一 公判請求書には、その作成者である檢事の所屬する檢事局の廳印を捺す必要はない。 二 昭和二二年四月二日被告人逮捕、同日同人に對する司法警察官の第一回訊問同月三日同第二回訊問、同月八日強制處分に於ける豫審判事の被告人訊問、同日同人勾留、同月九日公判請求、同年五月一五日名古屋地方裁判所第一回公判、同月一八日同裁判所判決宣告、同月一九日控訴申立、同年二月二四日名古屋高等裁判所記録受理、同年七月八日同裁判所第一回公判、同日保釋、同月一五日同裁判所判決宣告、被告人の拘禁の期間及び審理手續の經過は、以上の如くである。本件のような事件で右程度の拘禁は、現今における惡條件の環境の制約下においては誠に己むを得ない處であつて、これを不當に長い勾留とはいえない。
一 檢事の署名捺印あるも廳印が捺してない公判請求書 二 不當に長い勾留
刑訴法71條1項,刑訴應急措置法10條2項,憲法38條2項
判旨
公判請求書には作成検察官の署名捺印、所属官署の表示及び年月日の記載があれば足り、庁印(官署印)の押捺がなくとも有効である。また、不当に長い拘禁後の自白は証拠能力を欠くが、当時の社会状況に照らし止むを得ない程度の拘束期間であればこれに当たらない。
問題の所在(論点)
1. 官署印のない公判請求書による公訴提起の有効性(刑訴法上の適式性)。 2. 逮捕から二審保釈まで約3ヶ月の拘禁が、憲法38条2項にいう「不当に長い拘禁」に該当し、自白の証拠能力を否定すべき事由となるか。
規範
1. 公判請求書等の官公吏が作成すべき書面につき、旧刑事訴訟法71条1項(現行刑訴法44条1項・刑訴規則57条1項参照)は、署名捺印、年月日及び所属官署の表示を要求するにとどまり、別段の規定がない限り官署印の押捺は要件とされない。 2. 「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」(憲法38条2項、現行刑訴法319条1項)に該当するか否かは、具体的な事件の内容、当時の社会環境、手続の経過等の諸事情を総合考慮し、その拘束が誠に已むを得ない限度を超えているかによって判断すべきである。
事件番号: 昭和22(れ)107 / 裁判年月日: 昭和22年11月29日 / 結論: 棄却
一 日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律第一〇條第三項の規定は公判廷外の自白が被告人の不利益な唯一の證拠である場合にこれにより有罪とされ又は刑罰を科せられないという趣旨であつて公判廷の自白を包含しないと解すべきである。 二 刑法第二三八條の規定は窃盜が財物の取還を拒ぎ又は逮捕を免かれ若しくは罪跡を湮…
重要事実
被告人は強盗等の罪に問われ、昭和22年4月2日に逮捕された。その後、同月8日に予審判事による被告人訊問・勾留を経て、翌9日に公判請求がなされた。一審判決は同年5月18日、二審判決は7月15日に宣告され、被告人は二審の第1回公判日に保釈された。被告人側は、①公判請求書に検察局の所属官庁印がないため無効であること、②約3ヶ月に及ぶ勾留は不当に長く、その間の自白は証拠能力がないこと、③執行猶予を付さない判決は客観的合理性を欠き違憲であることを主張して上告した。
あてはめ
1. 本件公判請求書には、作成検察官の署名捺印、所属庁たる検察局の表示、及び年月日の記載が備わっている。法令上、これら以外に庁印の押捺を義務付ける規定は存在しないため、形式的要件を充足しており有効である。 2. 拘禁期間について検討すると、逮捕から起訴まで約1週間、一審判決まで約1.5ヶ月、二審判決まで約3.5ヶ月という経過を辿っている。現今の悪条件下の環境制約(戦後混乱期の司法状況)に照らせば、この程度の拘禁期間は誠に已むを得ない範囲内といえ、不当に長い拘禁には当たらない。したがって、自白の証拠能力を否定すべき違法はない。
結論
1. 公判請求書は適式であり、公訴提起は有効である。 2. 本件の拘禁期間は不当に長いとはいえず、自白を証拠とした原判決に憲法違反や証拠法則の誤りはない。
実務上の射程
書面の形式的不備が公訴提起の効力に影響するかという論点において、法定の要件(署名捺印・所属・日付)が具備されていれば、庁印等の慣習的な表示が欠けていても無効とはならないことを示す。また、自白の任意性を争う局面において「拘禁期間」を評価する際の比較対象(当時の社会状況等の制約)として参照し得る。
事件番号: 昭和24(れ)773 / 裁判年月日: 昭和24年6月18日 / 結論: 棄却
一 しかし舊刑訴法第三二〇條第一項には「裁判長を公判期日を定むべし」と規定してあつて公判期日を定めるには日及び時をもつてすべしとは規定していないのであるが、ただ従來の慣行によつて日及び時を指定しているのである、それ故原審が判決言渡期日を指定するにあたり日のみをもつてし時を定めなかつたとしてもその期日の指定を目して違法な…
事件番号: 昭和26(れ)1716 / 裁判年月日: 昭和26年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の補強証拠は犯罪の客観的事実について存在すれば足り、犯人と犯罪の結びつきまで証明する必要はない。また、不当に長い拘禁後の自白であっても、拘禁と自白との間に因果関係がない場合には証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、昭和21年に勾留された後、執行停止中の逃走、別罪の犯行、再度の逮捕…