例外的な暫定措置を設けているに過ぎない。本件被告人らは、いずれも申請期間内である同年10月14日以前に所持行為を行っているが、法定の除外事由(職務上の所持や許可申請)が存在しない。申請を前提としない所持を適法とする根拠はないため、構成要件に該当する。
結論
許可申請を行わずに銃砲等を所持した以上、たとえ附則の申請期間内であっても同令違反の罪が成立する。上告棄却。
実務上の射程
行政上の経過措置や申請期間が設定されている禁止規定において、その期間が「一律の禁止猶予」を意味するのか、それとも「申請を条件とした暫定的な許容」に過ぎないのかを判別する際の基準となる。本判例は、禁止の目的が強力な場合には、申請という手続的要件を具備しない限り、期間内であっても違法性が阻却されないことを示している。
事件番号: 昭和23(れ)685 / 裁判年月日: 昭和23年11月2日 / 結論: 棄却
刀劍所持許可願書の提出を、昭和二一年勅令第三〇〇號に規定された本來の提出期間中になさず、その延長期間中になした場合に、本來の期間中に登録しなかつたことにつき相當の理由あることの釋明書が添えられてない場合には、申請者に對し懲罰手段に出ることは違法でないから、之に對し原審が懲役刑を科したことは適法な上告理由とならない。
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和23(れ)1984 / 裁判年月日: 昭和24年4月5日 / 結論: 棄却
拳銃と言えば社會通念上彈丸發射の機能を有する装藥銃砲であることがわかるのであるから、銃砲等所持禁止令に所謂銃砲に該當するものであることを窺い知ることができるし、また原判決舉示の證據物によつて、同法の所謂銃砲に該當することを認め得るから所論の如き違法はない。
事件番号: 昭和25(あ)2696 / 裁判年月日: 昭和27年11月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令1条の下では、既に許可を受けている者から銃砲等の譲渡又は寄託を受けた場合であっても、譲受人又は受寄託者は自ら新たに所持の許可を受ける必要がある。また、法改正前の違反行為に対し従前の例により罰則を適用することは、検挙時期による不当な差別を生むものではなく、憲法に違反しない。 第1 事…