一 自首は必ずしも犯人みずからする必要なく、他人を介して自己の犯罪を官に申告したときも有効である。 二 裁判所が自首減軽する必要がないと思つたときは、たとえ自首の事實があつても、特にこれを判決に示す必要はない。
一 他人を介してなした自首の効力 二 自首した事實を判示すること要否
刑法42條1項,刑訴法360條2項
判旨
自首は他人を介して自己の犯罪を官に申告させることによっても成立する。一方で、自首減軽を適用するか否かは裁判所の裁量に属するため、自首が成立する場合であっても減軽を行わないのであれば、判決書にその旨を判示する必要はない。
問題の所在(論点)
1.犯人が他人を介して申告した場合に自首(刑法42条1項)が成立するか。2.裁判所が自首減軽を適用しない場合、判決書に自首の事実や不適用の理由を判示する必要があるか。
規範
刑法42条1項の自首は、犯人自らが直接官庁に出頭して行う場合に限られず、他人を介して自己の犯罪を官に申告させる方法によっても有効に成立する。もっとも、自首による刑の減軽は必要的事由ではなく「得」とする相対的減軽事由であるため、その適用可否は裁判所の専権に属する。したがって、裁判所が減軽を必要ないと判断した場合には、有効な自首の事実があっても、判決において自首の成否や不適用の理由を特段判示することを要しない。
重要事実
被告人は、被害者Aからの暴行や「ぶっちやしちもう」との言葉に激昂し、樫の棒でAの脳天を数回打撃し、昏倒後も頸部を強打して殺害した。被告人は本件犯行後、未だ官に発覚する前に、次男に対し駐在所へ届け出るよう命じ、次男を介して司法警察吏に犯行を申告させた。弁護人は、この事実が自首に該当するにもかかわらず、原判決が自首減軽の適用について判断を示さなかったことは判決遺脱の違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件では、被告人が自ら出頭したわけではないが、次男という他人を介して自己の犯行を官に届け出させており、自首の効力が認められる。しかし、刑法42条の規定は任意的減軽(「減軽することを得」)を認めるにとどまる。裁判所が本件の殺意の形成過程や犯行態様等の諸事情を考慮し、自首減軽を行う必要がないと判断した以上、判決書において自首の成否や不適用の判断を明示しなかったとしても、審理不尽や理由不備の違法はないといえる。
結論
他人を介した自首も有効に成立するが、減軽を適用しない場合にその事実を判示する必要はない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
自首の成立要件として「他人の介在」を許容した点、および自首減軽の裁量的性格から判示の要否を導いた点に意義がある。答案上では、自首の成否が問題となる場面で申告の態様を広く解する根拠として本判例を活用できる。ただし、減軽の適否が裁判所の専権であるため、実務上の結論としては、有効な自首があっても必ずしも刑が減るわけではない点に注意を要する。
事件番号: 昭和26(れ)28 / 裁判年月日: 昭和26年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自首が成立する場合であっても、刑法42条1項に基づく刑の減軽を行うか否かは、裁判所の裁量に委ねられる。したがって、自首による減軽をしなかったとしても直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、犯罪事実を自発的に申告した(自首の成立を前提とした主張が行われた)が、原判決において自首減軽がな…