離婚に伴う財産分与は、民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない。
離婚に伴う財産分与と詐害行為の成否
民法424条,民法768条
判旨
離婚に伴う財産分与は、民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象とはならない。
問題の所在(論点)
離婚に伴う財産分与が、債権者に対する詐害行為取消権(民法424条)の対象となるか。特に分与者が債務超過である場合の判断基準が問題となる。
規範
財産分与は、共同財産の清算、離婚後の生活維持、および有責行為に対する慰謝料的要素を含み得る。分与者が債務超過であっても、その一事をもって財産分与が否定されるものではない。したがって、分与が民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りる特段の事情がない限り、詐害行為(民法424条)として取り消すことはできない。
重要事実
夫Dは不動産業等の失敗により債務超過に陥り、不貞行為も行っていた。妻(被上告人)は離婚を決意し、家業のクリーニング業を継続し子供を養育するための基盤として、Dから唯一に近い不動産である本件土地の譲渡(慰謝料を含む財産分与)を受けた。本件土地は元々クリーニング業の利益で購入されたもので、取得への妻の寄与度は夫より大きかった。Dの債権者である信用組合(上告人)が、この譲渡が詐害行為にあたるとして取消しを求めた。
あてはめ
本件土地は妻が経営する店舗の利益で購入されたものであり、妻の実質的共有持分権はDより大きい。また、離婚原因はDの不貞にあり、本件土地は妻や子の生活基盤として不可欠である。これらの婚姻期間や年齢等の諸事情を考慮すれば、土地の譲渡額が約989万円(一部根抵当権抹消のための支払あり)であることは、Dが債務超過であることを考慮しても、慰謝料を含めた財産分与として不相当に過大とはいえない。よって、財産分与に仮託した財産処分というべき特段の事情は認められない。
結論
本件財産分与は詐害行為にあたらない。上告棄却。
実務上の射程
財産分与が詐害行為となるのは「不相当に過大」な部分に限られる。実務上は、清算・扶養・慰謝料の各要素を合算した「相当な範囲」を超えるかどうかが鍵となる。また、本判例の論理は、分与者が債務超過であっても直ちに「不相当」とはされない点に特徴があるため、答案では「特段の事情」の有無を慎重に検討する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和41(オ)1270 / 裁判年月日: 昭和42年6月29日 / 結論: 棄却
総債権者のための唯一の共同担保である債権の譲渡が、判示のような事情から債務の本旨に従つた弁済と同視しえず、かつ、他の債権者を害することを知りながらされたときは、右債権譲渡は債権者詐害行為にあたる。
事件番号: 昭和61(オ)495 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 破棄差戻
抵当権の設定されている不動産について当該抵当権者以外の者との間にされた代物弁済予約及び譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、右不動産が不可分のものであり、詐害行為の後に弁済等によつて右抵当権設定登記が抹消されたときは、その取消による原状回復は、右不動産の価額から右抵当権の被担保債権額を控除した残額の限度で価格賠…