無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。(反対意見がある。)
無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力
民法112条,民法117条,民法896条,民法898条
判旨
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合、追認権は相続人全員に不可分的に帰属するため、共同相続人全員が共同して行使しない限り、無権代理行為は無権代理人の相続分の限度でも当然に有効となることはない。
問題の所在(論点)
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合、無権代理人の相続分の限度において無権代理行為は当然に有効となるか(相続による無権代理行為の有効化の範囲)。
規範
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属する。したがって、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではない。他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても当然に有効とはならず、この理は金銭債務の連帯保証契約についても同様である。
重要事実
無権代理人である上告人は、父F(本人)から代理権を授与されていないにもかかわらず、Fの実印を無断で用いて、EのD(被上告人が債権譲受)に対する850万円の借入債務について、Fを連帯保証人とする契約を締結した。その後、Fが死亡し、妻Gと子である上告人が各2分の1の割合で共同相続した。被上告人は、上告人に対し、相続分に応じた連帯保証債務の履行を求めた。
あてはめ
本件において、追認権は共同相続人である上告人とGに不可分的に帰属する。記録上、他の共同相続人であるGが追認した事実は認められない。無権代理人が本人を単独相続した場合には信義則上追認拒絶が許されない結果、当然に有効となるが、共同相続の場合は他の相続人の追認権を侵害できない以上、当然に有効となる余地はない。したがって、上告人の2分の1の相続分に相当する部分においても、本件連帯保証契約が有効になったということはできない。
結論
無権代理行為の追認がない本件においては、上告人が相続した相続分の限度であっても、連帯保証契約に基づく責任を負うことはない。
実務上の射程
無権代理人が本人を単独相続した場合(当然有効)や、本人が無権代理人を相続した場合(追認拒絶可能、但し117条責任承継)と区別して論述する必要がある。共同相続の場合、追認がない限り契約上の責任は否定されるが、相手方は無権代理人に対し117条の責任を追及することは可能である点に注意する。
事件番号: 昭和33(オ)216 / 裁判年月日: 昭和35年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立において、本人が関知しないところで債権証書や白紙委任状が第三者に渡った場合、本人の帰責性が認められず、民法109条等の表見代理は成立しない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、訴外Dを被上告人(被告)の代理人と信じて取引を行ったと主張し、その根拠としてDが被上告人の債権証書及び委任…
事件番号: 平成4(オ)87 / 裁判年月日: 平成5年1月21日 / 結論: 棄却
無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。 (反対意見がある。)